【報告】第11回ESDカフェTokyo 『 身土不二』
身体を通して地域を学び、 地域の安心食材を食べて、元気に育て!

集合写真

第11回ESD-JカフェTokyo「身土不二」実施報告

報告:後藤奈穂美

第11回目のESD-JカフェTokyoは、「身土不二」と題し、鈴木大輔さんと鮫田晋さんのお二人を講師に迎えて10月31日にオンラインで開催いたしました。参加者数は合計で28名でした。(講師2名除く)

■身体を通じて地域を学び、地域の安心食材を食べて、元気に育て!

講師:社会福祉法人にじのいえ 理事長 鈴木 大輔

NHKの体操指導員として、全国を飛び回っている鈴木大輔さんは、体操を通じて健康な身体作りを推進しながら、いくつもの草鞋(わらじ)を履いています。

第二の草鞋は、埼玉県坂戸市の社会福祉法人にじのいえ・むぎのこ保育園の理事長です。北坂戸駅を中心にした半径500メートルの地域圏内で「地域社会にたくさんの幸せを作りたい」という理念のもと、福祉施設と保育園を運営しています。保育園のこども達に提供する食事は、手作りにこだわり、なるべく地元の野菜を使い、その野菜作りを保育園の活動の中に取り込むようにしています。畑での農作業自体が運動になることもありますが、自分で作った野菜を食べるという経験が幼少期における成功体験と達成感に繋がるからだそうです。

第三の草鞋は、研究者です。現在、弘前大学大学院に在籍しています。今回のセミナーでは、長寿県データの比較を事例として紹介いただきました。分析の結果、長寿の3要素は、「運動」「栄養」「社会参加」で、雪深いなど外的環境による影響はやむを得ないものの、人が孤立しない状況を作ることが重要で、政府も支援策を講じていると紹介していました。

鈴木さんは、地元で「障害児×高齢者」「障害児×大学生」といった様々な自然体験や農業体験を通じたコラボ企画を展開して、“当たり前”の地域社会を創る努力を続けています。

鈴木プレゼンテーション

■有機給食と自然と共生する里づくり■

講師:千葉県いすみ市農政課 鮫田 晋

いすみ市は、千葉県の房総半島の真ん中辺りに位置する人口3.7万人の町です。この小さな町は、豊かな自然に恵まれた環境でありながら、農家の高齢化によって耕作放棄地が増え、移住者の受け入れを推進しています。今回講師としてお話し頂いた鮫田さんもいすみ市へ移住してきたひとりです。

今からおよそ10年前に策定された「生物多様性国家戦略」を受けて、各地でローカル生物多様性戦略が作られた頃、いすみ市では、多様な関係者と協議会を設立して、「自然と共生する里づくり」に向けた取り組みが始まりました。中でも市長が兵庫県豊岡市のコウノトリを育む水田の取り組みに共感し、2013年に試みるも、単なる無農薬の水田耕作は無残な結果となってしまいました。そこで、2014年から3年間、有機農法の専門家の指導を受けた結果、市の試みに協力した農家の中から、次々と成功する者が出てきました。皆で話し合った結果、この安心安全なお米は、町の未来を担う子供たちにこそ食べてもらいたいという想いで一致しました。ところが、学校給食に有機米を使うには給食費169円の値上げが必要でした。2018年から学校給食全量有機米を実現することができた背景には、実は、差分を市が財政負担するという英断がありました。

同時に、地元の市民団体と連携して、「環境」「農業」「食」を一体的に扱う教育プログラムを開発し、総合学習の時間に、田んぼの体験活動を組み込みました。すると、給食の食べ残し量が減少しました。こうしたいすみ市の給食全量有機米の取り組みは、様々な表彰を受賞し、注目されるようになったことで、差額の補填をはるかに上回る宣伝効果が得られているということです。最後にウエンデル・ベリーの「食べることはひとつの農業行為である」という言葉で締めくくりました。

鮫田プレゼンテーション

ワークショップは、オーガニック食品の先進国であるフランスの事例を取り上げ、日本もフランスのようになりたいか?どうしたら実現できるか?について、グループで意見を出し合った後、全体で共有をしました。

<Zoom投票結果>

1.フランスのように有機の導入をしたいですか

はい 89%、 いいえ11%

2.フランスのように有機の導入ができると思いますか

はい 61%、 いいえ39%

<ワークショップのグループ毎の意見の要旨>

1.日本が仏のように有機の導入が難しいのは何故だと思いますか?

 A:価格の問題ー有機は高額。有機、無農薬、低農薬などの定義が分かりづらい。有機の導入へのハードル(農法、技術、一元的に導入しづらい、地域ごとの特性にあった方法、病害虫への対策などの技術支援)、有機農法導入のメリットが一般的に知られていない(野菜の力、天敵を殺さないと害虫も増えづらいなど)、農家の自己努力に頼っている、公的な支援が乏しい。

B:給食の調達は、地元の八百屋から入手するが、その食材が地元から調達したかどうか特定できない。納入業者が決まっていて、国産食材を指定している。有機食品は、価格が高くて、欲しくても買えない状況がある。

C:トップダウンの実施に対しての理解、協力を得ることの実現が難しい。食育、農業、地域作りが個別に取り組まれているので、互いに組み合わさっていくとよい。経費の負担について、行政が負担することを市民が認めること、市民社会のサポートが得られるかどうかがポイント。情報の不足、一般に浸透していないという現状がある。

D:日本産の農産品を過度に信頼している。オーガニックを求めない。背景には農政の問題がある。問題が炎上しない限り意識が高まらない。

2.どうしたらもっと有機農作物の普及・導入ができると思いますか?

A:法律の整備、行政の積極的な関与、農家を支える公的な制度、支援、政策、農業を支える人材(そもそも農業に従事する人口が減っている)、農業が成長産業と思われていないため、政策として重要と認識される必要がある。

B:消費者が選択することで、市場を変えていく。関心の高い人だけに留まらず、良さを情報発信する。環境、農業、食育を連携して発信する。食べるものが身体を作り、運動と社会参加、連鎖していることの意味を、皆が理解する。教育・啓発。公立学校の「開かれば学び」をもっと進める。

C:トップダウンとボトムアップの双方向の取り組みが必要。市民の理解を醸成するために学校教育における体験の場を増やすことが重要。育てるところ~収穫することまでをカバーした活動が必要で、作業の大変さを実感し、収穫することで達成感が得られるような食育、教育が重要ではないか。

D:農業経営を有機経営にシフトするように応援するしくみを行政が作っていく。※学校給食だと賛同を得やすい。行政、民間で想いの熱い人、熱いエネルギーが必要。自治体の行政、学校(教員)に食農の体験が出来るノウハウが出来る人を育てる。そのような仕組みづくりをする。

参加者アンケート

Q1鈴木さんのお話しはいかがでしたか?

理由:

  • 循環型の教育の重要性を分かってはいたが根拠に基づいたお話は確実に理論的に落とし込むことができました。当たり前を高め磨きをかけていきたいと思いました。
  • 食の話題から派生して、長寿社会のキーワードが「社会参加」だとお教えいただき、多世代による食を通じた活動の可能性を感じられました。
  • 分かりやすかった。食育の重要性は子ども時代から教えないと、食も持続可能にならないと感じた。   他多数

鮫田さんのお話はいかがでしたか?

理由:

  • 市長のトップダウンと、それを受け止めて本気で推進した行政の方と、その想いに応えた農家の方、学校、先生方、栄養士・調理師の方々のエネルギーに、熱いものを感じました。
  • わずか4,5年でここまでやれるのかと感動した。世界の動きもふまえ、これからの食のあり方を広い視野で捉えることの大切さに気づかされた。
  • 世界の動向と、国内の事例、そしてまちの対策という、大きな視点と国内の優良事例、そこからの自治体の活動として、活動紹介に終わらない形で丁寧かつコンパクトにまとめられており、大変勉強になりました。   他多数

Q3これからは、こうしよう!こう変えてみよう!と思うことがありましたか?

Q4期待していたものは得られましたか?

Q5. お話しの中で最も印象に残ったことは何ですか?

  • 食べること、食べものを選ぶことの重要性が伝わってきたこと。実践体験を通して学ぶことの重要性。
  • なぜうまくいかないかを行政のせいやトップの熱意にだけに理由を求めるのではなく、言い続けること、熱量をもつことの大切さを、お二人の話の中から感じ取れました。
  • 公共調達。環境教育・食育・農業体験をつなげる。
  • 社会全体、グローバルな視点で課題や進むべき方向性について捉えている点。お2人の熱意、行動力、そして周りの方々を動かす力。  他多数

Q6. 自由意見等

  • 我々が健全で健康な生活を送るには、自然との共生が最重要であるとの感想を持ちました。そして、持続可能社会を構築するには、人の節制なき欲を断ち切るべきではないかとも感じました。
  • 身土不二という言葉に引かれて参加しました。今は食の勉強をしています。仕事はこども園で調理をしています。何か、ヒントがあればと思い色んなセミナーや場所を求めています。今回はとても具体的でしたが、結局は自分自身が動くことでしか始まりはないな。と思えました。いつもそうなんですが…ありがとうございました。
  • この度は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。お2人のような、地域を動かす力を持っている若い方々が各地で動き出すことで、日本は持続可能な方向に進むと思います。そのような地道な人づくり、種まきが今後も必要なのだと思います。    他多数