ESD-Jは、「開発協力大綱」改定に対するNGO要請書への賛同を表明しました。
そして、昨日10月26日、79団体が賛同した要請書が外務省 の遠藤国際協力局長に手交されました。
11月1日に開催されるNGO・外務省定期協議会全体会議ではこれまでのODA政策協議会、連携推進委員会の振り返りと今後の取り組みについて共有、意見交換に加え開発協力大綱改定についての議論が本要請書をもとに行われる予定です。
申込がまだの方は以下の案内をご確認ください。
「開発協力大綱」改定に対するNGO要請書
2022年10月19日
外務大臣 林 芳正 様
NGO・外務省定期協議会
ODA政策協議会NGO側コーディネーター一同
連携推進委員会NGO側連携推進委員一同
「開発協力大綱」改定について、外務省から「開発協力大綱改定の方向性(令和4年9月9日)」が発表され、有識者懇談会での議論が始まっています。私たちは、「戦略性の強化」が掲げられた今回の改定において従来の開発協力大綱に定められていた重要な理念や実施原則が失われることを強く危惧します。その危機感に基づき、改定に対して以下を要請します。
(1)開発協力の定義は「開発途上地域の開発を主たる目的とする『公共的な』国際協力活動」であることを明確にしてください。
開発協力は、人間の安全保障を中心的な理念として途上国の貧困と格差の解消を最優先の目的とするものであり、日本の外交政策、安全保障政策および経済振興策とは明確に切り離すべきです。
(2)軍事的用途及び国際紛争・国内紛争助長への使用を回避する原則を堅持してください。
開発協力の非軍事原則は、平和主義を掲げる日本がそれによって国際的な信用を得てきた財産です。それを失うことは日本の中立性を損なうことにつながり、日本のNGOの海外事業地での活動がリスクにさらされる可能性も出てきます。民生用・防災機材等の他国軍支援であっても、結果的には軍事能力の増強につながり、国際紛争の助長、あるいは相手国内での紛争助長や人権弾圧につながりかねません。また、軍関係者へのODAが拡大すれば人間の安全保障などに使われるべき本来的なODA予算が削られることになります。
(3)環境、人権アプローチを開発協力の中心にすえ、当事者の意見を反映する仕組みを明示してください。
開発により影響を受ける当事者、とくに社会的に周縁化された人びとの人権が開発プロセスにおいて損なわれないよう、持続可能な環境への権利を含めた人権アプローチが開発協力の中心となるべきです。これまでのODAが環境・人権の面で多くの問題を抱えていたことを踏まえ、モニタリングや評価段階で当事者の意見を反映させる仕組みとそのための資金配分が不可欠です。
(4)CSO(NGO)の位置付けを抜本的に見直し、連携を強化してください。
添付文章「開発協力を時代に即した形で、一層効果的・効率的に実施するための3つの提言」に示された、①「 『DAC内最下位レベル』であるCSO経由の二国間援助比率を本大綱期間において10%を目安に引き上げ『世界水準』に」、②「『官』中心に実施されている技術協力事業等を抜本的に見直し、NGO主体の実施で効率化が可能なものはNGOへ」、③「全国800を超えるNGOの力を最大限引き出し、日本のODA/国際協力に関する日本及び被援助国国民の支持向上を図る」の3点を促進すべきです。
(5)開発協力におけるジェンダー主流化を明示してください。
女性の権利を真に普遍的な原則として開発協力政策に位置付けるためには、すべての事業、プロジェクトサイクルのすべての段階においてジェンダー視点を取り入れることが必要です。
(6)深刻な人権侵害等が発生している国に対して援助の緊急停止・見直しを行うことを明記してください。
相手国の人権状況が切迫している等の場合は、援助の緊急停止や見直し等が適切、迅速に行えるよう、規定や運用メカニズムの策定が求められます。ただし、人道危機下での国連・NGOを通じた人道原則に則った支援はむしろ積極的に行うべきです。