【報告】第9回 ESD-J オンラインセミナー「次世代のESDを担うユースのエンパワーメント」

(文責:ESD-J事務局・横田)

  • 日時:2021年12月18日(土)13:00~15:00
  • 参加者:14名(うちESD-J事務局3名、小金澤理事)、ゲストスピーカー5名、コーディネーター1名
  • ゲスト・スピーカー:
    • 冨塚 由希乃さん(みなとく株式会社、日本サステイナブル・レストラン協会)
    • 串田 大亮さん(飲料メーカー・CSV担当)
    • 原 智美さん(国立国会図書館)
    • 和田 恵さん(慶應義塾大学SFC研究所・上席所員、SDGs-SWY・共同代表、NPO法人新宿環境活動ネット・理事)
    • 加藤 超大さん(公益社団法人日本環境教育フォーラム・事務局長)
  • コーディネーター:
    • 飯田 貴也さん (NPO法人新宿環境活動ネット・代表理事)

ESDや環境教育を推進しているソーシャルセクターは多様化・成熟化してきている一方、世代交代や事業継承が課題となっています。そのため、今後益々ESD/SDGsを推進する「ユース」の存在が重要となってきます。

今回のオンラインセミナーは、高校・大学時代にESDや環境教育に関するソーシャルセクターにインターンシップ等の形で携わった後、企業や行政、NPOなど多方面で活躍しているユースの皆様をコーディネーター、ゲストスピーカーにお招きし、次世代のESDを担うユースのエンパワーメント(今後のユースの支援、育成、ポテンシャルの活かし方など)に向けたざっくばらんな意見交換を行いました。

<コーディネーター兼、進行の飯田 貴也さん>

「第2期ESD国内実施計画」における5つの優先行動分野の1つとして、「ユースのエンパワーメントと参加の奨励」が強調されています。ユースが特に重要なステイクホルダーとして扱われています。ただ、イベントや講演会等で、「ユース」の意見を聞きたい「ユース」を代表して、などと「ユース」の立場としての声が求められる機会が多いことに象徴されるように、ユースに内包される多様性が埋もれてしまう捉えられ方には、モヤモヤとした思いがあります。そのため、今回はユースと言っても様々な立場、キャリア、考えの方がいることをそれぞれのゲストスピーカーのお話から受け取っていただけたらと思います。

<ゲストスピーカーのお話>

  1. 冨塚 由希乃さん(みなとく株式会社、日本サステイナブル・レストラン協会)

「もったいない」に問題意識を持ったことをきっかけに、学生時代にフードロス削減に取り組む企業でのインターン、JEEFでのインターン等を経験しました。ユースの活動としては、カンボジアで子どもたちと触れあったり、途上国の抱える日本とは異なる課題に向き合ったりしました。また、CSOラーニング制度を活用したJEEFのインターンでは、子どもたち向けの学習体験プログラムの作成等に携わり、世界の遊びを知ってもらうというイベントの企画を行いました。子どもたちに遊びを通して楽しく学びを得てもらうという点がこれまで抱いていた環境教育のイメージとは異なり、とても新鮮でした。更にインドネシアでの環境研修を通じて、日本では当たり前のゴミ回収システム・制度が海外では未整備であることやゴミ山を目の当たりにし、社会課題について経験を通じて学びました。

これらの経験を活かして、現在は食品ロス削減ボックス*を運営する企業で働いています。また、本業外では、廃棄される予定の花を活用する活動も行っています。

*販売期限は切れているけれど、賞味期限が切れていない食品を回収して、安価で販売する仕組み。

<ユースとして思うこと、ユースのエンパワーメントについて>

年上の人が多い場で、発言に自信が持てないことが悩みでしたが、会話の引き出しをたくさん持っておくと、会話の中で共通点が見つかるので、そのような解決方法を見い出しました。つながりを活用して、多くのチャンスをどのように活かせるかは自分次第なので、学生時代に様々な経験を積むことが重要だと思います。

  1. 串田 大亮さん(飲料メーカー CSV担当)

環境問題への危機意識を小学生の頃に持ち始め、環境問題の解決の方法として、学生を対象にした環境教育、学生対象の啓発を行いたいと思い、大学では環境情報学部に所属しました。NPO法人エコリーグに所属、その後CSOラーニング制度を活用したJEEFでのインターンを通じて、学生の環境活動を活性化させるイベント作りや、自治体と連携した小中学生向けの環境講座等を実施しました。

その後、清涼飲料メーカーに入社、2020年からは希望していたCSV推進部に異動し、業務に励んでいます。希望部署への異動を目指して、週末はJEEFの活動に携わったり、海外の環境関係の研修に参加したりもしてきました。企業でのESD/SDGsの推進は、事業利益の拡大という目標を達成することに繋がらなければ実施できないので、NPO等と比較するとそういった点での制約があり難しいところですが、企業の立場でこそできることに尽力していきます。

<ユースとして思うこと、ユースのエンパワーメントについて>

社会人の皆様とのハイレベルな議論について行けず、自信を失うこともありましたが、社会人の皆様とつながり、知識や経験の共有をしていただくことで、考え方や論理的な思考を学ぶことができました。学生時代の活動で現在の仕事に特に活きているものとしては、ユースイベントの企画、環境に関する専門知識、機関誌への文書作成スキルなどがあります。また、学生時代に築いたネットワークが社会人になっても活きています。

  1. 原 智美さん(国立国会図書館)

大学では法学部、大学院では公共政策学教育部に所属し、学生時代にCSOラーニング制度を活用し、ESD-Jにて2017年度にインターンを行いました。ESD-Jにて、ESDに関する情報発信、ワークショップESDカフェ Tokyoの開催、グリーンチャレンジデーというイベントへの出展、インタビュー記事「ESDトーク」の執筆等を行いました。ESD-Jでのインターン後は、ユースとして、五井平和財団主催のESD日本ユース・コンファレンスに参加者、サポートメンバーとして参画したり、ローカルSDGsユース・ダイアログというイベントに参加したりしてESD/SDGsに関する活動を継続しています。  

<ユースとして思うこと、ユースのエンパワーメントについて>

 私は、ESD-Jにてインターンしたことで、ESDの現場に飛び込んで実際に活動することができ、とても良かったです。また、とにかく褒めてもらえて自信に繋がりました。「学生」という自由に動ける立場であることを活かして、たくさんの方から色々なことを教えていただくことができました。また、社会人になってからの職場以外の「居場所」として、ライフワークとしてユースの活動があり、そのような場の重要性を感じています。ユースの活動でESDをキーワードに様々なつながりが生まれたことで、就職してもなおESDの活動に参加することができています。

就活の際に悩んだこととしては、「ESDを仕事にする」ことが難しい、ロールモデルを探しづらい分野ということや、組織で働いていると異動がつきものであるのでモチベーションの維持というのも大変だと感じています。 

 未来に向けては、これまでのユースにまつわる活動の取り組みの「良い面」を見える化することが重要だと思っています。例えば、小学生の時には、特別活動という授業がとても好きだったのですが、それを省庁関係者に伝えた際に驚かれたことがあり、教育を良くしようとして導入した取り組みが若者の中で花開いている事例もあるので、それを可視化できたら良いと思います。最後に、国内実施計画に図書館というワードが入っていないので、ESD推進、学びの場としての図書館の存在意義をアピールしていけたらと思いました。

  1. 和田 恵さん(慶應義塾大学SFC研究所 上席所員、SDGs-SWY 共同代表、NPO法人新宿環境活動ネット 理事)

環境問題に関心が高まったきっかけは、学生時代にアラブ圏に行き、イスラエルの死海の水の減少という問題を知り、資源の有限性を感じたことです。内閣府世界青年の船事業にて11カ国200人の若者と船上で共同生活したり、SDGsを研究する蟹江研究会に所属しキャンパス内でSDGsの啓発キャンペーンを行ったりしました。4年間エコギャラリー新宿でアルバイトとして環境活動に従事し、SDGs推進のローカルな視点を養いました。その後、ユースとして国連ハイレベル政治フォーラム、日中韓環境大臣会合等に参加、ユース団体SDGs-SWYを立ち上げました。現在は、シンクタンクで研究員として働いており、日本経済の分析を担当しつつ、環境関連の分析チームを立ち上げ、SDGs部署も兼任しています。

<ユースとして思うこと、ユースのエンパワーメントについて>

昭和から令和への変遷で価値観が大きく転換してきているのではないでしょうか。たばこを例にとると、家でもオフィスでも当たり前に吸っていたのが、禁止の流れが生まれて、今は吸わないのが当たり前になっています。環境の場合でも、昭和では環境対策は経済成長を止めると思われていましたが、環境対策が促進され、今後は環境と経済の両立は当たり前になるのではないでしょうか。コロナ禍でのユースの役割を分析した結果、若者は固定観念にとらわれずに良いものを良いといえる力があり、またテクノロジーを使える、他世代と交流がしやすいという特徴があります。今、政策決定者は昭和の価値観を持っている人が多いので、新しい価値観、スキルを持った若い世代が社会の潮流を変えていく必要があるのではないでしょうか。

<ユースとして思うこと、ユースのエンパワーメントについて>

 課題としては、ユース自身がユースである強みが分からないことや無いもの(例:お金、経験、場所、ネットワーク、活動時間等)が多いです。また、就職のタイミングが活動の卒業になってしまいがちな点も課題です。SDGs人材はまだ少ないので活動に関わる使命感、そして家庭、職場以外に「居場所」があるということで視野が広がるという点から、就職をしてもユースの活動に参画し続けていますが、ユースの活動を支えるコーディネート人材が不足しているように感じています。

  1. 加藤 超大さん(公益社団法人日本環境教育フォーラム 事務局長)

 ※時間の都合上、短時間で割愛していただいた発表となりました。

経済成長まっただ中の中国上海に高校3年間留学した際に、環境破壊と経済発展のバランスについて考えたことがきっかけとなり、大学では環境教育/ESDを専攻しました。大学卒業後は環境教育の職種で青年海外協力隊としてヨルダンに赴任しました。帰国後に日本環境教育フォーラム(JEEF)に就職し、バングラデシュ、インドネシア、カンボジアの事業を担当して環境教育支援を行い、2019年11月からは事務局長として活動しています。

<ユースとして思うこと、ユースのエンパワーメントについて>

 ユースの支援は15年ほど前から重要であるといわれており、様々な取り組みが行われてきましたが、第2期の国内実施計画でもユースのエンパワーメントが依然、重点課題として掲げられています。これまでのユースの支援の成果を可視化し、また、ユース支援が広がっていない原因については明らかにするべきであると考えています。また、ユースが必要としている支援については、今一度把握しなおす必要性を感じています。また、環境教育・ESD業界の世代継承、後継世代の育成が今後の大きな課題であると考えています。ESD業界のユースの支援をどうしていくのかという点を是非、参加者の皆様と議論できればと思います。

  私がESD/SDGsの業界に関わり続けている理由としては、「人」です。持続可能な社会づくりに生涯をかけて取り組んでいる人が多いため、その背中を追いかけたいという思いがあります。

■グループディスカッション

その後、4班に分かれてゲストスピーカーの発表についての感想を述べ、ユース支援に関する意見交換を行いました。

最後にゲストスピーカーより、グループディスカッションの結果、ESDを盛り上げていくためにユースのエンパワーメントに向けてのコメントをいただきました。

・特に大企業はCSR(企業の社会的責任)からCSV(共通価値の創造)にシフトをしてきています。そのため、企業においても果たせる役割は大きく、そこでできることを考えていくことも重要だと思います。

・ユースだけで集まるのではなく、世代を超え、様々なセクターの方と定期的に意見交換する場が重要であり、その中からコラボレーションが生まれてくるのではないでしょうか。そのような場があれば支援がしやすくなると思います。

・若い世代は力(発信力、行動力など)があるので、その力を育てていくことが重要であり、年齢が上がっていっても活動を卒業するのではなく、関わり続けられるコミュニティ作り、人材作りが必要だと思います。環境課題は、業種、年齢関わらず一丸となって取り組んでいく必要があるので、自分のいるセクターで引き続き取り組んでいきます。

・SDGsやESDのセミナーやワークショップに参加しても、メッセージが響く人と響かない人がいますが、その違いはなぜ生まれるのだろうという話をしました。本日のゲストスピーカーは皆、問題意識を持つ原体験・きっかけがあったので、それが主な理由ではないかという意見が出ました。また、世間ではSDGsウォッシュが問題となっていますが、例え表層的な取り組みからのスタートでも、組織がSDGsに取り組むきっかけを持つと言うことがまずは大切だと思いました。

・上述の通り、社会人とユースをつなぐコーディネーターの不足が課題で、ユースは社会人になると関わらなくなってしまう人が多いです。そのためそれを解決するにはユース予備軍の学生をどのように育てるのか、卒業後にどのように継続的に関わってもらうか、離れてしまったユースをどのように呼び戻すのかの3点が重要ではないかという意見が出ました。

・ユースの巻き込みの本気度を上げる必要があり、制度化する、KPIを作るなどの方策を行ってはどうかと思いました。

・今はユースというステイクホルダーが特別に扱われていますが、当たり前の1ステイクホルダーとして扱われるようになることがゴールではないでしょうか。

■小金澤理事より総括コメント:

今回お話しいただいたゲストスピーカーの皆様の例のように、海外体験、イベントの企画・運営、社会人と交われる場、ネットワークの構築などの様々な機会をユースに提供することが、SDGs・ESDに取り組む重要性について気づきとなるので、そのような場の創出が必要であると改めて認識しました。また、SDGs・ESDとの接点をどのような職種でも自分の職場で探すこと、モチベーション保つためにも職場以外にSDGs・ESDに取り組む人たちと交流できる「居場所」を持つことも大切と言うことを学びました。今回のように世代を超えて学び合い、価値観をぶつけ合う場を持つことも今後必要だと思いました。

この度ご登壇いただきました皆様、どうもありがとうございました!

<アンケート結果>(回答者11名)

◆主な感想・意見は以下の通りです

  • 悩みは30数年前と変わらない、ユースとの親近感がわき、一緒に課題に取り組みたい気持ちがわきました。
  • エビデンス等をもとにして現場を飾ることなく明確にコメントをされるご様子にゲストの日常活動や生き方までも見せていただけたように感じ、今後、ますます、地域の担い手リーダーとしてご活躍されることを期待しています。
  • それぞれのゲストスピーカーがとても濃いインターン、ユースの活動の経験を積まれていて、インターンの経験が現在のキャリアにどのように活きているかがよく分かった。
  • ユース世代の育成・次世代につなぐ、と言葉は出せるが、ユース一人ひとりの背景や立場をもとにした、具体的な支援ができていないことを再認識した。それぞれにはESD的な価値に気づいた、活動のきっかけになったレバレッジポイントが今日のモチベ―ションにつながっているとの認識の紹介は大変興味深かった。
  • 実践体験がリアルに伝わりました。パーソナリティあふれるユース活動に直面する課題やその感情なども共感できます。

◆グループディスカッションの感想

  • 環境テーマについて、世代を超えたインタラクションの機会は貴重で有益です。
  • 少人数でかつ世代を越えたディスカッションは新鮮で、新たな気づきもありました。ぜひまたこのような会を希望します。

今回のテーマに関するご意見、ご感想、オンラインセミナーの運営を改善するためのご提案など

  • 今回のように、大まかでも、参加者属性等、お知らせいただくのはよかった。事前にわかっていれば、参加者同士間で、質問ができたり、また、小ブループに分かれた時などに本音を出し合えるような仕掛けができますね。
  • 今回のテーマは非常に興味深いテーマです。進行も自然体でよかったと思います。今後もう一段階進めてユースがもっと本音を話せる場になり、それをいろいろな世代も聞けるようになるとよいと思いました。
  • インターンを受け入れることは、担い手を作るきっかけとなることということを気づかせてくれる機会でした。
  • 若い世代のニーズを理解するには直接コミュニケーションするのが一番なので、世代を超えてざっくばらんに意見交換できるような場の創出が必要だと思った。
  • 学生から社会人になっても環境問題や持続可能な教育に取り組むのは、まだまだ特別な人に限られているなとあらためて感じました。企業の本業が持続可能な社会づくりに貢献できるように加速し、多くのひとが関われるようにすることが学びの継続・発展になると強く感じました。とはいえ、まだハードルは高いです。社外活動と企業を行き来し、緩い関係から入れるよう、社内のサークル活動がハブの役割を担うことができるかもしれないなとも思いました。