令和3年度ローカルSDGs人材育成地方セミナー
【北海道日高町】
「アウトドア業とローカルSDGs」報告

日   時: 2021年12月19日(日)13:00~15:00
会   場: 北海道沙流郡日高町字富岡
独立行政法人国立青少年教育振興機構国立日高青少年自然の家
参加者: 参加者総数 81名
一般参加者数合計:78名(会場参加者15、オンライン参加者63)
司会1名、講師1名、関係案内人1名
講   師: 鈴木 宏紀さん(自然考房Nature Designing 代表、合同会社うさっぷカンパニー業務執行社員、北海道アウトドアフォーラム実行委員会事務局)
関係案内人: 萱津 大知さん(国立日高青少年自然の家 企画指導専門職)
司   会: 中田 和彦さん(国立日高青少年自然の家所長、特定非営利活動法人持続可能な開発のための教育推進会議理事)

講 師 鈴木 宏紀さん

講師 鈴木 宏紀さん

関係案内人 萱津 大知さん

関係案内人 萱津 大知さん

司 会 中田 和彦さん

司会 中田 和彦さん

会 場

会 場

  • 昭和56年開所
  • 宿泊定員400名の青少年教育施設
    年間利用者数:約7.5万人
  • 主なアクティビティ
    ラフティング、沢登り、野外炊事、焚き火、キャンプ、スキー・スノーシュー
  • 地域ESD活動推進拠点

1.概要

冒頭、ウェビナーの参加者に配慮し、セミナーの趣旨や地域、会場などを動画で紹介した後、前半は関係案内人が講師にインタビューする形式で、日高地域に移住し、アウトドア業を起業した講師が、地域のよさを広く発信するとともに、様々な課題に向き合い、コミュニティショップの経営や自然を生かした観光振興など、地域住民を巻き込みながら地域課題の解決に取り組む様子をはじめ、転機や契機となったこと、アウトドア業のもつ可能性などを紹介いただきました。

後半は、インタビューをもとに、会場参加者やウェビナー参加者との質疑応答を行い、最後に、会場参加者一人ひとりの学びや気づきを共有する時間を設け、閉会しました。

2.関係案内人・講師の報告内容

(1)関係案内人:萱津 大知さん

元々は高等学校の教員であり、人事交流で現職。国立青少年教育施設として、SDGs達成に向けた取組の推進は、今後ますます重要になってくると考えており、自身もこの機会を通して、何ができるか、何をすべきかを一緒に考えたいです。

(2)講師:鈴木 宏紀さん 

①自己紹介と地域や取組の概要説明

愛知県に生まれ、青年海外協力隊、財団法人オイスカ環境教育専門調査員、青少年教育施設職員などを経て、人口1,500人足らずの北海道日高町日高地域に移住し、自然のよさを伝えていくために、「自然考房 Nature Designing」を起業しました。

ガイド業の傍ら、自然資源を活用した人材育成や観光、アウトドア業界のネットワークづくりをはじめ、日高山脈の国立公園化への対応など、持続可能な地域づくりに向けた課題の解決や新たな価値の創出に取り組んでいる。「よそ者」だからこそ見える地域のよさや課題、地域住民の巻き込み方など、各地におけるローカルSDGsの推進につながるヒントにしてほしいです。

②日高に移住した理由や背景について

自然の家に勤務していた頃、今までに経験したことがない非日常の体験をして、北海道の自然やそこに住む人の暮らしやアイヌの人たちの文化などについて、もっと深く知りたいと思ったのが一番の理由であり、日高町を選んだのは、人と自然の距離が近く、自分が思い描いていた理想の暮らしがここにあると感じたためです。

③取組の根幹について

自然資源を活用して地域・組織を活性化することにつながることが取組のベースになっています。また、震災や新型コロナウイルス感染症の感染拡大など、起業後に思うようにいかないことが多くある中で、「こういうことをやってほしい」、「助けてほしい」という周りの声やニーズに答えてきた結果、活動の幅が広がったという側面もあります。

④ローカルSDGsとアウトドア業の可能性について

アウトドアと地域の活性化との関係性を見ると、昨今の状況は大変厳しいです。震災や感染症など、2年に1回のペースで大きな災害が起き、事業者の足元がなかなか固まらない状況です。アウトドア・観光はイメージや風評が大きく影響するので、まずは自分の足元を固めるために、自己が提供しているサービスの質を高め、どんな状況になってもお客さんに来てもらえるようにすることが重要と考えています。

⑤地域住民、地域を訪れる方に求められることについて

北海道は生の自然資源(山・海)に価値を見出しています。その価値を売り出してお金にしていくのも大事である一方、自然資源を消費し、自然を壊していくことはできないので、保全していく視点も同じくらい重要です。地域の課題、特に高齢化や人口減少は解決できるのが理想ですが、現実的にはそうした状況になっても地域住民にハッピーに思ってもらえるような手立ても必要と考えます。日高町には、外国籍で短期間だけそこに暮らす住民もいます。そういう人たちも地域の一員であって、そういう人たちを増やせればそれでも良いです。

⑥「よそ者」について

外から来た人は色んな価値観や視点をもっているので、お互いにアイデアをもらいながら、交流することでお互いの地域がよくなります。そんな観光やアウトドアのスタイルも築けたら良いです。また、地域の課題解決という点では、いかに顔の見える関係を普段から構築していくかが重要であると思っています。

3.会場・ウェビナー参加者のコメント・質疑

(1)会場参加者からのコメント・質問

Q1. 卒業後、青少年教育に携わる仕事へ就職が決まっており、SDGsの達成に向けた取組を推進していく立場になります。正直なところ、SDGsや地域循環共生圏についての知識が十分ではないので、初歩的なことですが、「地域循環共生圏」とはどのようなことかご説明いただけますか。
A1. 地域循環共生圏は、環境省のホームページでも説明されていますが、端的に言うとそれぞれの地域が地域資源を補完し合いながら、地域の活力が最大限に発揮されることを目指す考え方です。
Q2. 講師の取組に関連して、地元の教育委員会として貢献できそうなことや積極的に行った方がよいことを教えていただきたいです。
A2. 地域の人を講師に呼んで地域学習をしてもらうための「つなぎ役」になることが重要です。教育委員会の職員が何でも自分でやろうと思う必要はないと思います。地元の人に依頼して地域の文化や自然体験、社会教育を一緒になってやっていく役割が求められます。
Q3. 教育の現場においてもSDGsはホットな話題であり、道内でも高校の「総合的な探究の時間」と地域課題の解決を結びつけた取組が進められていますが、その少し上の世代の参画を促すためのヒントを教えていただきたいです。
A3. なかなか17のゴールだけを見ても自分の生活との結びつきを感じにくいです。もう少し噛み砕いてその先にある目標、ステップを見るとより身近な行動がじつは結びついていることが分かります。自分個人の経験でいうと、外に出て同じような世代の人たちと交流して、それを地元にもって帰ることで、大学生のうちから社会人と関わる良い経験ができたので、若いうちから、異なる世代の人たちと関わると良いのではないかと思います。

(2)ウェビナー参加者からの質問

Q1. 人口減少傾向にある地域に移住する際、気を付けることや心掛けた方が良いことなどあればお聞きしたいです。
A1. 人口減少傾向にある小さな地域では若者がとても重宝されます。小さい地域であればあるほど、一人が占めるパーセンテージが高いので、自分がもつ個性や価値観が反映されやすいし、本人もやりがいを感じやすいです。やりたいことがある若い人は、まず小さな地域で始めることをお勧めします。
Q2. 北海道でアウトドアの分野で起業しようと思ったときの、収入面などの不安についてお聞きしたいです。
A2. 色んな仕事の幅を増やしたことで、仕事が増えていき収入面でも安定しています。これまで関わってきた人たちとの関係性の中で仕事をしていけば何とかなると思っていました。40代で起業したが、30代で起業したいという思いがあったので、起業するなら早ければ早い方が良いと思います。
Q3. 「よそ者」として、地域を巻き込む際、留意したこと、取組を根付かせることに関して留意したことをお聞きしたいです。
A3. 長く同じ地域に住み続けている人たちの努力や暮らしを尊重し、まず自分は何者であるかをしっかり伝えました。その上で、自分がもつ「何かをおもしろくする技術」、「企画する技術」を生かすために、地域の人に「一緒にやりましょう」「力を貸してください」というスタンスでさまざまな活動に取り組んでいます。

4.アンケート結果概要

事後に実施したアンケートでは、参加者から以下のような感想が寄せられました。

  • よそ者がどのような意識をもって地域の人に関わっているかという視点の重要性が特に印象的だった。
  • 地域資源の活用の方策が印象に残りました。
  • 地域に積極的に出ていき、顔をつなぐことの大切さが印象的でした。
  • 一方的な思いや計画で事業や活動を推進するのではなく地域みんなを巻き込み行っていくことが大切だと学んだ。
  • 定住ではない関係交流人口の存在、その人たちからの発信やつながりの存在が重要だと思った
  • 参加してみて、高校生や大学生などの若い人たちのSDGsに対する関心の高さが印象的だった
  • 一度地元を離れて、日高町に戻ってくると良いところがたくさん見えてきました。今回のセミナーと重なるところがたくさんあり、今後日高町のためにできることを見つけ関わっていけたらと思います。
  • 若いうちに別なまちで暮らしてみることにより自分のまちの良さに気づくことが大切というお話が印象に残った。
  • 地域の課題を見つけるためにまずは顔の見える関係性を築きたい。

5.まとめ

会場参加者から、参加してみて学びを得たこと、気づきの共有を行いました。

終了間際、本セミナーの一番のターゲットであるユース世代(ウェビナー参加の高校生)から、次のような質問が寄せられました。

「現在、高校3年生で地域を活性化させるための活動やボランティア活動などに取り組んできたが、残りの高校生活もわずかとなっている。鈴木さんが思う、高校生のうちにやっておいた方がいいこと、もしくは地域にできること。また、高校生が与える地域への影響について教えていただきたい。」

この質問に対し、講師からは、「まず、こういった場に参加して質問していること、そのことが素晴らしい。これからも地域の活動やボランティア活動に参加して、自分の思ったことやアイデアを周りの人に伝えてほしい。大人がいつも正しい答えを出せるわけではないし、皆さんの世代の方がもっている情報や技術、柔軟なアイデアが地域の課題解決にも役立つと思う。世代や立場を越えて一つのことに取り組む体験は自分を成長させてくれる。また、できるだけ若いうちに外国に行き、暮らす体験をおすすめする。枠の外に出ることで、自分のことや自分の国、地域の良いところや課題が見えてくると思う」とエールが送られました。

 (ESD-J理事 中田 和彦)