【報告】第14回ESDカフェ「渡り鳥が飛来する大崎耕土の田んぼ」

2022年11月27日(日)14:00-16:00に実施した今回のESDカフェは、2017年に世界農業遺産(GIAHS)に認定された宮城県の『大崎耕土』と、そこで毎年越冬する渡り鳥、主にマガンと「ふゆみずたんぼ」について、お二人の講師をお招きしてお話しいただきました。

その後、普段食べているお米の簡単調査と、新しくふゆみずたんぼ米ブランドを作るワークショップを班に分かれて行いました。

参加者数は合計で17名でした。内訳は、子供が2名(3歳と8歳)、大人が10名、スタッフ3名,講師2名となりました。

 

プログラム

  1. 趣旨説明
  2. 三宅 源行さんのお話 「渡り鳥に選ばれたまち 大崎市」
  3. 舩橋 玲二さんのお話 「生きものと共に歩む米づくりを目指して」
  4. ワークショップ
  5. 全体共有

 始めに、講師のお二人からそれぞれプレゼンテーションをしていただきました。

三宅 源行さん 大崎市世界農業遺産推進課自然環境専門員 「渡り鳥に選ばれたまち大崎」

(大崎耕土の概要)

大崎市域は北西~南東に斜めに80kmに渡って広がる水田地帯で、その中に2つのラムサール湿地が含まれます。蕪栗沼・周辺水田(2005年登録)と化女沼(2008年登録)で、この2つの湿地は11km離れています。

この周辺に沢山の田んぼがあり、日本に越冬に来るマガンの約9割がこのエリアで冬を過ごしていることが分かっています。その理由は、安心して眠れる湖沼と、エサが食べられる水田が周辺に存在しているからです。写真ではわかりにくいかも知れませんが、マガンは両翼を拡げると150cmにもなる大きな水鳥で、9月の終わりから2月くらいまでの時期を大崎耕土で過ごします。

(農家と渡り鳥の関係)

マガンは籾を食べるため、農家にとっては、対立する害鳥でした。そこで、マガンを保護するために、まずは農家に対して、マガンによる被害を補填する「食害補償条例」を施行(1999年)しました。これで、渡り鳥が来て籾を食べてしまっても農家の収量が減って困ることは、回避されました。

次に、ふゆみずたんぼプロジェクトを立ち上げて(2003年)、蕪栗沼・周辺水田で「ふゆみずたんぼ」を導入し始めました。ふゆみずたんぼに協力してくれる農家には、「ふゆみずたんぼ交付金」を支給し、渡り鳥が来ることが、マイナスではなくプラスに転じるように工夫をしていきました。

沢山来てくれるのは、嬉しいのですが、マガンが10万羽も集中して蕪栗沼・周辺水田にいると、伝染病などが流行った時に全滅する危険性もあり、分散化を目指しています。

(世界農業遺産GIAHS)

今から350年前の江戸時代、伊達政宗が宮城県辺りを治めていた頃に、蕪栗沼と化女沼の間には、5つの沼が存在していました。沼をつなぐ水路を作り、沼の水を抜いて、その場所を水田地帯に変えていきました。今も、航空写真を見るとかつての湖沼の跡が水田の形になって残っているのが分かります。こうして、沼は広大な水田地帯に変わっていきました。この時使われた水路(一部は、1.1kmにもわたる地下トンネル)は、現在も手入れをして使われています。

この豊かな水田地帯を生み出した仕組みが、これからも守る価値がある農業遺産としてみとめられ「世界農業遺産(GIAHS)」に認定されました。

舩橋 玲二さん NPO田んぼ 理事長 「渡り鳥が飛来する大崎耕土の田んぼ~生きものと共に歩む米づくりを目指して」

(自然共生「三志米」の紹介)

「ゆきむすび」:鳴子地区の少し平野よりも寒い地区で採れるお米です。水も冷たいので、農家は様々な工夫をしてお米を育てています。風が強い地区でもあるので、稲架掛けは行わず棒掛けにして干します。

「シナイモツゴ郷の米」:絶滅してしまったかと思われた東日本固有の淡水魚のシナイモツゴが見つかった地区で、この魚を守る工夫をして育てたお米です。

「ふゆみずたんぼ米」:冬期に、あえて水を張って、渡り鳥の居場所として共存する田んぼで作られたお米です。田尻地域で栽培されたひとめぼれやササニシキがあり、冬期湛水田で作ったお米の総称です。

(ふゆみずたんぼとは)

現在の大崎市のふゆみずたんぼには、たくさんのマガンが来ていますが、昔はもっと南の方の仙台平野が越冬地でした。しかし、都市化や狩猟などで居心地が悪くなって北部の伊豆沼へ移動しました。その後、蕪栗沼や化女沼にも広がりました。あまりに一極集中のため、「ふゆみずたんぼ」を導入して分散化を図る努力をしています。集中しすぎると、伝染病が発生したときに大きなダメージが出る可能性があるからです。

以前、日本中の田んぼの生きもの調査をしたところ5668種がいることがわかりました。今ではもっと調査が進み、6千種を越えると言われています。この豊かな生態系を支える取組として、ふゆみずたんぼの魅力があります。

(イトミミズに注目)

数ある田んぼの生きものの中で注目されるのがイトミミズの働きです。水があれば冬の間も生き残り、土を食べて糞をし続けるので、春までに田んぼの底には「とろとろ層」と呼ばれる柔らかいうんちの層ができます。このとろとろ層が、雑草の発芽を抑制したり、発芽した雑草を根付かせづらい効果があったりするので、有機栽培で最大の敵である雑草の抑制に繋がります。

また、ミミズの身体を通り抜けた土と、そうでない土とを比較すると土壌微生物の多様性が6倍も差があることが分かりました。イトミミズが生きられる田んぼには、それだけ多くの魚が生息し、その魚をエサとする鳥が沢山やってくるということになります。

(除草V.S.非除草の実験)

1平方メートルの田んぼで、綺麗に手で草を取った田んぼと、そのまま自由にコナギ、ミズアオイ、イボクサといった雑草を生やしておいた田んぼとを比べる実験をしたところ、半分程度の収量という結果となりました。

(マガンの利用する水田)

マガンは、主に籾を食べて、水辺で寝るという生活をしています。ふゆみずたんぼの取組みは、賛同してくれた農家さんの自主的な取組みから始まったため、モザイク状に存在していました。先般の農地整備事業を経て、それまでバラバラに点在していたふゆみずたんぼを集約して広い水面ができるように工夫しました。これにより、最近ではマガンたちが、湖沼の代替として水田をねぐらとして使うようになってきました。

しかし、湖沼と異なり、水田は水深が浅いため、凍ってしまうとキツネやタヌキといった獣が歩き回るようになってしまいます。

いろいろな生きものがいるのがふゆみずたんぼの面白さだと思います。

■宿題あわせ:

申し込み時に予め聞いていた「普段食べているお米について」、Zoomの投票システムを使って参加者から回答を頂いた。

 

■グループワーク:渡り鳥米のブランド化

 3つの班に分かれて、渡り鳥米のブランド化についてアイディアを出し合いました。

1. パッケージ・デザイン(キャラクター)

  • 無農薬をもっと強調
  • 少し地味なので、手に取りたくなるような明るい色に
  • マガンをディズニーのキャラクターのように子どもにうける、可愛らしいデザイン
  • 白鳥や6千種のいきもの全部
  • 渡り鳥の絵を大きくして(ドアップする!)インパクトを強くする。

2.価格

  • 5キロ2,800円
  • 1キロ600円くらい
  • ブランド化すればもっと高い価格でも可

3.販売形態・広報などの工夫

  • 大崎耕土の世界農業遺産登録をラベルに入れる
  • 自然保護に繋がる商品の通販カタログへの掲載
  • 絵本の製作など、子どもたちへの教育と結びつける
  • 生協と連携して販売ルートを確保
  • 地産地消を推進:地元のファンをあつめる。
  • アニメーション動画を制作して、物語をアピール(日本語だけでなく多言語)

4.パッケージに添えるストーリー

  • お米の購入が将来の子どもたちのために役に立つというメッセージ
  • 渡り鳥のねぐらを提供する、渡り鳥を守る、環境保全という価値のあるストーリー

参加者からは、以下のような感想が寄せられました。

 ■特に印象に残ったことは何ですか?(以下回答抜粋)

  • ふゆみずたんぼ米のような商品は、売値がキロ600円を下回ると農家の生活状況が厳しくなるということ。
  • 生物多様性との関係性・冬みず田んぼなどの有機栽培の現状
  • 除草区と非除草区の比較実験。半減しても、人手をかけない分の労賃と相殺できるのであれば、非除草区を拡大することが望ましいかも知れません。
  • 世界農業遺産に登録されていること 日本に飛来するマガンの約90%大崎耕土を選ぶこと
  • 農家を巻き込んだ取り組み
  • 300年前に、沼の水を抜くという方法で水田を開拓したこと。何万羽というマガンがやってくること。
  • 田んぼを守るために水の管理を工夫し、数百年の歴史があること、渡り鳥を守ると言うことは地域の水田、そして農村文化そのものも守っていくことが必要であるということ。
  • 渡り鳥のねぐらを確保するための課題、渡り鳥の渡りをする性質上、1つの地域で保護することは不可能であること。ふゆみずたんぼをすることでの稲、生きものへの利点が印象的でした。
  • ふゆみずたんぼ、マガンや渡り鳥を中心に、沼の歴史や 大崎市の渡り鳥へのアプローチ等を聞けて 大変興味深い内容でした。
  • 6000種に近い生きものがいるということ、デメリットと思われていた渡り鳥の飛来をメリットに変えるという発想の転換。

■ワークショップはいかがでしたか

  • 短い時間でもアンケートから引き出せる様々なアイデア・ヒントを知ることができた。
  • 参加者相互にいろいろ意見交換ができたこと
  • 皆でアイディアを出し合うのが楽しかった
  • 分かりやすい内容のワークショップでした。自分だったら、、、と置き替えて考えて意見を述べることが出来ました。
  • とても現実的な提案が沢山され、素晴らしい大崎耕土の魅力、世界農業遺産登録の実績、渡り鳥のことをもっと多くの人に周知すればお米は高い価格でも売れると熱心に議論されたため。
  • お米の販売経路拡大を念頭に参加者からの様々なアイデアを聞けて有意義でした。
  • いろいろな方のご意見を伺うことができよかったです。もっと時間がたくさんあったらよかったなと物足りないくらいに思いました。
自由なコメント(以下抜粋)
  • 世界農業遺産を維持していくご苦労を拝察しますが、もっと自慢してください!!
  • 持続可能な農業を実現するためには、適正な価格を正直に伝えていくことは不可欠だと考えます。それでも買ってもらえるようにするための工夫も当然必要ですが。戦争がなくてもこれまで飽食の限りを尽くしてきた日本にとっての食糧危機は早々にやってくると思います(例:オーバーシュートデー、今夜のNHKスペシャルも?)。補助金に頼らない方法での日本の農業の再構築を実現するために、生産者と流通と消費者がしっかりと連携すること(例:生協の産直)が大切だと考えます。コープみやぎで、今回ご了解いただいたお米がPB化できれば、東北全域に拡がる可能性はありますよね。
  • 素晴らしい活動に感心しました。一方、何かと活動には手間がかかると感じました。環境意識が高く、ボランティア精神が旺盛な今の大学生・高校生にも声掛けしたら・・・如何でしょうか?
  • おもしろいセミナーだったのでもう少し参加人数が多いと、特に後半は盛り上がったのではないかと思います。質問にはその場で答えていただきありがとうございました。
  • お米のパッケージを全国から募集してもいいですね!
  • この度はとても興味深いお話をしていただきどうもありがとうございました。全国の皆様に大崎耕土のお米を手に取っていただき、渡り鳥に思いをはせていただくためにより魅力的な商品開発、広報を是非していただきたいと思いました。また、水田、農村文化を守るためにも米食の文化の普及・継承も重要だと思いました。
  • お米のパッケージについて、子ども達が「当たり付きにする(当たったら田んぼの生きもののシールがもらえる)」「ポケモンのキャラクターを作ってもらう(お米のキャラはまだいないそうです)」などいろいろ考えて盛り上がりました。毎日食べているお米についていろいろと考える機会となり、学びの多い時間となりました、ありがとうございました。

<リンク>

◆大崎市 「大崎耕土」ウエブサイト: https://osakikoudo.jp/

※本事業は、公益信託大成建設自然・歴史環境基金の助成を受けて実施しています。