令和3年度ローカルSDGs人材育成地方セミナー
【宮城県大崎市】「次世代の眼から見る大崎耕土SDGsアクション」報告

日   時: 2021年12月4日(土)13:00~15:00
会   場: 宮城県大崎市岩出山『凛菜・上の家』
参加者: 参加者総数 72名
(内訳)一般参加者数合計 68名(会場参加者13、オンライン参加者55)
司会1名、講師2名、関係案内人1名
講   師: 郷古 雅春さん(宮城大学 事業構想学群 事業構想学研究科教授)
  早坂 正年さん(ブルーファーム株式会社代表取締役)
関係案内人: 高橋 直樹さん(大崎市世界農業遺産推進課長)
司   会: 小金澤 孝昭さん(アクションプラン推進委員会委員長、特定非営利活動法人持続可能な開発のための教育推進会議理事)
司会 小金澤 孝昭さん

司会 小金澤 孝昭さん

講師 郷古 雅春さん

講師 郷古 雅春さん

講師 早坂 正年さん

講師 早坂 正年さん

関係案内人 高橋 直樹さん

関係案内人 高橋 直樹さん

会場の外観

会場の外観

明治21年に建てられた茅葺き屋根に土塀づくりの農家住宅です。以前農家レストランを行っていた旧千葉家住宅で、この地域の伝統的な農家建築です。趣のある外観、広々としたお座敷で、窓の外に広がる田園風景を眺めながら、会合を持ったり、交流の場として使われています。

1.概要

開会に際し、会場(古民家『凛菜・上の家』)の紹介の後、関係案内人、講師の紹介、本日の趣旨説明を行いました。その際、本セミナーは、世界農業遺産を活用した持続可能な地域づくり・大崎耕土のSDGsの実践に関する、関係案内人や講師のお話を聞いて、継承する次世代が自分事としてそれらをどう捉えるかについて考える場の提供を目指していることが強調されました。

関係案内人から大崎耕土の地域づくりの到達点が報告され、次に2人の講師から、世界農業遺産を活用した地域づくりの現代的意義と価値について、また、地域づくりを実践する立場から、ものの持つ物語と人のつながりのデザインについての提案がありました。会場に参加した20代、30代の多様な立場で地域づくりに関わっている方々、ウェビナー参加者からは、関係案内人、講師からの報告についてのコメントや質問が出されました。

2.関係案内人・講師の報告内容

①関係案内人:高橋 直樹さん

大崎地域づくりのアクションプランについて3つの柱を説明しました。1つ目として世界農業遺産「大崎耕土」の認証された内容、継承する価値がわかるように見える化し、体感・体験できる場を「フイールド・ミュージアム」として整備しました。特にSDGsを学ぶ教育旅行や企業の研修フイールドとして活用されはじめています。2つ目として、大崎耕土の持続可能な農業が産出する農畜産物・加工品を認証によりブランド化し、地域循環共生圏づくりを経済的に支える仕組みづくりを行っています。3つ目として、小・中学校・高校をつないで持続可能な地域・SDGsを支える人材の学びの場を副読本の作成や出前授業によって進め、農業者、市民・消費者、交流・関係人口の学びの場を公民館行事や研修会、オンライン会議などで広げています。

②講師:郷古 雅春さん

大崎耕土の地域循環共生圏を目指した地域づくりとして、改めて世界農業遺産の意味と価値を強調しました。世界農業遺産認証で評価された治水、生物多様性、地域コミュニティの活性化や農業・農村の多面的機能を維持する地域の機能を「グリーンインフラ」として捉え、それを維持し、継承する重要性を地域の事例やJICAの経験に基づく海外の事例も踏まえて、分かりやすく説明しました。最近の実践例に関連し、農村・農業後継者の減少の中での用水管理システムの開発や田んぼダムによる防災技術の開発が提案されました。

③講師:早坂 正年さん

大崎耕土の地域づくりを実践する次世代層としてお話しいただきました。地域づくりを、ものづくりのデザイン力や人のつながりのデザイン力によって進める実践内容が報告されました。

  • 地域資源を販売する取引きに、体験を付加して商品化する取り組み。
  • 野菜の生産・収穫自体を、農産物販売の取り組みに組み込む「取り引き」から「取り組み」への進展
  • 食材を食文化として、食生活やライフスタイルが見えるように物語化する取り組み

後継者の減少する農村で、非農家の若い人たちが農業に参加できる仕組みづくり、地域コミュニティを調整する取り組みの重要性が強調されました。

3.会場・ウェビナー参加者のコメント・質疑

(1)会場参加者からのコメント・質問

  • 地域の資源やコトを映像化して発信する取り組みを行っています。関係案内人が強調したフイールド・ミュージアムが重要と考えています。
  • 地域で育って地域の資源を守ることが喜ばしく、また、蕪栗沼に渡り鳥が来る地域環境が素晴らしいです。
  • 大崎耕土の森林資源を守る価値とグリーンインフラの意味を考えました。
  • 地域資源を交流の支えの中で守っています。
  • 海の資源と農業を結びつける取り組みをしています。わかめは地力によく、多様な資源のつながりがあります。
  • 楽しく生活できる地域づくりを自分事にすると楽しいです。
  • 地域を調べたり実践したりしてきた中で、講師の話や参加者の発言にもあった地域の人々同士の結びつきがキーワードになっていると思いました。
Q1. 農業の担い手が減っている中で水の管理、水路の清掃などの作業をどのように地域で継続していったら良いでしょうか?
A1. 非農家の割合が増えることで、地域の共同作業への参加者が減っているが、作業をやりやすくするためにルールを変更する、非農家が参加しやすくなる仕組みをつくっている地域があります。例えば、水路に農業以外の使用目的を持たせること(遊べる「親水水路」にする)で、農業をしていない人も含めて皆で守っていくという認識を醸成する等です。
地域のことをよく知る参加者だったので、質問よりも関係案内人や講師の話へのコメントがたくさん出されました。これらのコメントは、地域の課題を自分事にしているものであり、尚且つ皆のコメントや意見がとてもよく関連しあっていました。

(2)ウェビナー参加者からのコメント・質問

Q1. SDGsを意識した取組において、地域内外の多様な人・組織との連携をどのように進めていらっしゃいますか。その際に気をつけていることなどありましたら教えてください。
A1. 

  • 農村の生活、里山の景観、自然環境、産業を維持していくこと、地域の活性化に繋がる取り組みがおのずとSDGsの達成に貢献していくと考えています。それには、人と人をどう結びつけるかが鍵で、物の価値よりも人の価値の方が大きいため、その地域に会いたくなる人がいるということが、美味しい物を創る以上の価値があると思っています。人の価値に注目してブランディングしていくことが大切ではないでしょうか。
  • 異なる取り組みを行っている組織・人々が世界農業遺産地域の資源が大切というような共通認識を持つことが重要で、共通の価値の中で1企業の取り組みを他の企業と共有することで広がりが生まれたという事例が出てきています。
Q2. 地域問題を考えるにあたって大切にしている想い・考え方をお聞きしたいです。
A2. 

  • 信頼関係を築くことを大切にしています。
  • 自分の子どもに継承したいという思いで地域の活動に取り組んでいます。
  • 地域における自らの役割を意識して活動しています。
  • 暮らしに寄り添った問題解決の提案、取り組みを行うことが大切です。そのために「守るために活かす」というスローガンを掲げています。
  • 地域に根ざすこと、地元に住み続けること、地域に来てもらうこと、継承していくことをベースに考えています。
  • 楽しく生活できる地域づくりを心がけています。
  • 課題を自分事にして考えること、当事者意識を大切にしています。
Q3. 大崎地域で世界農業遺産を伝える副読本が紹介されましたが、副読本の活用以外に学校で実施されている活動はありますか。課外活動なども行われていますか。そのためには学校以外の市民団体の方が関わることもありますか。
A3. 学校に市民団体等が呼ばれて世界農業遺産に関する授業を行うことが多々あったが、単発の取り組みになりがちなので、学校教育の中にきちんと取り入れるために世界農業遺産を伝える副読本を作成しました。現在、複数の市民団体が学校教育に携わっています。また、課外活動としては、198人の子どもたちが所属する「生きものクラブ」という活動があり、学校教育を補完する役割を担っています。
コメントする参加者の様子

コメントする参加者

 
コメントする参加者の様子

コメントする参加者

 
コメントする参加者の様子

コメントする参加者

 

4.アンケート結果概要

 事後に実施したアンケートでは、参加者から以下のような感想が寄せられました。

  • 大崎耕土を将来的に保全していくために、まずは認知を、特に小中学生への認知を広めるべきで、小中学生への農業体験型学習の必修化は、将来の後継者を増やすことにもつながる。
  • 若い方が積極的に関わり、地域の魅力を発信し、発展につなげていこうとする姿に多くを学ばせていただきました。大崎地区とのつながりを見出しつつ、教育を通して首都圏との連携を進めることができればと考えました。
  • 地元視線では気付きにくい事も、第三者視点では利益になる事があると気付きました。
  • 地域に埋もれている様々な資源の発掘、あるいは拾い出しの重要性、食材というものに着目するだけではなく食文化や人との繋がりが資源であるという発想の重要性を痛感した。
  • 新たな価値を生み出すためには、人と人のマリアージュ(連携)、もの同士のマリアージュ、考え方・ものの見方のマリアージュと行った異なるものの組み合わせが大切であることを学んだ。
  • 大変内容の濃い、充実したセミナーでした。地域の独自性を感じながらも自分の地域に生かせるヒントがたくさんありました。
  • SDGsで言う「普遍性」のある実践がここ大崎で展開されていることから、地方にはまだまだいろんな可能性があり、やれることがあると気づきました。

5.まとめ

講師の方々からは、グリーンインフラという考え方、人と人とのつながり、足し算ではなくて掛け算を含めたつながりを創ることにより、後継者を育てていくことが重要との指摘がなされました。また、若い人たちの意見をたくさん聞かせていただきました。積極的に自分の立場から考え、自分事にしていくといった前向きな意見を述べていただきました。このセミナーで狙いとしていた、地域づくりを次世代の人たちが自分ごとにして、SDGsを考えていくという場づくりが達成できたと考えます。

 

(ESD-J理事 小金澤 孝昭)