【報告】第10回ESDカフェTokyo 『 サステナブルなコーヒー×SDGs』
~商品選択から持続可能な暮らしを考える~

日時:2021年9月18日(土)13:00-15:00(オンライン開催)
参加者計32名(事務局5名含む)、講師2名

今回のESDカフェは、身近なコーヒーを題材に、私たち消費者の商品選択が、社会に与えるインパクトについて、サステナブルなコーヒーとは何かについて等、講師のお話を伺い、グループディスカッションでは”何が変わったら、私たち消費者はもっとサステナブルなコーヒー、エシカルな商品を選ぶようになるか”を話し合いました。

1. 市橋秀夫さん(埼玉大学大学院人文社会科学研究科教授)のお話

 まず、認証ラベルの視点からコーヒーについてお話いただきました。私たちが手に取るコーヒーには様々なラベルが付いています。(例:有機JAS認証、国際フェアトレード認証、バードフレンドリ―認証、レインフォレストアライアンス認証等)認証ラベルはイギリスで始まり、フェアトレード市場の拡大に寄与しました。しかし、市場が大きくなればなるほど、生産者と消費者の関係は希薄になり、顔の見える関係ではなくなりました。そのため、認証が商品選択の手掛かりになりました。一方、基準が不透明な認証ラベル、企業の独自認証など様々なラベルが登場し、消費者はラベルの信頼性に疑問を感じるなど、商品選択が難しくなりました。
 この認証の問題とも関連して、「グリーンウォッシュ」が起こりました。「グリーンウォッシュ」とは、「会社の環境面あるいは社会面での実績について、否定的な情報をすべて開示することなく、肯定的な情報を選択的に開示して、過度に肯定的な企業イメージを創り出すこと。」です。企業に利益をもたらし、社会に損害をもたらすという情報操作である一方、社会、消費者の環境への関心が高まり、多くの企業がレベルの差こそあれ環境に配慮するようになっ
たというプラスの面もありました。
 上記を踏まえて、再度ラベルの問題を考えてみると、ラベルは重要であり、商品選択の目安にはなりますが、ラベルだけでは十分な情報とは言えず、食べ物(商品)の向こう側にいる生産者と生産者の生活を具体的に知ること(情報を求めること)、消費者と生産者が顔の見える関係性を構築することで、私たち消費者はよりエシカルな、信頼に足る商品を選択することが出来ます。日本では、味覚、品質の帝国主義(至上主義)が強いですが、それらを突き詰めることで犠牲になっていること、環境や社会的な負荷が生まれていることにも目を向けなければなりません。

市橋先生の発表資料

2. 三本木一夫さん(国際日本研究センター研究員、国際協力機構JICAコーヒー専門家、 GOOD COFFEE FARMS Coffee Agronomist & Research Department)のお話

 私たちが日頃、愛飲しているコーヒー普及の歴史に始まり、コーヒーが生産されてから消費者の手元に届くまでのプロセス(どのような人たちを経由しているのか)、そのプロセスの間で価格はどのように変化するのか、そしてコーヒーの相場の推移等についてお話いただきました。コーヒー相場が、種類によりアメリカ、イギリスで決まっているそうですが、生産地の天候の影響、そして生産量の増減で大きく変動します。
 サステナブルなコーヒーとは、何かについても教えていただきました。サステイナビリティー(sustainability = 持続可能性)に配慮したコーヒーのことを言い、現在のことだけではなく未来のことも考えた上で、自然環境や人々の生活を良い状態にたもつことを目指して生産/流通されたコーヒーの総称です。環境保護団体を含むさまざまなNGOが、サステナブルコーヒーの生産流通を推進する活動を行っています。生産地域の自然環境の保護や再生、減農薬/無農薬栽培の推進、生産者の収入の安定化、トランスパレンシー(お金の流れの透明性)の確保、農園労働者の人権保護や生活環境の改善、トレーサビリティー(生産履歴)の確保など、重視事項やカバー範囲にそれぞれ特徴があります。(参考:サステナブルコーヒー協会(2008発足))サステナブルなコーヒーとは、共有の基準や定義があるわけではないということも教えていただきました。

 市橋さんがお話されたように、コーヒーには様々な認証が付いているものが多いですが、認証の取得には、大きな費用負担が生じるため、農家では負担できず、買い付けを行う企業等が取得費、維持費を負担することが多いそうです。また、単に認証を取得するだけでなく、コーヒーの樹の健全性や品質も良いコーヒーを生産するには重要です。SDGsに取り組んでいる農園例として、CO₂排出量ゼロ(人力で果肉除去)、 水使用量を削減しているグアテマラのGoodCoffee Farmsを紹介していただきました。
 三本木さんはコーヒー栽培の指導者として、栽培方法を選択する際に、品質、生産コスト、栽培技術、そして環境への配慮を総合的に検討して決めているそうです。また、農園や倉庫の清掃、日々の細やかなコーヒーの樹の手入れなども併せて、全てに取り組まなければ良いコーヒーは育たないと強調されていました。
 コーヒー2050年問題として、地球温暖化の影響でコーヒーが生産できる場所が大幅に減り、将来的にアラビカ種の生産が半分になると言われています。また病害虫の影響も深刻になると予
想されるため、抵抗性の品種(例:Catimor)、気候変動に適した品種の選定や開発も進められているそうです。
 コーヒーは海外からの輸入がほとんどですが、日本では沖縄で栽培が始まり、そのプロジェクトにも三本木さんは携わっておられるそうです。最後に世界各地のコーヒー農場の写真を見せて頂きましたが、地域にはそれぞれ特徴があり、その場所・文化に適したサステナブルな方法があるそうで、それぞれの土地でサステナブルなコーヒー生産を行い、生産~流通~加工~販売~消費者までのバリューチェーン全体でサステナビリティに配慮することが、コーヒー産業
の未来につながると教えていただきました。

三本木さんの発表資料

3. 小グループのディスカッションの結果の共有

”何が変わったら、消費者はもっとサステナブルなコーヒー、エシカルな商品を選ぶようになるでしょうか” という問いをグループで意見交換しました。
グループA:認証機関が多様化しており、基準も様々であるので消費者が判断に迷う理由でもある。そのため、ある程度統一出来たら良いのではないか。(絞りすぎるとそれもデメリットが生じる)また、学校教育の中でコーヒーの現状をロールプレイで実感するなど、若い世代がこのような問題に触れる機会を創出することが重要。
グループB:今回ワークショップにはサステナブルなコーヒーに関心のある人が参加しているが、そうでない人々に関心を持ってもらうことが大事。コーヒーを飲んだときにその背景(産地のこと、生産者のこと)を考えてもらうようなきっかけづくりが重要ではないか。高品質のスペシャリティコーヒーを皆が求めるのではなく、別の選択肢=サステナブルなコーヒーを意識して選択、消費していくことが必要ではないか。
グループC:エシカルなコーヒーにインセンティブをつける(例:コンビニや店舗でポイントが付与される)。インフルエンサーの人にライブ配信をしてもらい商品をPRする。まずは認証マークを前面に出して宣伝する。バラエティパックの中に必ずフェアトレードなものをいれるようにする。
●グループD:知ること(教育):認証コーヒーの認知度を上げる、子どもたち、学生に知ってもらう。選ぶこと:安全な商品、サステナブルな商品の良さを分かりやすく伝え選ぶ人を増やす。需要が増えると値段が下がる。サステナブルな商品の方が長い目で見ると環境、社会への負荷などトータルで考えると安くなるべき。そうなるように経済構造の変革を求める。
グループE:フードマイレージを顧慮して、地産地消の商品を選ぶ。より日本に近い生産地の商品を選ぶ。サステナブルなフードバリューチェーンの構築、全ての関係者が情報を共有・連携、協力して取り組む(生産―流通ー加工販売ー消費者、行政(地方自治体)全てのアクターが関与する)。顔の見える関係性が構築できれば、認証がなくとも信頼に足る。
食品のバリュー:味、安全性、機能性に加えて、文化、ストーリー、歴史、生産の方法などで付加価値を高める。そのような価値が重要と考えるには、消費者教育が必要。

4.講師のコメント

● 市橋さん:今回、グループでも意見が出たが、教育的なアプローチが改めて重要であることを感じました。ラベルを気にしつつ、ラベルを超えた関係性づくりが出来たら良いのではないでしょうか。
三本木さん:生産者が持続可能で良いコーヒーを生産し、それを見合った対価を消費者が支払い支えることで良い取組が継続していきます。生産者を支援する意味でも関心の薄い層がサステナブルな商品に関心を持ってくださるようなきっかけづくりを今後も行っていきたい。

絵本「ハチドリのひとしずく」をご紹介し、私たち一人一人が行動している事の大切さを伝えました。 https://hummingbirds.tokyo/story

※ 最後にこのイベントのためにスペシャル・サステナブルコーヒーセットをご用意いただいた『上町珈琲』の岡崎さんよりお話いただきました。

消費者の様々な価値観に合わせて、コーヒーの選択肢が広がっています。一生懸命良いコーヒーを作ってくださるコーヒー農家を支えていくことが私たちは重要だと思っています。そのためにより多くの方にサステナブルなコーヒーを知っていただき、コーヒーの向こう側に思いを馳せる気持ちでコーヒーを楽しんでいただきたいです。

◆『上町珈琲』のウェブサイトhttp://www.kouchajima.com/
◆ 商品の詳細はこちらhttps://bit.ly/3k2Cwt1

※本イベントは、未来につなぐふるさと基金の助成を受け、市民参加型プログラムとして実施しました。

アンケート集計結果

理由:

  • 世界的なフェアトレードの認証の歴史と、認証ラベル制度がもたらした良い面、課題が明確に説明されていて、とても分かりやすかった。
  • 認証ラベルで、ラベル疲れが起きているとの話は興味深かった。市場の拡大に貢献したものの、生産者との関係が希薄となり、基準の順守ができなくなるなど、ラベルの問い直しが求められるステージに来ているとの指摘は示唆に富むものである。

理由:

  • 農園管理に実際に携わってきた人ならではの生の声を聞くことができた。
  • 現地の生産者側の努力という視点からのお話を伺うことができた。
  • 淡々とお話されていましたが、何十年と世界各地でコーヒー栽培発展に貢献し、農業指導の苦労と、生産者の思いの一端を知ることができ、とでも興味深い話でした。

Q4. お話の中で最も印象に残ったことは何ですか

  • コーヒーのサステナビリティと言った際に社会、環境、人権、産業全体、バリューチェーン全般への配慮、対応という多面的な取り組みが必要であり、単に生産者、消費者だけが取り組むだけでは不十分であること。
  • 認証取得に経費が掛かる。ラベル疲れのお話
  • 「たかがラベル、されどラベル」という言葉が特に印象的でした。ラベルがあることの利点も意識しつつ、ラベルからは見えてこない生産過程については自分自身で調べなければと感じました。

自由意見

  • 今まで、生産者の思いを考えることはありますが、あくまでも消費者としての視点にとどまっておりました。三本木先生のお話は、正に生産者側からのレポートだったので、説得力がありました。大量生産品が安いのは、廃棄物など環境へのコストを負担していないことが主因だと考えます。個人のライフスタイルを見直すこととともに、経済の仕組みにも目を向けたいと思いました。