ESD-Jは、2022年6月17日に各党政策担当者に向けて、「持続可能な社会づくりとそのための人づくり(ESD)に関する公開質問状」を送付し、来る総選挙に向け、世界が取り組むべき「持続可能な開発目標(SDGs)」とそのために必要とされる「人材育成(持続可能な開発のための教育:ESD)」の推進に対する各政党の姿勢を伺う4問のアンケートを実施致しました。選挙投票の参考にしていただければ幸いです。(回答を受領した政党順に掲載しています)
質問1:貴政党は、持続可能な社会の実現に向けた人づくり(ESD)への我が国の取組、特に昨年5月に策定された第2期ESD国内実施計画をどのように評価しておられますか?
政党 | 回答 |
立憲民主党 | 「現代社会 における様々な問題を、各人が自らの問題として主体的に捉え、問題の根本的な要 因等にも目を向け身近なところから取り組むことで、それらの問題の解決につなが る新たな価値観や行動等の変容をもたらし、もって持続可能な社会を実現していく ことを目指して行う学習・教育活動」のための計画であることは理解します。しかし、SDGsの啓発が主軸となっており、「誰一人とりのこさない」インクルーシブな社会にむけたSDGsであるはずが、日本国内のこどもの貧困の問題や教育格差に全く目がむけられておらず、SDGsの達成に正面から取り組んでいないと捉えられかねない部分等については、改善が必要ではないかと考えます。 |
公明党 | 持続可能な社会を実現するには人材育成が重要であり、本計画はあらゆる年代や立場の人を対象に、学校教育のみに止まらず幅広く社会にESDが浸透し行動変容へつなげる施策になっていると考えます。わが党でも、国際機関、民間企業、NGO やNPO など多様なステークホルダーの支援・連携、また、持続可能な開発のための教育の推進や、日本がイニシアティブを発揮できる分野の取り組みを推進することを政策に掲げてきました。この計画をもとに関係省庁が連携して実施することになりますが、世界をリードすべく、それぞれの責任分野でSDGs達成にためにESDの推進をすることが大事だと考えます。 |
社会民主党 | 我が国における「持続可能な開発のための教育(ESD)」に関する実施計画(第2期ESD国内実施計画)は、持続可能な開発のための教育に関する関係省庁連絡会議がまとめました。各省庁がそれぞれ取り組みを強化することに加え、省庁間、自治体、学校との連携を図り、さらに市民団体、企業などとの有機的な関係を構築しながら、ESDの推進を図ることを期待しています。便利さと利潤を追い求め地球・人を痛めつけてきた“慢性的な危機”と、コロナ禍による“急性的な危機”は重なっています。SDGs達成のために、教育は土台となるものであり、同計画を確実に実施していくことが重要だと考えます。 |
国民民主党 | ESDは2002年に我が国が初めて提唱、その後ユネスコを中心に推進されてきましたが、既に20年を経過しました。その間、特段進捗が見られない中、今回の計画では、5つの優先行動分野が具体的に示され、学校など教育分野だけでなく、地域や民間企業等を巻き込んでいることは評価できます。 |
日本共産党 | パブコメを通じてNGO/NPOとのネットワークの強化などが盛り込まれたことは評価しますが、基本的な枠組みに大きなゆがみがあると考えます。第一に、「基本的な考え方」の第一に「SDGs達成へのコミットメント」を挙げているにもかかわらず、言及は環境問題にとどまり、貧困や人権の言及がありません。しかし、日本の現実はこどもを含む少なくない人々の個人の尊厳と基本的人権が脅かされているし、日本は貧困大国です。人権や貧困について学び、社会を持続可能なものに作り変えていく市民・主権者を育てることをESDの大事な要素とすべきです。第二に、それと関連して子どもの権利条約への言及が皆無なことです。少なくない子どもたちが理不尽な校則や体罰や言葉による暴力にさらされています。ところが政府は校則への子どもたちの意見表明権さえ認めないと公言しているほど、子どもの権利条約に無理解です。政府の態度をただし、子どもの権利条約の学習を子どもと大人の間ですすめることをかかげるべきです。 |
自由民主党 | オールジャパンでわが国のESDを推進し、世界のESDをリードしていくためにも、また、ESDの推進によりSDGsを達成するためにも、極めて重要な国内実施計画だと考えています。 |
日本維新の会 | 回答待ち |
質問2:貴政党では、ESDの推進に向けたビジョンと、その実現に向けてどのような政策をマニフェストに位置付けていますか?特に、学習指導要領の改定により全ての学校でSDGs・ESDの推進が求められることになりましたが、学校教員に対するSDGs・ESDの研修の充実に向けてどのような政策を行う方針でしょうか?
政党 | 回答 |
立憲民主党 | 立憲民主党は、人材育成の重要さに鑑み、教育の格差を解消し、人への投資、未来への投資によってわが国の将来を切り拓き、全ての子どもと若者に寄り添う、チルドレン・ファーストの政策を推進します。気候変動、食料問題など地球規模課題の解決に、国際社会全体の目標として国連サミットで合意された、持続可能な開発目標(SDGs)を踏まえつつ、主導的な役割を果たしていきます。「SDGs推進基本法」を制定し、SDGsの目標とターゲットを活用し、国全体で取り組み、誰一人取り残さない持続可能な社会の実現に貢献します。同法に基づいて内閣にSGDs担当大臣およびSDGs推進本部を置き、SDGsの国内外での達成に向けて、政策立案や政策評価に当たってはSDGsの17の目標と169のターゲットを活用し、あらゆる政策にSDGsの視点を反映させます。 |
公明党 | 参院選のマニフェストには、次のように掲げています。「ESD(持続可能な開発のための教育)」は「SDGs(持続可能な開発目標)」の全てのゴールの実現に寄与します。また、新学習指導要領にも「持続可能な社会の創り手」の育成が明記されており、この考え方に沿って、環境保護や防災など地球規模の課題解決に向けて学習する機会を充実させます。これまでも教員に対して研修が行われてきましたが、ESDの手引きを活用した教員の養成・研修等の在り方の検討を進めるとともに、学校現場において多様な経験を持った人材の活躍や、地域における体験活動や文化芸術体験などの「体験活動」の機会を充実させ、児童生徒だけでなく教員にとってもESDの機会を増やしていきます。なお、ESDの推進については、北九州市をはじめ地方議員が各地で推進しており、大学や地域と連携しての実践や、普及・啓発を推進してきました。埼玉県久喜市では、ESDカレンダーの導入、教職員の研修会の開催、モデル校による研究などの取り組みを進めました。 |
社会民主党 | 社民党の政策公約は、SDGsの重要な課題である、貧困、食料・農業、健康・福祉、教育、ジェンダー平等、水・衛生、エネルギー、雇用、産業・技術革新、平等、都市・住居、消費・生産などについて記載しています。学校教員に対する研修については、ESDの推進拠点となっているユネスコスクールの活動実践から好事例を収集し学び、充実していくことが重要だと考えます。 |
国民民主党 | これまでの学校教育科目に加えて、「SDGsとは何か」、17の項目について具体的に何が必要か、まずは教員に対する様々な分野からの多面的な教育、ブレーンストーミングを行うことが必要だと考えます。 |
日本共産党 | SDGsの、貧困をなくす、すべての人への社会保障や教育、ジェンダー平等、環境、不平等をなくす、平和と公正等々の目標は、国連憲章や国際人権規約、日本国憲法の理想と合致したものだと考えます。その観点から、私たちの政策ではSDGsを「市民社会がめざす未来」と規定し、それを「日本の政治に反映させる」ことを掲げています。教育では、「子どもの個人の尊厳を尊重する教育、保護者の教育費負担の半減をすすめる」というタイトルの下で、15の柱の政策を提案しています。教員への研修は、教員の異常な長時間労働を考え、教員をふやしつつ不要不急な官製研修などの大半を廃止し、時間を確保し、SDGs・ESDの理念と反するような教育の自主性への抑圧をやめ、教員たちが自発的にSDGs・ESDを学べるようにすることが大切だと考えます。 |
自由民主党 | 「環境教育等促進法」に基づき、学校、職場、地域、家庭等のあらゆる場において、持続可能な開発のための教育(ESD)の視点を取り入れた環境教育を推進します。 |
日本維新の会 | 回答待ち |
質問3:ロシアのウクライナ武力侵攻を受け、国際情勢は大きく変わりつつあります。そのような中で、ESD、特に、民主主義や国際正義、平和に関する教育、さらには平和で民主的な国づくりのためには国民一人一人が投票行動などを通じて当事者として社会参加・政治参加することを促す主権者教育・市民教育の重要性が著しく増しています。貴党では、このような観点を教育政策にどのように反映させる方針でしょうか?
政党 | 回答 |
立憲民主党 | 立憲民主党は、現実にある課題や争点について学び、国や社会の問題を自分の問題として捉え、自ら考えて判断し行動する能力を身に付けるための主権者教育を、高校だけでなく小・中学校から積極的に行うことを推進します。 |
公明党 | 平和や民主主義は教育の根幹をなすものですので、その実現に向けて、子どもたちの社会参画への主体性を育むことが不可欠です。児童生徒、保護者、教職員が互いに話し合いながら、校則や学校行事などを決めていく「学校内民主主義」の実現や、若者が首長や議員、議会と直接関わる機会を創出して主権者教育の一層の推進と充実に取り組みます。また、平和を構築するために人的交流は要であり、とりわけ青年交流は、将来にわたる友好関係を築く礎です。そのため、留学生交流の強化、オンライン上の取り組みを含めた、各国・地域との青少年交流の一層のネットワーク強化、日系社会との連携強化及び海外における日本語教育・日本研究の強化等を推進します。 |
社会民主党 | 日本のおける平和で民主的な国づくりの原点は、日本国憲法です。「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の三原則を教育政策に徹底します。学校教育のみならず、社会人・市民教育も重要です。近年、学習指導要領、教科書検定などにおいて、憲法を改悪しようとする勢力による政治的介入がみられます。憲法26条に反するものであり、子どもの学習権などを侵害するおそれがあり看過できません。国会、自治体議会でただしていきます。 |
国民民主党 | 国民民主党は基本的に、民主主義、平和等の価値観を重んじた政策づくりをしています。また「『人づくり』こそ国づくり」を公約に掲げています。教育や人づくりに対する支出は「教育国債」でまかない、全ての子どもが人生の平等なスタートラインに立てることを目指していますので、家庭の収入の差に関係なく、同等の教育を受けることによって、自らの実体験として民主主義、国際正義、平和を学べるようにします。 |
日本共産党 | 日本の主権者教育は二つの点で問題をかかえています。一つは、実際の学校生活のなかで少なくない子どもたちが権利の主体として扱われていないことです。頭髪や服装など個人の自由に属することを理不尽な形で制限し、その理由も示さなれずに問答無用で押し付けられ続けた場合、子どもにとって主権者とは自分には関係のない干からびた抽象になってしまいます。いま一つは、主権者教育のなかで選挙権や国会などの制度の知識は学ぶものの、「自分たちが声をあげれば政治は変わる、社会は変えられる」ということを学ぶことがほとんどないことです。こうしたゆがみをとりのぞき、学校や社会で意見表明権が保障され、自らが権利の主体であると実感できるようにするとともに、自分たちの生活や未来のことで願いや不満があれば声に出し、まわりの人々と力をあわせて変えていくことを学校内外で励ますような教育(社会教育をふくむ)をすすめることが重要だと考えます。 |
自由民主党 | 国民は社会の形成者としての基本的な資質を身に付ける必要があります。情報を収集し読み解き、考察し、判断を下す政治的リテラシーを醸成する教育や機会の提供が重要です。 |
日本維新の会 | 回答待ち |
質問4:世界的に喫緊の課題である気候変動問題の解決に向けて、わが国は2050年カーボン・ニュートラルを宣言しています。脱炭素の実現に向けたカギは、若者を含むすべての世代の人々の意識改革であるとして、昨年の気候変動COP26でもグラスゴー気候変動教育実施計画が合意されました。貴党はすべての世代を対象とした気候変動教育をどのようにすすめる方針でしょうか。
政党 | 回答 |
立憲民主党 | 気候変動だけに限りませんが、環境問題の解決のため、自分たちの生活と自然環境との関係について学ぶ機会が重要であるという観点から、地域やNGOと協力し、環境教育プログラムの開発や学校などでの環境教育を充実させることが重要であると考えます。また、幼少期の自然との触れ合いは自然環境への意識、感性、命に対する意識に大きな影響を与えるものであることに鑑み、学校教育でのプログラムに加え、地域での環境教育プログラムの充実を図ります。さらに、将来世代への影響を長期的観点から検討する「未来世代委員会」を創設し、公平公正で開かれた科学的な政策議論を行い、国会や政府に対して提言・勧告を行うことができるようにする、「未来世代法」の制定を目指します。 |
公明党 | ご指摘の通り、公明党は、カーボンニュートラル実現のためには、若者を含むあらゆる世代の意識や行動の変革が必要であり、そのために、学校教育や社会のさまざまな場面において、気候変動教育を含む環境教育の充実が重要と考えます。具体的には、地域の脱炭素化を進め、あらゆる世代の住民へ普及啓発していくための人材の確保が重要であり、脱炭素について専門性や能力を有する人材の育成・確保を進めます。また、初等中等教育における環境教育の一層の充実を図っていきます。 |
社会民主党 | 気候変動問題への取り組みは最重要課題だと考えます。それを実現していくための国民の合意形成には、すべての世代を対象とした気候変動教育が肝要です。温室効果ガス排出削減目標の達成、自然エネルギーへの転換、脱原発に加え、大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした異常な産業社会や弱者を切り捨てる新自由主義経済など、抜本的な政策転換が求められています。社民党は、政策転換を提起するなかで、あらゆる機会を学習機会と捉え、合意形成を図っていきます。 |
国民民主党 | CO₂を削減しながら豊かな社会を目指すためにはどうしたらよいかという知識やスキルを身につけること、またその大前提として、生態系との関係を重視することが必要だと考えます。そのためには、学校だけでなく地域やNGOと協力し、環境教育プログラムの開発や環境保全を推進するための社会的制度的基盤の整備を進めます。 |
日本共産党 | 気候危機の打開は人類と地球にとってまったなしの課題です。危機を打開するために、人々の意識の変容は欠かせません。気候変動問題にとりくむNGO/NPOの力をかり、各種のメディアの協力をえて、多くの人々が真剣に気候危機と向き合い、学び、考える場をつくるべきです。学校で教員が自分たちの裁量で、授業や行事などの様々な場に気候変動問題にとりくむ若者を招き、学習や討論を行うことができるように、学習指導要領を弾力化することも必要です。 |
自由民主党 | 脱炭素社会の実現には、ライフスタイルの転換が重要です。国民一人ひとりが地球環境問題について理解を深め、環境を守るための行動をとることができるような教育を推進します。 |
日本維新の会 | 回答待ち |