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千葉県コミュニティプランニングコーディネーター育成講座

1. 育成講座のねらい

NPO 法人CoCoT は、平成23・24 年度「千葉県コミュニティプランニングコーディネーター育成講座」を開催している。
本講座では、3.11 の震災後の課題を踏まえて、平常時と災害時のいずれにおいても高いコーディネーション機能を発揮する専門性とスキルを身につけたコーディネーターの育成を目的としている。その目的達成のために、コーディネーターに必要不可欠な専門性・スキルを抽出し、習得することを目標とした。
また、身につけた専門性やスキルを継続・発展させるためには、サスティナブルな学習支援およびネットワーク形成が必要と考え、その体制づくりにも取り組んだ。
千葉県は、東京都に隣接した都市として住居地区となっている県北西部の一方で、東部や中南部では多くの地域で人口の減少している現状もある。それらを踏まえると、それぞれの地域特性や職場環境・雇用形態により、業務に対する考え方や取り組み方は、千差万別である。そのため、育成講座のプログラムは、地域特性を捨象した地域社会に対する働きかけについて共通の認識を導入の段階で持てるようにした。カリキュラムは、全体の構成を基礎領域と専門領域に分け、コーディネーターが持つコミュニティにおける役割の基本的な考え方や姿勢、基本技能を学ぶことを基礎領域とし、専門領域では現場研修も含めた応用技法の習得を目指した。

2. コミュニティプランニングコーディネーターとは

では、私たちが目指すコミュニティプランニングコーディネーターはどのようなものであろうか? これまでのボランティアコーディネーターは、支援対象の基本を個人とし、地域社会の中で一人ひとりの人権が尊重される状態を作り出す専門職として位置づけられてきた。
コミュニティプランニングコーディネーターは、基本を支援対象ではなく、プロセスに置いてある。極めて個人的な思いや不安要素を引き出し、社会的な俯瞰した視点から考察しその背景と潜在している地域課題を洗い出す。さらに、共感者、地域ネットワークへと段階的なマッチングとコーディネートを経て、課題解決に向かう。市民が地域の課題を自らの手で解決していくためのプロセスを作り出す専門職である。先に地域課題があり、その課題解決に向けて、必要な要素を洗い出し組み立てていくのが、コミュニティプランニングコーディネーターの仕事である。

地域社会には、近年の社会的課題の多様化・深刻化にともない、行政サービスだけでは対応しきれない社会的弱者の存在が顕著となっている。この人々に対しては、地域のきめ細かな課題に対応できるNPO のサービスを提供することが期待されている。NPO のサービスは1998 年のNPO 法施行以来、質量ともに増加したが、その情報量の多さが、逆に適切な判断を下しにくい状況を作っている。地域のなかで散逸した大量な地域課題・NPO の情報から、必要なデータを出さなくてはならない。そのまま提供するだけでは意味がない。情報を分析し、文脈化し、情報を有効活用できる“ かたち” に咀嚼して、必要とする人や組織に的確に渡すことのできる技術が必要である。更に、そうし
たNPO の情報を、社会的弱者とその支援者が入手し、活用することのできる体制を整備しなくてはならない。コミュニティプランニングコーディネーターは、「情報の目利き」である。

3. 育成講座の内容

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情報を取捨選択し、判断のプロセスに市民が参加していくことを支援するプロセスを描き実現に向けてマネジメントしていくための力量をどのようにつけていくか。以下は講座の内容である。

〔対象〕千葉県内の市民活動に関わる組織や団体(中間支援組織のスタッフ・就職希望者、自治会、ボランティアを受け入れている団体、施設のスタッフなど)
〔期間〕4 ヶ月間
〔内容〕次のカリキュラム参照のこと
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4. 育成講座の効果

育成講座を通じて「地域課題を把握する力」「情報を収集し活用する力」「企画立案力」の3 点のコーディネーションスキルと実践力をつけることを目標とした。そして、その目標が達成されていることを示す指標を「研修終了後に研修参加者の住む地域の課題解決コーディネートプランが出来上がっていること」に置いた。市民活動センターや社会福祉協議会での実地研修もカリキュラムとして取り入れた。これによって机上の空論で終わらない学びや気づきを研修参加者に提供することができた。
実地研修後にコーディネートプランの内容が深まった参加者も少なくない。
「コミュニティプランニングコーディネーター育成講座 修了式」におけるコーディネートプラン・成果発表では、実際に10のコーディネートプランが発表された。なかにはすでにプランに基づいてプロジェクトが立ち上がっているケースもあった。育成講座が実践的なものであったことを示している。

5. 今後の課題

①継続的にコーディネーターを教育する体制が整っていない実際に市民活動センターや社会福祉協議会でコーディネートを体験する実地研修もカリキュラムとして取り入れ、現場を見て知り体験することの有用性が高いことが明らかとなった一方で、受け入れ態勢の脆弱性も浮き彫りになった。受け入れ施設においても、それぞれのプログラム内容の質に大きなバラつきがあった。恒常的実践的な教育体制の整備と専門職養成の教育カリキュラムの確立は不可欠である。コーディネーターがその高い専門性・スキルを維持・開発していくことにおいても、日ごろからトレーニングできる環境と教育機関を整えておくべきであろう。

②コーディネーターが社会的に認知され活躍できる土壌がまだまだ育まれていない高い専門性・スキルを持ったコーディネーターを養成しても、それを充分に発揮できるポジションやフィールド、チャンスなどが与えられなければ意味がないといえよう。歴史的にボランティアコーディネーターという呼称を用いて配属してきた社会福祉協議会に対して、公設の中間支援センターではコーディネーターを配置しているセンターは未だに少ない。社会福祉協議会においても、非常勤職員や、常勤職員でも兼職をしているなど、専門職としての位置付けをしているところは多くない。こういった実情を踏まえると、育成された人材がその力を発揮できる職域の開拓はこれからの大きな課題である。

<報告者>
小山淳子氏写真
NPO 法人コミュニティ・コーディネーターズ・タンク CoCoT 副代表理事 小山淳子

カテゴリー: お知らせ, コーディネーター養成講座, 地域の事例

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