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茨城:共創空間をコーディネートする人材とESDセンターをつくる

1. 課題意識 きっかけ

茨城におけるコーディネーター研修の背景には次の3 つがあった。

① タコツボ化した市民団体を開き、つなぎながら新たな活動ユニットをつくる必要性
② 茨城県新しい公共推進指針を具体的に展開する必要性
③ 遊休施設を市民が活用できる可能性

①は、15 年間、茨城のNPO 法人の設立運営相談や研修を行ってきた中で感じていたことで、多くの団体が、目の前の事業に追われて周りにある資源に気づかず、動ける人がいないと内にこもりつつある。本来、学びと参加の受け皿であるはずのNPO がそうなっていないため、組織を開き、横につなぐことが、組織や地域の持続性の点からも必要だと感じていた。

②は、平成25 年3 月に茨城県が公表した「新しい公共推進指針」で提起されたコーディネーターの養成である。指針は、マルチステークホルダープロセスで策定され、当法人がとりまとめを担当した。学びあい、助け合い、組織の協働、多様な働き方、社会貢献を応援する、の5 つの仕組みを、市民団体、社会教育をはじめとする行政機関、経済界、労働界、メディアなどが連携して具体化していくというのが指針の中身である。その仕組みをつくるために、コーディネーターの育成を具体化する必要があった。

③は、近年、廃校の活用や遊休施設のリニューアルに関する市民団体、事業所からの相談が相次いだことである。特に、水戸市における2 つの遊休施設(大工町の「トモスみと」業務ビルフロアと、双葉台ショッピングセンター)に関しては、市民団体の活動拠点として提案したり、実験ができることになったので、常設型のESD センターの設置を目指して、仕組みづくりと、担い手づくりと、場づくりをセットで実施することにした。

2. 研修のオーガナイズ

研修は、次のねらいのもとで対象設定を行った。
【ねらい】地域の遊休施設など地域の資源を活用したり、多様な主体のコラボレーションを仕掛けることで、学びあい、助け合いをコーディネートする力を高め、多様な学びと活動の拠点と、人的ネットワークを築く。
【対 象】 各分野(環境、国際協力、バリアフリー、農業、福祉まちづくり、多文化共生)のキーパーソンとして、ネットワークづくりを仕掛けている人、場の提供を通じて地域貢献に関わりたい金融機関や不動産会社、大学の関係者(非公募15 名)

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3. 研修で実践した企画

茨城の研修は、水戸市大工町の「トモスみと」の未使用フロアに、地域で様々な活動をしている人や地域の課題を集め、知恵やアイディアを融合させて新たな活動、つながりを生み出すため、フューチャーセンターセッションを企画運営することをOJT と位置づけた。そのため、4 回にわたるコーディネーター研修は、イベントの企画会議を兼ねた内容となった。研修のトレーナーにはESD-J の森良さんに継続して関わっていただいた。

以下、プロセスに応じて何を考え、生み出し、気づいたかについて報告する。

1 回目は、共創空間とそのコーディネーターの役割について考えた。共創空間とは、行政や誰かに与えられる場ではなく、最近増えている廃校や廃屋、空き店舗などの空間を利用しながら、異質な者同士が何らかの課題解決のために資源をもちよって新たに想像していく場として定義し、東京や栃木の廃校活用事例を紹介した。また、つくば市で古民家を改装したギャラリーなどを手がけるゲストの経験談もききながら、次のようなコツを学んだ。

• アートや魂を込めた表現活動は、人のこころを拓く力をもっている。
• つなぎ手は、場を求める人の想いと人を見極めながら、つながりづくりをサポートする。
• 人の夢を叶える場をつくること、それがフューチャーセンターであり共創空間である。

その話を踏まえた上で、トモスにどんな人を集め、どんな話をしてもらいたいかをカードに書き出すワークを行った。多様な立場の研修生がいたので、でてきたテーマも実に多様だったが、テーマをクロスさせること、対話と共感から自発的な活動を生み出すことがESD だと確認した。

2 回目は、どうしたら限られた時間で互いに知り合えるか、自己紹介や討議グループのつくり方について検討した。その結果、自分の強みや求めることを紙にかいて体の前後につける「サンドイッチマン方式」の自己紹介が採用された。さらに、自分が関心のあるテーマについて、どんな多様な関係者がいるかをカードに書きだすワークを行い、地域に多様なステークホルダーがいることに気づいた。その上で、誰が誰に声かけをするとよいかを互いに確認し、各自が参加を呼びかけた。

3 回目は、フューチャーセンターセッションの開始前に、次のことを検討しながらプログラムの修正、参加者の関心事項を頭に入れる作業を2 時間行った。

• 人をつなぐ仲人役として、コーディネーターは、どう存在を示して参加者に接するか
• 出会いを楽しみながら、自由に話せる空気をつくるために、どんなルールを示すか

そして3 時間のセッションで、仲人役として、その場で工夫しながら、つなぎ役を実践した。当日は、80 名もの参加があり、このような企画の継続を望む声が多く聞かれた。

4 回目は、研修の振り返りを行いつつ、セッションで生まれた共創の種である事業アイディアを具体化させるための次のセッションを企画した。

4. これまでの成果

コーディネーターは、上記のようなOJT 研修を通じて、特定の分野ばかり考えていた自分に気づき、異分野、異業種とつながる意義や、提案したり共感、共創したりすることの大切さ、を感じた。また、多様な背景をもつコーディネターがいることで、誰もが気軽に参加して話せるワールドカフェの要素と、異業種での協働実践につなげる地域円卓会議の要素をあわせもったフューチャーセンターセッションが行えることもわかった。

5. 課題と今後に向けた動き

セッションの参加者の多くは、生まれたアイディアの次の展開に関心と参加意欲をもっているので、火を消さないように提案者をフォローしつつテーマ毎にゴールを明確にした上で、新たな参加者を募り、セッションを続け、事業を具体化していくのが、今後のミッションである。そして、常にコーディネーターが集える常設のESD センターを水戸に実現したい。

① 障害への理解 × 映画上映 ⇒ 居場所づくり
② フェアトレード × 販売場所 ⇒ 買い物で社会貢献
③ 遊休農地 × 園芸療法    ⇒ ユニバーサル農業
④ 多国籍 × 親子参加行事  ⇒ 多文化共生の街
⑤ 学びのサポート × 居場所 ⇒ 子どもの貧困防止
⑥ 学校教育 × ESD × 地域の協力 ⇒ 家庭廃油の循環

横田photo2横田 能洋(よこた よしひろ)
認定NPO 法人茨城NPO センター・コモンズ事務局長。
NPO の運営相談や人材育成に取り組むほか、地域での組織間連携による課題解決を目指して、多文化共生、労働問題、教育、寄付推進に関して円卓会議を運営し、事業化も行っている。

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岡山:地域のみかた~公民館職員のエンパワメントによる地域力向上~

岡山市で実施したESD コーディネーター研修は、ESD 推進の拠点である公民館職員を対象とし、OJT型で行いました。これまでも公民館職員対象のESD研修を継続的に実施してきましたが、今年度は基礎である「企画力アップ」を目的として実施しました。

公民館の活動自体がESD と重なっている部分も多く、第1 回目の初日は「公民館をどう捉えているか?」を、志賀誠治さん(人間科学研究所)のファシリテーションで考えていくことからはじめました。そして翌日は、地域課題の見つけ方や抽出方法などを学びました。

それぞれの公民館で課題を把握してくることが宿題となり、それを持ち寄って2 回目の研修を受けました。ここから、生みの苦しみの始まりです。企画の作法を学び、それぞれが次年度に実施する事業を企画書に落としていきます。企画書作成に足りない部分や、グループでの意見を踏まえて、再度それぞれの公民館に持ち帰り、分析と内容の検討を重ね、3 回目の研修では作成した企画書の発表会を行いました。

みんな、地域の文脈を読み取りながら、何度も聞き直したり、書き直したりしながら完成させた企画書なので、発表後の意見交換は、とても活発で有意義なものとなりました。

研修の最終日は、今回の企画書に「ESD」という視点が入っているかどうかを「ESD めがねをかけて見直す」というワークショップで行いました。このことで、各自がESD の視点には何があるのか。についても考えることにつながり、多角的な視点で企画書を見直すことになりました。今回の研修では、「チームで取り組む」ということにも力を入れました。研修は公民館の開館日に行うため、参加できる職員は一人です。これまでも参加した職員が館に戻って報告・共有してはいましたが、今回は「館としてチームで取り組んでいきましょう」と最初から決めて進めました。

研修で学んだことの共有だけでなく、研修と研修の間にある地域課題把握・分析などをそれぞれ工夫してみんなで取り組んだことで、館としての団結が深まったり、次年度、事業実施がしやすくなったと思います。研修が終わったときの達成感や、評価のときの意見についても、チームで共有することとなり、「今までの研修の中で一番大変だったけど、とても充足感がある」というふりかえりがありました。

また、それぞれの公民館職員がチームとして取り組むのを、ESD 担当者と連携してチームとなってフォローしていく「しくみ」が、OJT 研修を進める上で必要だとも感じました。参加者も企画者もとても大変な半年間でしたが、今ではこれをどんな形で進めていこうかとワクワクしています。

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重森 しおり岡山市立中央公民館 主任 重森しおり

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北九州:持続可能なまちづくりの鍵となるESD コーディネーターを育む「ESD 未来創造セミナー」及び「修了生サポート研修」

北九州市では、「環境未来都市」の実現に向けて、持続可能な社会づくりを進めています。それを担う人材を育むため、昨年度は当法人と市が協働で、ESD コーディネーター育成研修を実施し、45 名の修了生が誕生しました。しかし、研修後の地域でのコーディネーター活動は、コミュニティや課題に応じて、つなぐべき人やものなどが異なり、複雑な問題も多いため、即実践は、中々困難です。

そこで今年度は、昨年度同様の地域課題の発見と企画力を磨く「ESD 未来創造セミナー」に加えて、昨年の研修修了生を主な対象にして、実践に必要な知識やコーディネート力を高める「修了者サポート事業」を行いました。さらに、活動実績やノウハウを持つ「北九州ESD 協議会」( 現在75 団体)の参加団体との対話の場をつくるとともに、同会が活動の助成を行うなど、いわば「駆け込み寺」的なサポートの仕組みづくりを行いました。

修了者サポート事業の研修では、岡山や北九州の事例なども参考にしながら、各研修者がそれぞれの地域で実践できる仕組みと計画を立てていきました。市民センターを中核に協議会をつくる、といった形が取り組みやすい地域もあれば、具体的な事業を実施するプロセスで、少しずつ関係団体を増やしていく(広げていく)といった形が入りやすい地域もありました。

研修の結果、実行委員会を結成し、学習会を計画した団体もいくつか誕生しています。受講生からは、連携の効果や必要性を感じられるような場づくり・場回しのためにはコーディネーション力とファシリテーション力がカギであり、それらを高める研修をもっと行ってほしいという要望が出てきました。

北九州市との本協働プロジェクトでは、このようなニーズに応えながら、「ESD 未来創造セミナー」を受講した人々を核として、「北九州100 万人市民がESD 活動を実践!」を目指したいと考えています。

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三隅佳子写真_2NPO 法人北九州サスティナビリティ研究所理事長 三隅佳子

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広島:地域コーディネータースクール「地域とテーマの幸せな出会い」~既存のコーディネーターとつながる取り組み~(後編)

地域性とテーマ性のバランスが取れた魅力的な実践報告の刺激を受け、参加者がチームに分かれて「ESD を意識した企画づくり」に取り組んだ集合研修1 をふまえ、OJT 期間にチームごとで企画を練り上げ、集合研修2 では担当しているプロジェクトの企画書を発表しあいました。完成した企画書は以下の10 本、それぞれ個性溢れるものとなりました。

● 「地域力×医療×命」
 ~地域完結型の” 本当の幸せ” を目指して~
● 「まちづくり進化論の実践と検証」
 ~地域DNA のガラパゴス化と途絶防止のために~
● 「EXPO 東千田」
 ~東千田界隈の商店と並びの空き店舗を使ったマルシェ~
● 「戸坂産○○○でつくろう!」
 ~戸坂に伝わる母の味~
● 「もちつき&ファイヤー」
 ~父親が地域活動で交流するためのイベント~
● 「こどもじゃけぺでぃあ」
 ~クイズを通じて親子で広島のお宝を学ぶ~
● 「ひろしまちから」
 ~広島を本気でよくする市民・政治家をつくる~
● 「北広島×○○」
 ~北広島の資源発掘プロジェクト・今回は源流探検~
● 「広島のカッコいい!?大人に会おう!」
 ~子どものキャリア教育プロジェクト~
● 「北広島町交流体験・交流体験事業化会議」
 ~子ども農山漁村交流プログラムを通じて~

これらの企画内容をお互いに学び合い、フィードバックを行いました。その後、企画グループ毎に評価を行うためのシートをつくり、事業報告書のフォーマットに関して確認を行いました。
評価シートの項目の例として、1)事業企画的側面、2)プログラムデザイン的側面、3)運営的側面、4)進行的側面、5)成果的側面を挙げました。事業の実行前に評価軸を確定することにより、事業前、事業中、事業後と各プロセスにおいて事業評価ができるようにしました。

集合研修2 はこれで終了し、集合研修3 までの間の4 ヶ月間で各プロジェクトをグループ毎に進行しました。

集合研修3 では、事業報告書や評価表を元に各プロジェクトがどのような成果を挙げることができたのか全体で共有しました。大枠企画書の通り進行できたプロジェクトと、諸事情の調整の中で当初の実施内容と変わったプロジェクトがありました。地域のコーディネーションを行う場合、常に様々な流動的な要素の中で企画や評価内容を変更する必要があります。わずか数ヶ月の本研修の中でも、各プロジェクトの中でダイナミックな変化を遂げていることを参加者の発表を通じて感じることができました。さらに、参加者の中で「地域コーディネーターとして必要なことは何か?」をワークショップ形式で考えました。地域のことを思い、共感し、寄り添っていく力が、企画等のスキルを支える基礎的な力として必要なことを全体で共有することができました。

kono_photo河野 宏樹(こうの ひろき)
環境教育事務所Leaf 代表。
学校、企業、自治体、公益法人等との協働を通じて環境・平和・国際協力を中心とした教育事業を行なうとともに、参加体験型学習のプログラム開発や指導者養成を行なっている。NPO 法人これからの学びネットワーク理事、NPO 法人ひろしまジン大学理事も兼務。

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広島:地域コーディネータースクール「地域とテーマの幸せな出会い」~既存のコーディネーターとつながる取り組み~(前編)

1. はじめに

今回ESD コーディネーター研修を広島地区で行うことになり、これまでにも岡山市などでESD の研修に数多く携わっている人間科学研究所の志賀誠治さんと、広島を中心としたまちづくり事業に関わっているNPO 法人ひろしまジン大学の平尾順平さんと議論を重ねました。
この中で浮かび上がってきた課題は以下のような二点です。

① 優れたテーマの設定により事業の盛り上がりはあるが、どこでもできるような、地域性に乏しい事業がコーディネートされている場合がある。
② ①と逆で、地域に密着した事業ではあるが、マンネリ化しており新しい切り口やテーマ性に乏しい事業がコーディネートされている場合がある。

そこで今回の研修のテーマとして「地域とテーマの幸せな出会い」を設定しました。ESD の事業を展開していく上では「地域性」と「テーマ性」の両方がうまく出会っていく必要があると考えています。上記のような課題が発生しているのは、地域とテーマがうまく出会っていないため、もしくはどちらかのみが機能しているためであると考えられます。そこで、本研修では、コーディネーターが事業に関わるステークホルダーにとって魅力的なテーマ性をつくると同時に、特定の地域にこだわり地域の持続可能性というキーワードが浮かび上がってくる事業を展開できるようになることを目指していきます。現在、様々な地域でコーディネーターの働きをしている人びとに、改めて「持続可能性」というキーワードを認識してもらうためにも「地域とテーマの幸せな出会い」は大切なメッセージになっていくと考えています。

また、ESD は言葉や概念として認識してもらいにくいという傾向があります。ESD という言葉を知っている側からすると、人と人をつないで持続可能性をテーマにした事業を展開するコーディネーターは存在しているけれども、そのコーディネーター達はESD という言葉は知らないということがよくあります。
このような既存のコーディネーター達をESD コーディネーター研修に参加してもらうとなると「ESD コーディネーター研修」という名前は広報上使いにくいということがあります。
つまり、彼らにとって分かりやすい単語での研修名が必要であるということになります。そこで今回のESD コーディネーター研修では、「地域コーディネータースクール」という名称で広報することにしました。こうすることによって、主に環境省や文部科学省の枠組みの中でESD という言葉に触れてこなかった、まちづくりや中山間地域振興に関わるコーディネーターにも分かりやすく捉えられたと感じています。

2. 研修対象の工夫と組み立て方

漠然と「地域コーディネーターを養成します」という看板では広報が困難であることが予想されたため、まずはひろしまジン大学で活躍する事業コーディネーターを対象として想定しました。
彼らの中には先に挙げた課題を抱えている方もおり、強い関心を持つ方も数多くいると感じていました。彼らを基軸にさらに、フューチャーセンター、中山間地域振興に関わるNPO 関係者、公民館関係者、中国環境パートナーシップ職員等幅広い参加者に直接呼びかけて参加を促しました。このように、募集対象を具体的に絞り込んでから呼びかけていくことはコーディネーター研修の広報としては必要な手続きではないかと考えています。

また、具体的な参加者像が見えたところで、彼らの動機を高めるようなゲスト発表者を選定していきました。今回は特に、地域性とテーマ性のバランスをとりながら活動をしている実践者として、高知のNPO 法人砂浜美術館から村上健太郎理事長に発表して頂くことにしました。砂浜美術館では有名な「T シャツアート」の他にも、地域の調味料を見直すプロジェクト「さしすせそ計画」などいずれも、地域の資源を活用しながらデザインやテーマ性に富んだ事業を展開しています。今回の「地域とテーマの幸せな出会い」というテーマにはぴったりの題材です。

地域コーディネータースクール(広島)の内容イメージ
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3. 研修企画の中身と工夫

今回のESD コーディネーター研修の与件としては、コーディネーターの現場で実践しながら研修効果を検証していくOJT(On the Job Training)型で行うということが挙げられます。
そこで、今回は左下の図のように3 回の集合研修(第1 回:オリエンテーションと企画/ 1 泊2 日、第2 回:企画の発表と共有/ 1 日日帰り、第3 回:実施した企画の評価/ 1 日日帰り)とその間にOJT を入れて行う方法としました。OJT の間にはサロンと称する主催者側との相談会、Facebook グループによる情報共有、および相互の実践現場視察をフォローアップとして行っていくことにしました。

研修全体の目標としては、「ESD の視点がない、もしくは意識化されていない参加者(コーディネーター)が、ESD を自分の言葉で捉え自らの活動に活かすことができる。」を設定しました。
また、第1 回目の集合研修の目標としては、1)ESDの視点が盛り込まれた企画書を書くことができる。2)お互いから刺激を受け視野が広がる。3)合宿感覚でやる気が高まる。の3 点を設定しました。第1 回目の集合研修の中ではESD の概念にも触れ、「自分たちの地域で未来に残したいことは何か?」という問いを考えながら、各参加者が実践していく企画を考えるという内容にしました。
また、これまでいろいろな形でコーディネーターの現場を踏んできた参加者同士で用語の使い方の共通認識を持つためにも、企画やプログラムデザインといった内容の講義も行いました。

4. 第1 回集合研修の成果

第1 回集合研修は20 名の参加者が参加しました。当初想定していた参加者層が呼びかけによって参加しました。様々な地域性やテーマ性を持ち寄り、個人もしくはチームで企画の種を作っていきました。その結果、「選挙と民主主義」「公民館と中間支援組織との連携事業」「中山間地域での子ども向けプログラム開発」「地域での葬儀」「子どもキャリア教育」「小規模商店街のマルシェ」といったタイトルの企画が練り上げられてきました。企画を作成する過程でチームの離合集散がありましたが、各コーディネーターが最善のパフォーマンスを発揮するためには必要な過程と考えています。

5. 課題と今後に向けた動き

原稿執筆時点ではこれから第2 回集合研修がはじまろうとしているところです。この形の研修では、個人での企画が多ければ多いほど、主催者側での企画の確認が煩雑になる欠点があります。限られたマンパワーの中で企画を確認・修正し、よりよい研修結果がでるよう、参加者と主催者側とで調整していくことが必要とされます。また、日々の業務で多忙なコーディネーター達の進捗を確認しながら、研修期間内での成果を出せるよう臨機応変に声かけしていくことが主催者側に求められていると感じています。研修期間を終え改めて報告する機会にまた、全体を通じての課題や改善案を記述したいと考えています。

kono_photo河野 宏樹(こうの ひろき)
環境教育事務所Leaf 代表。
学校、企業、自治体、公益法人等との協働を通じて環境・平和・国際協力を中心とした教育事業を行なうとともに、参加体験型学習のプログラム開発や指導者養成を行なっている。NPO 法人これからの学びネットワーク理事、NPO 法人ひろしまジン大学理事も兼務。

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ESDコーディネーター研修~地域✕テーマのしあわせな出会い~@広島

広島という地域で思いをカタチにしたい人びとが集い、ESDコーディネーターのOJT型研修が実施されています。

研修の目標は、ESDを自分のコトバで捉え自らの活動に活かせるようになること。
大朝町での一泊二日の合宿からスタートし、今回を含め3回の集合研修とOJTおよびフォローアップで構成される人材育成プログラムです。

合宿の一日目は、砂浜美術館の館長をお招きして、地域とTシャツアートというテーマが出会った知県黒潮町のお話をお聞きしました。
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うまくいっている砂浜美術館にも色々なプロセスがあったようです。
そのプロセスから得た気づきをもとに各自の問題意識へつなげていきます。

そして、思いをカタチにするには企画力!
一日目の後半は、背景・目的目標・コンセプト・マーケティング・ポテンシャルといった事業企画に必要な要素のレクチャー。

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二日目は、チームに分かれて実際に企画書づくりに取り組んでいます。
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第二回目には企画書を完成させ、実際に地域での活動につなげていきます!

結果が楽しみです。

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岡山 ESDコーディネーター育成セミナー 報告

~持続可能な地域づくり、学びの場づくりに大切なコト~

EPOちゅうごく(中国環境パートナーシップオフィス)では、ESDに基づく環境パートナーシップを促進するため、ESDの理解促進やネットワーク構築をねらいとした、ワークショップやフォーラム、人材育成のためのセミナー等を中国各県で行っています。今年度は、公民館を拠点とした地域総働型のESDを核として、多様なESDの取組が広がっている岡山市と連携し、2日間のESDコーディネーター育成セミナーを実施しました。
平日開催の中、20~30代といった比較的若い年代や、学生、NPO関係者、企業社員、行政職員など、多様な属性の方がESDの可能性に期待して大勢参加しました。初めてESDという概念に触れる方もいたので、研修はESDの基本やコーディネーターに必要な7つの視点、参加型の学びの場の作り方・まわし方といった基礎的な目標と内容を設けました。

【日  時】平成25年1月30日(水)10:00~18:00、31日(木)9:00~17:00
【場  所】ゆうあいセンター(岡山県岡山市)
【参 加 者】32名
【講  師】志賀誠治(人間科学研究所)
【主  催】環境省中国環境パートナーシップオフィス
【協  力】岡山市
【目  的】持続可能な地域づくりに向けて、NPO・行政・企業・地域住民など多様な主体や世代の参画と協働を促すための、
学びあいの場をコーディネートする人材(=ESDコーディネーター)を育成する。
【目  標】整理する/ESDに関する知識・情報・課題について整理する
つながる/ESDにかかわる人々がつながりあう
やる気になる/ESDコーディネーターとしてのやる気を醸成する

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8つのセッションでは、講義やグループワークなどを通して、一人ひとりがESDという視点やコーディネーターとしての自分のあり方を整理し、参加者同士でお互いの価値観やビジョンを共有。“2日間のふりかえりとわかちあい”では、「コーディネーターやファシリテーターとしての役割もしっかりと学んだけれどそれ以上に多くの人の声が聴けてよかった」という感想が多くありました。また、講師のファシリテーションから、「場づくりの大切さや自分の意見を受け入れてもらえる嬉しさを体験することができた」と、参加者の満足度は高かった様子。
今年度は、2日間のESDコーディネーター育成セミナーを実施し、多様な参加者がESDについて理解を深めることができ、持続可能な地域づくりに向けた関係構築やコーディネーターとしての役割・あり方の見つめ直し、今後の実践に向けた意識を高める機会となりました。ただし、今回は基礎的な研修内容であったため、OJT型研修の実施に向けて、基本的な知識や技術の習得だけでなく、具体的な事例からの学びあいや実践の機会、それに伴う評価・検証等の必要性を感じました。

松原さん顔写真
<報告者プロフィール>
松原 裕樹(まつばら ひろき)
1982年広島生まれ。NPOや企業、渡米経験を経て、環境・国際・教育・観光・地域づくりなどの分野で活動中。「学び」と「関わり」のデザインを手法とした事業の企画や運営、コーディネートを行っている。2012年より、中国環境パートナーシップオフィス(EPOちゅうごく)に勤務。

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稲城市ESDコーディネーター育成セミナー ~2050年の大人づくり~

稲城市は東京都の郊外に位置し、梨の産地として豊かな自然が残る住みやすい街です。全国的にも珍しい人口が増加傾向にある街でありながら、多摩川や里山、梨・ぶどう畑、牧場などの自然環境を活かした学習がこれまでも各学校で取り組まれています。また、そうした学習過程では地域住民の協力を得ながらの教育が充実しています。現在までに全小・中学校がユネスコスクールへの登録申請を済ませており、第二次稲城市環境基本計画にもESDが位置づけられた現在、今後はさらにESDの視点から各学校の教育内容の充実や指導方法の改善などが行われることや、地域住民や企業、大学やNPOなどの学校教育への参加や参画が、これまで以上に求められています。
全校で面として進めるESDは、社会的・国際的な課題を横断的に取扱う問題解決的な未来志向の学習であり、学校外の教育力を積極的に内包化する必要性があり、上記の役割を担うコーディネーターの育成と参画が目下の課題となっています。

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【実施期間】 2012年6月~2013年2月(全8回)
【場  所】 市内の学校等
【参加者】 市内教員 20名  市民 3名
【講  師】 森良氏(ESD-J理事、エコ・コミュニケーションセンター代表)
      田村学氏 (国立教育政策研究所 教科調査官)
【主  催】 稲城市教育委員会

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学校がESDコーディネーターに求める資質・能力は、ESDの知識、地域社会の情報掌握、人材・教材へのアクセス、学校と教育課程の理解、ファシリテーションスキルの5つです。
ESDのコーディネーター育成については、私の前任地である多摩市での経験を踏まえてESD-Jと連携を図りながら、ECOMの森良氏を通年の講師として招へいして、OJT型の研修会を全8回実施しています。現在は学校へのESDの浸透を中心に据えていますが、地域住民をはじめ関係者には研修をオープンにしており、誰でも参加できます。教員と役所の環境担当者・地域住民・保護者などが一緒に研修に参加しながらESDの指導計画の作成を進めており、コーディネーター育成の側面も含んでいます。
その過程では、閉じた中では得られないアイディアや解決方法が生み出され、最終的には児童・生徒にとっても魅力のあるESDの学習が生み出されることが期待されています。一時的な授業の支援者としてではなく、企画やその評価にもコーディネーターが携わることが必要だと考えています。また、教育課程や学校や教員のもつ文化などへの理解促進や学校組織との課題の共有、人間関係の構築や促進なども研修の意味としては、重要なものと考えて位置付ける必要を感じており、今後も充実させたいと考えています。

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<報告者プロフィール>
千葉 正法(ちば まさのり)
東京都世田谷区、杉並区で公立中学校国語科教員として勤務の後、八王子市教育委員会指導主事、多摩市教育委員会統括指導主事、同参事を経て、現在は稲城市教育委員会参事・指導室長。幼少から晴釣雨読の生活を送り、現在は「2050年の大人づくり」をテーマとして、国語科教育とESDの側面から学校教育を支援している。

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北九州市ESDコーディネーター育成講座「ESD未来創造セミナー」

北九州市ESDコーディネーター育成講座「ESD未来創造セミナー」
 ~市民センター館長・社会教育主事等を中心に~

1. ESD 未来創造セミナー開講のきっかけ

北九州ESD 協議会は、北九州地域でのESD 活動を推進するため、市民の呼びかけによって平成18 年に市民団体、企業、学校、行政等44 団体で設立されました(現在75 団体)。NPO法人北九州サスティナビリティ研究所もその構成団体で、ESDの支援を活動の一つにしています。
北九州市はこれまで、公害を始めとするさまざまな環境問題を克服してきました。現在も地域や都市の中で人が輝く、賑わい・安らぎ・活力のあるまちを目指して多様な環境の取組みを進めており、平成23 年には国から「環境未来都市」に選定されました。
これらの取組みの原動力となるのが、市民の環境力です。「環境未来都市」の基盤となる持続可能な社会づくりのためには、知識の習得にとどまらず、それを活用して自ら考え、判断し、行動するとともに、知識や理解した内容を周囲の人々に伝え、社会を動かすことのできる人材を育成する必要があります。
北九州ESD 協議会では、設立当初から毎年、会員を対象に、ファシリテーター研修講座を行ってきましたが、十分実践につながったとは言い難い状態でした。そのような中北九州市は環境未来都市構想が掲げる目標に積極的に取り組むため、市民活動団体の発想や専門性等を活かした提案を市と協働で実施する事業を開始しました。当法人はESD 活動を担う人材育成研修を市と協働で行うことが、北九州全域にESD 活動の普及に極めて有効であるとの主旨を提案し、その重要性が認められ採択・開講の運びとなりました。

2. セミナーのねらい

九州市には、小学校区毎に設置されている市民センターを始めとして市民活動を支援する施設が多くあり、すでに地域の特徴を活かしながら環境や社会を良くするためのさまざまな学習や実践活動が行われています。一方近年、地域の課題はさまざまな問題が複雑に絡み合っており、少人数で取り組んでも解決が困難なことが多く、地域としても新しい切り口を探求していると言えます。
そのため、環境のみならず、人権、ジェンダー、福祉、貧困削減、多文化共生など多様なテーマに取り組んでいる地域の関係者の分野横断的な協働を生み出す視点とそのための技量をエンパワーし、課題解決のための行動変容と社会変革に向けた思いと力を引き出し、それを形にする視点と力を身に付けるESDコーディネーターの育成が必要と考えました。
そこで、このセミナーでは、すでに地域の実情に知見があり、リーダーシップやマネジメントの経験を持ち、後に広がりを持つことができる市民センター館長、社会教育主事・主事補、環境学習施設の職員等を対象としました。

3. セミナーカリキュラムの内容と特色

カリキュラムづくりにおいては、効果的かつ有意義なものになるよう、保育所や大学、生涯学習等各世代にわたる教育関係者や行政からなる作成委員会を設置し、幅広い視点かつ専門的な意見をいただきました。さらに、ESD-J に講師について助言をいただき、下表のとおりカリキュラムをまとめました。

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また、セミナーに参加していただきやすいように、事前学習として市民センター館長全員(7 区に129 名)に、ESD の説明やこれまでの活動等の紹介を行いました。
セミナーの目標は、ワークショップやフィールドワークを中心に「自ら課題を見つけ出す力」と「地域における課題解決に向けた企画力」を身につけることです。
セミナーⅠではESDの基礎知識・事例を学んだ後、班にわかれてフィールドワークを行い、意見を出しながら全員でマップを作成しました。

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テーマは「人と自然との関わり」と「時代の流れ」。セミナーⅡでは、セミナーⅠ終了後の宿題(参加者自身の地域における課題とその解決プログラムをマップに落とす)を全員が発表。さらに企画書づくりの具体的な方法を学び、各自が企画書作成に挑戦。その成果品の中からフォローアップ会合で発表する企画書を参加者全員がコンペ形式で選びました。

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4. セミナーの成果

当初見込んだ定員(30 名程度)を上回る45 名もの応募があり、本セミナーの受講による社会・地域への貢献に向けた期待度・関心度の高さが伺えました。
講座終了後、参加者からは、ESD は「地域を見直す切り口」、「地域課題解決に向けた糸口」になったという声を多く聞くことができました。さらに、気付き・課題を多面から見ることの大切さや多分野にわたる多くの人が関わり学びあう楽しさを味わい、今後のまちづくり活動において重要な視点としてESDを加えたい(+ ESD)という意見も多くありました。
フォローアップ会合においても、一般参加者から次回のセミナーにぜひ参加したいとの声もあったほか、「これからのまちづくり」のテーマにもとづく全員参加型のパネルディスカッションは反響が大きく、地域のために何かしたいという参加者の前向きな気持ちと熱意に心強さを感じました
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5. 今後の課題

ESD コーディネーターは、まさに持続可能な未来を創造する人であり、そのような人々がこのセミナーをきっかけに誕生することを願って、「ESD 未来創造セミナー」と命名しました。
今回のセミナーを終え、ESD 活動の普及を図るためには、今後もこのESD コーディネーター研修を継続し、つなぎ・まとめ役たる人材育成に力を入れていく必要があると実感しています。さらに、今回のセミナーの受講生のフォローを丁寧に行うことが、次なるESD 普及の決め手であり、これからの課題です。
セミナーを受講した人びとが核となり、「北九州100 万人市民がESD 活動を実践!」につながっていくことを目指し、進んでいきたいと考えています。

<報告者団体プロフィール>
北九州サスティナビリティ研究所
市民、団体、企業、行政のネットワークに基づく持続可能(サスティナブル)な社会システムの構築、地域活性化への寄与を目的に2006年設立。キーワードは、法人名のとおり「サスティナビリティ」。SDに関わる研究・教育活動を実施し、国際業務を受託するなど、北九州ESD協議会の活動も支援。

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岡山市における公民館職員向けESD コーディネーター研修

1. はじめに

 岡山市では2005年に、学校や市民団体、企業、行政など、立場や分野の違う人たちが集まりESDを推進する「岡山ESDプロジェクト」が始まりました。岡山市の特徴のひとつは、市内に37ある公民館を地域のESD推進拠点と位置づけ、それぞれの地域でESDを進めていることです。岡山市はもともと公民館活動が盛んで、「共生のまちづくり」という公民館の指針とESDの理念が一致していたため受け入れやすかったのです。また公民館にとってもESDは公民館の存在意義を現代的な切り口から見直すよい機会と捉えられました。しかし、職員自身にとっても初めての「ESD」を地域で進めて行くためには職員の力を高めることが必須であることから、プロジェクトの事務局である岡山市環境保全課と中央公民館が協力しながら公民館職員向けESD研修を継続的に実施してきました。

中央公民館

2. 公民館職員を対象としたESD 研修の展開

 公民館というところはもともと市民が自ら学ぶ場として設置されたもので、子どもからおとなまで地域の多様な人々が利用します。公民館職員は彼らを支援する学びのコーディネーターの役割を持っているわけですから(岡山市はほぼ全館に社会教育主事を配置)、課題はESDをどう理解し、どう取り入れていくかでした。公民館では、以前から環境や国際理解などESDに通じるテーマの講座をいろいろ行っていたので、さらに何をすればよいのか職員はとまどいました。一方で、それまでの講座は、講師の話を聞く講義型か、自然体験や料理教室などの参加体験型がほとんどで、「勉強になりました」とか「楽しかった」という感想があっても、学びが個人で完結してしまう、地域の課題解決や社会参画などの実践に結びつかないという課題がありました。また、職員にとっても、司会進行はできてもファシリテーションの経験に乏しいという課題がありました。

3. 研修の内容と特色

 そこで、最初の研修は、2006年度に2日間実施した「魅力あるESD講座とは・・・公民館を通して地域にESDの学びを広げるには」でした。講師には、広島から人間科学研究所の志賀誠治さんをお願いし、以来、内容をその都度相談しながら下記のように研修を行いました。

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 ほかにも、「公民館と学校が連携するには」「さまざまな人や団体を巻き込むには」などの研修も実施し、また、市が行う教員や一般向けのESD研修やイベントの際には必ず公民館職員にも参加を呼びかけ、ESDの理解と、多様な人たちとの出会いと相互理解を深めて行きました。
 一方で、ESD研修と並行して、公民館職員でESDプロジェクトチームを作って自主研修を進めました。学んだことをどう実践で生かして行くかを考え、主催講座や他の研修などで企画実践し、報告し合い、評価指標をつくって実際に評価を行うなどの取り組みを行いました。こうした取り組みを合わせて進めることで、実践力をつけていきました。

4. 研修の成果と今後の課題
原さん写真_加工

 ESD研修で学んだことは、ESDに限らず公民館職員にとってさまざまな場で必要な知識や力、スキルであり、職員全体のESD力向上が、公民館利用者のエンパワーメント、ひいては地域力向上につながります。最初の研修で講師に言われたことは、「ESDはつながりの再構築」だということです。このことの意味をそれぞれの職員が自分ごととして腹落ちするまでにはたくさんの時間と試行錯誤が必要でした。しかし今ではあちこちの公民館で参加型の講座が組まれています。また、ひとつの講座だけでなくいくつかの講座や事業を総合的に組み合わせたり、他館との連携を行う館もあります。ESDは座学では身につきません。それぞれが自分なりのESDを実践の中からつかみ取っていくものだと思います。そのためにも段階的、継続的でOJT的な研修が必要ですが、課題としては、職員が全回出席することは業務の都合で難しく、なかなかESD研修の全体像が理解できず、総合的な力がつきにくいことです。

5. おわりに
重森 しおり

 現在、公民館では、地域の課題解決ができる人を育てるということをESDの目標にしています。まず地域の特徴を知り、よいところや課題を見つけ、それを解決するにはどうしたらいいか一緒に考え、実践していくというプロセスを市民と一緒に行います。参加型というのは講座のスタイルに留まるのではなく、公民館の運営、あり方そのものから見直す取り組みであり、持続可能な社会のあり方そのものだと思います。

<報告者>
上:岡山市ESD最終年会合準備室副主査 原 明子
1991年から(財)日本ユニセフ協会で学校向けの広報啓発・開発教育に携わる。2005年から岡山市役所でESDの推進を担当。ESDコーディネーターとして、ESDの広報、推進事業の企画運営、研修、渉外等行っている。現在は、2014年秋岡山市での「ESDに関するユネスコ世界会議」開催に向けて準備中。

下:岡山市立中央公民館 主任 重森しおり
就実大学で社会教育主事補の資格取得し、2000年、御津町教育委員会で社会教育主事補として採用。約3年間社会教育係社会教育主事として勤務。2005年に岡山市と合併後、2008年から岡山市立中央公民館指導係勤務。5年目。

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