【報告】第8回 ESD-Jオンラインセミナー「ESD×森林×地域づくり」

文責:ESD-J事務局横田

◆日時:2021年11月27日(土)13:00~15:00
◆ 参加者:16名(うちESD-J事務局3名)

◆講師:石坂 真悟 さん(NPO法人多摩源流こすげ(源流大学))

◆ファシリテーター:鳥屋尾 健さん(公益財団法人キープ協会 環境教育事業部事業部長、ESD-J理事)

石坂 真悟 さん(NPO法人多摩源流こすげ(源流大学))を講師にお迎えし、山梨県小菅(こすげ)村の豊かな自然資源、環境を活かした地域づくりについてお話を伺いました。

◆講師の発表資料はこちらからダウンロードが可能です。

山梨県小菅村は、多摩川源流部にあたる95%が森林の人口700人ほどの村です。村内の主要な観光施設は、フォレストアドベンチャーというアスレチック施設、温泉、道の駅の3つで、その経営を一本化して連携することで売り上げ・サービスの向上を図っています。また、山間部で居住地を確保するのが難しい現状を踏まえ、単身世帯用の最小限のスペースからなるタイニーハウスを建設、そのデザインは毎年コンペで募集し、この地域の名物の一つになっています。地域おこし協力隊や役場若手職員の方々にタイニーハウスを提供しています。地域の資源を活かすジビエ加工施設の建設、デジタルファブリケーション(デジタルデータを基に創造物を制作する技術)を取り入れた家具や木工品等の製作も行っています。

◆村づくりの取り組み

高齢化率は45%を超えていますが、積極的に小菅村への移住を推進しており、人口を維持しています。教育目的の親子留学を支援しており、2014年からは移住者が急増、4年間で70名以上(人口の1割)が移住しました。地域おこし協力隊も積極的に受け入れてきました(2011年から累計28名の受け入れ、7名が定住、約10名が現役)。小菅村の景観を守るために源流景観計画というものを作成し、畑の中にブルーシートがあると目立つので、「景観シート」という茶色のシートを利用したり、ガードレールをペインティングしたりしています。古民家ホテル、コテージの経営など訪問者、関係人口を増やすための取り組みを行っています。更に山間部という課題に取り組むためにドローン配送の実証実験という新しい試みも始まっています。

◆NPOこすげ・源流大学の活動(2009年~)

• 源流X体験:多摩川流域の地域とは定期的に交流しており、源流体験への子どもたちの受け入れを行っています。また大学生の受け入れ、学生インターンの受け入れも行っています。(農林業、役場の行政・福祉、商品開発・サービスなど学生のニーズに沿った分野のプログラムを提供しています)
• 源流X人材育成:源流大学の取り組み(法人格がないので現在はプロジェクトとして、NPOこすげの活動の一つという位置づけで「知識だけでなく、生きた知恵を次世代へ」というスローガンの下に活動している)あらゆる年代を対象とした取り組みー保小中高大学生、一般を対象としたプログラムの開発と実践をしています。
これまでは、村の住民や訪問する大学生を対象とした活動を実施してきました。例)保育所に自然遊びの場の提供、小中学校の子どもの居場所作り、自然の中で活動する場としてサマー/ウインタースクール事業を実施。今後は一般を対象としたオープンなプログラムを充実させていきたいです。講師は村の方々のみならず、村外の方々もお招きして小菅の魅力を再発見できるような講座を設計しています。

水源の森再生プロジェクト:荒廃人工林の再生、枝打ち、間伐、土中環境の改善、斜面に段差を作り、保水力のある森にして行く活動、竹林の整備、竹の活用(炭にして土壌へ)を行っています。

• 源流X研究:多摩川源流の調査・研究として、地域の宝(郷土資料)を維持、保管していく活動を行っています。
• その他の取り組み:企業との連携で道の駅で販売するための村のお土産作り、地域の雇用創出 を行っています。(例)小菅タオルの製造、ランサーズ(クラウドワークの導入)との連携 等

※源流域での体験学習を行うことで、地域の住民、学生、上下流域に暮らす人たちが交流し、互いにないものを補うつながり、源流資源の活用を意識できる人材の育成、コミュニティ作りを目指しています。今まで行ってきた「体験」を線でつなぎ、「学び」を生み出すこと、様々な人たちが交流することで作られたものを文化として生きた知恵を後世に残していきます。今後は、日本全国にある源流、河川にこのような活動を広めていきたいと思っています。

グループトーク①

石坂さんのお話を聞いての感想、質問などを少人数で話しました。 (A.は石坂さんの回答)
Q. 村の外の方、海外の方など、様々な人脈/つながりがありますが、どのように生まれたのでしょうか
A. 村にはよそ者を排除しないという文化があります。以前、トンネルができる前は小菅村や行き止まりの村でした。村を目的地としないと人が来ない場所でした。そのため、訪ねてきてくれた人をおもてなしするということが大切にされてきました。また、新しいことにも積極的にチャレンジしていこうというマインドが育ってきたという風土があります。
Q. 多摩川の流域の市町村との交流、連携はあるのでしょうか
A. 昔から市民活動が盛んで、流域の連携は活発に行っています。流域協議会というものがありますし、市民団体としては、多摩川流域懇談会に参加しています。狛江市とは連携協定を持っています。お互いのお祭りに参加しあったりなどの交流があります。
Q. 小菅は、源流であるという素晴らしい資源、資本を持っているがそれを持たない地域はどうしたら良いのかという疑問が湧きました。

グループトーク②

森林、地域という場の可能性を意識しつつ、多摩川源流大学の感想、質問などを少人数で話しました。(A.は石坂さんの回答)
Q. 移住者の方々の仕事、勤め先について
A. フォレストアドベンチャー、温泉施設、レストラン、ホテル、キャンプ場など観光関係が多い
Q. NPOのスタッフが少ないのに活動が多く、多岐にわたっているので、地域の方たちもそれをサポートし、具体的な活動に関わっていらっしゃることが推測される。地元の方たちとうまく連携する秘訣は?
A. 積極的な情報共有、協力していただきながら一緒に仕事に取り組むなど
Q. どうやって企業との連携ができたのか?
A. 企業との連携の分野に強い人が居た、企業側のメリットが明確に提示できたこと

各地の源流を守る地域がこのように環境、水資源、コミュニティを守っていく活動ができたら素晴らしい。源流大学の活動を他の地域にも広げていけたら良いというご意見から数名から出ました。(源流の里協議会に入っている地域では今後の活動の展開が期待される)

<アンケート集計結果>(回答者12名)

講師のお話はいかがでしたか

◆グループディスカッションはいかがでしたか

主な感想・意見は以下の通りです
• 地域を活性化しようとの心意気が盛沢山のメニュー表れ、非常に勉強になりました。
• 具体的にはタイニーハウスや川を利用したアドベンチャーサポート、キャンプ、林業体験、ジビエなどをテーマに流域大学を始めたいと思いました。
• 少ないスタッフで、さまざまな取り組みをしていることに凄さを感じました。
• 地域活性化のための取り組みのお話が分かりやすく、実際に現地へ行ってみたいと思いました。
• 積極的な行動力が素晴らしいと思う。首都圏が近いメリットを活かした仕掛けは参考にしたい。
• 源流を守るという地域の大切な役割があるので、何が何でも地域を持続させるという強い想い、共通のビジョンが同地域にはあるように思う。それがモチベーションとなって、新しい取り組みを積極的に行っている点が素晴らしいと思った。
• 行き止まりにある地域で、そこを訪れる人たちを歓迎する文化、変化を恐れないという土壌があると伺い、そのような考え方、風土がこの地域を魅力的に見せている理由であると思った。

今回のテーマに関するご意見、ご感想、オンラインセミナーの運営を改善するためのご提案など
• 今回は参加人数が少なかったこともあり、アットホームな雰囲気の中、気軽に話しができました。それぞれのグループに事務局のファシリテーターが付いたのも良かった。
• 源流を基点とした地域づくり、そして流域をも巻き込んだ社会づくりに、大きな可能性を感じました。全国の源流にネットワークを広げていきたいですね。
• 首都圏の源流(命の水)を守る「小菅村」。まさにサーキュラーエコノミーの実現に近いミニマルな生活圏の大きなファクトでした!!勉強になりました。
• 多摩川がこの分野の先駆的な開発状況と見受けられ、これが全国展開すれば、素敵だなーとの印象を受けました。

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