活動内容

政策提言

【実施報告】ESD-Jオンラインセミナー「なぜ、NPO/NGOは政策提言を行うのか」

  • 日 時:2023年1月6日(金)18:00~20:00
  • 参加者:一般参加者13名、ゲスト2名、スタッフ3名 計18名

【プログラム】
あいさつ・趣旨説明 新海洋子(ESD-J理事)
レクチャー①「なぜNPOが政策提案、提言をするのか」
松井真理子さん(NPO法人市民社会研究所代表理事)
レクチャー②「SDGsジャパンの取組からみる政策提言」
新田英理子さん(一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク理事・事務局長)
ゲストセッション
参加者自己紹介・感想・意見など
まとめ

【レクチャー概要】
■「なぜNPOが政策提案、提言をするのか」松井真理子さん(NPO法人市民社会研究所代表理事)

  • 市民社会研究所の事業・役割の紹介、中間支援機能・NPOの機能と特性、NPOのアドボカシー機能について説明、事例紹介があった。
  • 市民社会研究所は、ひとを対象にした事業(市民教育・就労困難者の支援・生活困窮者支援)を行い、つなぐ(主にネットワーク型中間支援組織の構築・事務局運営)、変える(行政への市民参加、政策対話・政策提言・調査研究)役割を担っている。
  • NPOの機能と特性・独自性について以下3点を挙げ、3つの機能が重なり合って機能が果たされてことを強調された。

    1. サービス提供機能:社会の潜在的な課題を発見し、創造的で迅速なサービスの提供、当事者のニーズにきめ細かに寄り添う活動(利益がなくても実施)
      (独自性)国・自治体(お金、人、アイデアがない)、企業(利益がでない)、家族ができないことを担う。
    2. コミュニティ構築機能:主体的に社会課題に取組む市民性を育て、人々のつながりをつくる。             課題当事者をエンパワーする。
      (独自性)市民の課題に対して、直接の当事者、共感する人々(間接的な人々)として対応をする。
    3. アドボカシー機能:政策提言・対話、陳情、啓発、世論形成、調査研究、新しい課題に対する創造的な活動の実践など(独自性)課題に気づき、仲間で取り組んできた活動が、社会的に認知され、制度や税金で支えることが可能になった時点で政策化する。

  • 事例(コロナ禍における生活困窮者の増加への対応)からNPOの機能について紹介され、実際に行われた「行政との対話・学習会」「当事者との対話(無料食事つきサロン)」「当事者・スタッフ・食事提供者などで形成されるコミュニティ形成」「アンケート調査に基づく実態把握」「課題に関係する分野横断の行政部局・NPOとの政策対話」「成果のまとめと公表」について話された。
  • NPOがなぜ政策提言をするかについては、「当事者、地域ニーズを把握したNPOにだからできる政策形成、その力を発揮できること」、政治は地域からつくられる、地域こそが民主主義の学校と考えられ、NPOが政策提言をすることで「住民自治・民主主義を実体化すること」をあげられた。
発表資料(松井真理子)

発表資料(PDF)

■「SDGsジャパンの取組からみる政策提言」
新田英理子さん(一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク理事・事務局長)

  • SDGs市民社会ネットワークが設立された経緯や組織、役割、機能等について、2023年に向けての取組内容についての紹介があった。
  • 政策提言活動、普及啓発活動、連携促進活動の3本を事業の柱とし、分野ごとの12ユニットを核に活動を展開している。「社会において構造的に周縁化され脆弱な立場に置かれがちな当事者、そして当事者団体と緊密に連携し、多様な市民の皆様とともに「誰一人取り残さずに」SDGsを達成するための幅広い政策活動を行うことを役割としている。

出典:https://www.sdgs-japan.net/about

  • 今後の政策提言事業としては、政府に向けては「SDGs推進円卓会議への参画を通じた、SDGs推進本部への働きかけ」、政党や議員に向けては、「SDGs基本法案の上程」「政府のSDGs推進のための法的根拠に関する提言」、国際社会、国内に向けては、今年広島で開催されるG7を機会とした「G7市民社会コアリション」の運営、2023年9月開催の「SDGサミット」への参画、市民社会の活動の可視化として、市民社会視点でのデータ作成やデータを活用した提言、を行うこととしている。

【ゲストセッション及び参加者の主な発言】

  • NPOの活動そのものがアドボカシーである。
  • NPO/NGOは政策形成の力があり、発揮できる。しかし、今は発揮できていないように思える。
  • NPOの活動はお金が伴わないことが多い。政策、制度にすることでNPOに「委託」という形が生じる。しかし、その事業がルーティン化しやすく、「委託された事業」を行うことに時間とエネルギーが割かれてしまい、何のためにその事業を行っているかが見えにくくなってしまう。新しい事業、更に必要な事業を創造しにくくなっている。
  • 政策提言と言われてもなかなか自分事ごとにならない。地域での活動と政策提言が遠く感じる。
  • 実際は政策提言につながる活動をしているが、そのことにどう気付くか。
  • 国際協力、支援の活動をしているが、なかなか政策(提言・提案)につながらない。必要性や重要性は理解しているが、現場が忙しく、そこまで考えるに至らない。
  • 現場の活動が忙しく、政策提言の必要性がわからなかった。目の前の業務が忙しくても、広い視野で今すべきことを発信する必要性を感じた。日々忙しくてもそういった時間をもつことの必要性を感じた。
  • 目の前のことが忙しい。なかなか「政策」を考える時間を持つことが難しい。そのなかでも、政策提言、提案を考える「環境」を作ることの重要性を感じている。日々忙しいNPO/NPOに参加してもらえる場づくり、環境づくりをする必要性を感じている。
  • 最近のNPO、特に若い世代はビジネス思考が強く、政策提言という発想があまりなく、あっても政策提言はお金にならないから実施しないと言ったことを聞く。若い世代に政策提案の重要さをどう伝えるか、考えていきたい。
  • NPOの活動が社会課題解決というより自己実現をミッションする傾向が強くなっているように思う。
  • 団体設立に関わった世代から代替わりをし、自己実現をミッションにしているスタッフが増えているように思う。
  • 地域ニーズを把握し活動をしているNPOが、社会課題として政策にするために行政との対話を重ねた「政策協働」が必要である。
  • 声の大きい人だけが政策提言(提案)をしていても個人の意見として批判、避難されるだけではないか。組織として、団体として発していくことが必要である。個人の思いではなく、組織として必要性を伝えていくことが重要である。
  • 議員とつながることが重要である。過去の議員との繋がりかたを振り返りつつ、今の、今後の議員とのつながりかたを考えていくことが重要である。課題に対する考え方も議員によってそれぞれであり、目的をもって対話の場を持つことが重要である。
  • 現場のNPOは自団体の活動で手一杯であるので、中間支援組織による、政策検討の場や協働政策の場、政策対話の場づくりが求められている。
  • 中間支援組織の職員に、そのスキルや知識、経験も必要となる。中間支援組織自体にその必要性の認識がないことも課題である。
  • SDGsジャパンのような政策提言をメインに活動をするネットワーク団体は、地域や多様な分野のNPOの当事者性や地域性をふまえた政策提言(提案)を持ちよる場づくりをすることができる。その必要性を伝える役割を担っている。
  • ESD-Jも「教育」分野ではあるが、地域、多様な分野のNPO・NGOの政策に対する意見やアイデアを持ち寄る場をつくる役割がある。
  • ESD-Jは、「政策をつくる人を育む」「(必要な)政策を提案(提言)する」という2つの役割がある。その視点から事業を検討していきたい。
  • ローカルな地域レベル活動とネットワーク展開活動との差異、違いが気になった。活動の取り組み現状についてわかりましたが、課題とは?具体的な成果や評価について等も気になった。

【今後に向けての重要ポイント】
◎NPO/NGOは課題を抱えている当事者の声や状況を把握した活動を行っている。それらの課題を社会全体の課題とし解決するために、政策(制度や税金支える)として提案(提言)することが重要となる。
◎課題を解決するためには「政策提案(提言)」が重要なアプローチであり政策提案(提言)をする、政策提案(提言)づくりの場に参加することが近しくなるよう現場が忙しいNPO/NGOに伝え、参加を促すことが必要である。
◎NPO/NPOが連携、連帯をして、提言(提案)する政策について協議をする場、発信する場が必要である。そのためには、中間支援組織やネットワーク組織の機能が重要となり、「政策提言(提案)機能」を強化が求められる。
◎課題解決をするために、課題に関連する分野の行政部局やNPOが対話をし、協働による政策協議、その場づくりが必要である。

 

<アンケートの結果>
参加者全員が、セミナーの内容が大変良かった、良かったと回答した。理由としては、以下の通り。

  • NPOの本質についても考えさせられるような内容でした。日々の違和感や疑問は自分だけではなく、みなさんも同様に感じられている、あるいは課題に思われていることなんだとわかって、勇気づけられた感じがしています。
  • NPO/NGOが政策提言を行う意義、NPOの活動自体が政策提言に繋がっているということが非常に分かりやすく理解が深まった。具体的な事例も非常に分かりやすかった。
  • 講師だけでなく、参加者の話も聞けたから(良かった)。

○セミナーに参加されての気づきや学びをお聞かせください

  • アドボカシー、政策提言、声明、多様な立場の人が一堂に会する議論の場、住民自治。どれも身近にあるものでした。「政策提言」と言われるとピンとこなかったのですが、日々の多くは政策提言に結び付くもので、もう少し広い視野で日々の取組を捉えてみようと思いました。
  • ローカルとグローバルを結ぶ議論が進展しなかった点が残念でした。
  • 社会を変えていくためにはNGO/NPOの発信力強化が重要であり、政策提言はその中心に据えられるべきであることを改めて考えさせられました。効果的な政策提言を実現するのは絶え間ない情報収集と分析、様々な関係者間の連携が不可欠ですが、こうした体制がどのように作られ維持され発展できるかが1番のポイントだと思います。
  • 若い職員の方が政策提言の意味が分からなかったという話が聞けて、とてもよかったです。たぶん団体内では話をしていると思うのですが、なかなかわかってもらえないのだと思います。そういう意味で他の団体から話を聞く意義や研修としてこういったものに参加する意義を感じることができました。

 

○本日のセミナーへのご感想、ご意見、ご提案などをお聞かせください

  • 改めて、政策提言は、市民の声を届けるために必要と思いました。小さく活動しつつも継続が重要に思いました。
  • 後半の参加者のみなさんのお話も、書ききれないくらいたくさんの共感と気づきがありました。最初に自己紹介があると、参加者さんのことがもう一歩よくわかったかなと思います。
  • 参加者の皆様から、政策提言に対しての想い、自分事になりづらい理由、組織としての余裕がなく取り組めない実態などを伺うことができた。政策提言は人ごとだと思っている方々をどのように今後巻き込んでいけるか、どんな戦略が必要かを考えることが当団体や中間支援団体の課題であると感じた。

 

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