【報告】第10回 オンラインセミナー「学校教育におけるESD/SDGs」

日時: 2022年2月26日(土)13:00~15:00
講師: 徳山 順子前教育長(岡山県早島町教育委員会)
ファシリテーター: 池田 満之(岡山ユネスコ協会会長、ESD-J理事)

早島町は、「ESD推進の手引き 令和3年5月改訂版」(文部科学省)に「早島町学校教育ビジョン」(早島町教育委員会)が事例として紹介されているように、学校教育におけるESD/SDGsを先駆的に取り組んでいます。そのキーパーソンである徳山順子前教育長をゲストにお迎えし、早島町での取り組み実践から学校教育におけるESD/SDGsについて学び合いました。

徳山 順子前教育長の講演

自立・共生・郷土はやしまを愛する心の育つ学校園へ!SDGsのゴール目標を踏まえた、「協働・協学・協育」の町づくり

~子どもの可能性を引き出す、持続可能なカリキュラムの構築~

早島町は、人口約12,700人(2021年4月)、保育園3園、幼稚園1園、小学校、中学校が1校ずつある岡山県の市町村で最も面積の小さい町です。平成27年6月17日の「教育のまち・早島」宣言のもと、早島町学校教育ビジョンの実現に向けて、保育園・幼稚園・小学校・中学校の連携のため、「めざす子ども像」を共有し、情報連携や園児・児童・生徒の交流を一層深めています。

子ども像「地域とつながり 未来を拓く 早島っ子」
  • 早島のことをよく知り、
  • 早島町の発展のために協力、協働でき、
  • 早島町を愛し続けることができる子どものことです。
  • 確かな学力を身につけ、自主的、共同的に課題を解決できる力と
  • 高い志をもち、世界でも活躍できる力を身につけた子どものことです。

小・中学校の義務教育9年間のカリキュラムの連続性・一体性のあるものにすることで、一つの学校園として、子どもたちを一貫して教育していくために、現在、小中一貫教育を推進するための教育課程づくりや授業改善、総合的な学習の時間での「はやしま学」の探究活動の充実などに取り組んでいます。

町民とともに学び、地域を考える「はやしま学」の実施、学校園と地域が連携し、早島っ子を育てる仕組みの拡充を行っています。子どもと学校を中心にして、すべての町民が学び合い、育ち合う環境をつくることで、子どもたちは早島で学ぶことを誇りに思い、町民も共に学び育つ地域を誇りに思います。このような「協働・協学・協育」の町づくりをめざし、学校の教育活動の再構築を行っています。

学校における
具体的な取り組みとしては、単元ごとに育成すべき資質・能力を整理し、新学習指導要領の3観点とESD、キャリア教育の関係性を明確化しました。

探究的な学習の成果がキャリア教育、ESDの視点で、どのような態度・能力の強化に繋がるのかが明確になったことで、カリキュラムの再構築の方向性が定まりました。

具体的には、以下の取り組みを行いました。

  • 探究的な学習活動の見直し、年間指導計画の再構築
  • 育てたい力を明確にした単元学習プログラムの作成
  • 小中学校の評価規準表の作成
  • つけたい資質、能力を明確にしたESDカレンダーの作成
  • つけたい力の明確化と振り返り時間の充実

早島町で実施されている具体的な活動事例もご紹介いただきました。(以下抜粋)

  • 教員の学びを支えるESD研修(地域フィールドワーク、早島の魅力探し)
  • この地域の特産品のいぐさの歴史や魅力を学び、新たな商品の開発
  • 早島のふるさとソングの作成
  • いぐさの魅力を発信するために花ござピンポン世界大会の開催(中高生が企画運営の中心を担う)
  • 起業体験活動(中学校):会社を設立し、4部門、32プロジェクトチームに分かれて商品の企画をし、優秀商品は実施に商品化、広報、販売までを行う。本取り組みは、地元企業と連携して実施
  • 大学生や地域の方がボランティアとして子どもたちを指導する「放課後・土曜はやしま塾」「わくわくサマーホリデイ」など
  • 授業の中で地元企業の方が先生となる、地域の方から学ぶ機会を多く設ける
  • 探究した学びや提案を地域発信する場の設定、子どもたちが町づくりを提案(子どもと大人の熟議、子ども議会、教育のまち・はやしま子どもフォーラムなど)
<活動・学習の成果>
  • つけたい力を明確にし、振り返りの時間を確保したことで自分の生き方を見つめ、自己を成長させようとすることに繋がっています。
  • 探究的な学習の充実が、地域や社会へ貢献していこうとする児童生徒を増やすことに繋がっています。
  • 全国と比較して、自分には良いところがあると感じる児童生徒の割合は、早島町の子どもたちはかなり高くなっています。
  • キャリア教育に関するアンケート、ESDに関するアンケート、GRIT(やり抜く力)に関するアンケート(中学校3年間の調査)の結果をみると、すべての項目でスコアが改善しています。
  • ESDで社会貢献意識を高めるとともに、キャリア教育で自分の生き方を見つめ直すことが、相乗効果となっています。ESDとキャリア教育の両輪を回していくことが大切だと教員の多くが認識しました。
  • 地域社会と協働・連携していくことで、学校の活動が地域に伝わり、教育活動を理解し、応援する企業や住民が増え、学校理解がより深まりました。

 グループトークと全体共有

徳山先生のご講演を踏まえ、4つのグループに分かれて講演の感想、持続可能な社会づくりに必要な力とは何か、持続可能な地域をつくる上で、学校と地域社会が連携するためにどのようなことしたら良いかについて等、意見交換を行いました。グループディスカッションの共有は以下の通りです。

  • グループ①:調べる力、発信する力、気づく力が基礎になるのではないかと感じた。
  • グループ②:ESDの繋がる力=社会に貢献する力と、キャリア教育のやり抜く力=自分を育てる力を統合して探究的な課題をつくるという点が重要。楽しんで新しいことに取り組むということが非常に難しいが、教員に新しい取り組みをしてもらうためにはどうしたらよいだろうか。リーダーシップが重要だが、指示ではなく、伴走できるようなリーダーシップが必要だと思った。
  • グループ③:新しい仕組みを作る、スタートアップには、仕掛け人、コーディネーターが必要である。企業から貢献したいという思いはあっても、学校・地域へのアプローチは難しいので、学校・地域からの要望、応募などの情報発信があると連携しやすい。学校と地域の連携の仕組み作りにも外部(教育委員会、大学、企業、専門家)の視点、関わりを入れることが重要だ。
  • グループ④:徳山先生がご説明されたプロセス管理をしながら最終的なビジョンの達成に向けて、PDCAを回しながら取り組んでいく、地域と先生方をうまく巻き込みながら実践していく方法が理にかなっていると感じた。

どのように、実際に教育委員会や教員を動かしていったのかという質問に対して、徳山先生からは以下のお答えがありました。

  1. 教育長として、こういう町にしたい、こんな子どもを育てたいというビジョンを明確にし、地域も巻き込んで「育てたい子ども像」を共有すること、それにはまず教育委員会、行政の職員から意識を変えていく。
  2. より良い授業をしたいけれどもアイディア、経験がない教員に対して、アイディアを提供するという形で積極的にサポートすることで、先生方が授業づくりを通して試行錯誤しながら成長していく。
  3. ESDで新たなことをするというのではなく、今学校で行っている内容で、まずは探究活動の質を上げるという方法で授業の質を上げていく
  4. 子どもたちが変容する姿を見て、教員が効果を実感・体感する
  5. 子どもたちが地域に出て行くことで地域が活性化し、学校に関わる大人や学校応援団が増えていく。
  6. 子どもが意見を表明、提案の場をつくることで大人が子どもを見る目が変わり、一人の社会人として接していくようになる。
  7. 教員が異動しても取り組みが継続できるようにカリキュラムを作成し、引き継いでいく。
  8. 他の地域に異動をしても力が発揮できるよう、早島町に来た先生方にしっかりと指導力が身につくように育成する仕組みを作っている。

■参加者アンケート結果:

1.ゲストスピーカーのお話はいかがでしたか。

大変良かった12名、 良かった4名、普通1名

1-2 理由:(抜粋)

  • とても充実した内容で、早島町の取り組みの素晴らしさが良く伝わってきました。他の地域で早島町のような取り組みをどのように広げていけるかが課題だと思いました。早島町で育った先生が、他の地域で同じような取り組みを広げていると言うことは、素晴らしいと思いましたが、他県など直接の広がりが起こらない地域にどのようにノウハウが伝えられるか、そのような仕組みが作れるかが日本の教育の課題だとも思いました。
  • ESD実践を教育政策の動向と(理論的に)きちんと結び付けている=ESDのメインストリーミング化につながる素晴らしい実践と感銘を受けました。その一方で、プレゼン(アウトプット)能力を高めた子どもたちが日常生活でどれだけ身体化された地道な実践をしているのかについて気になりました。
  • 本当にいろいろな人をまきこみ、やり抜く力を発揮した取り組み、そして先生の情熱に感動しました。これが常に改善し質を高めるサイクルになっていることにさらに驚かされました。現時点の完成形を聞くと圧倒されます。ファーストステップ、スモールスタートからのプロセス、試行錯誤での苦労話なども聞きたいと思いました。教える側が変わること、教える側ができると信じることの大切さを改めて感じました。
  • 現状分析をした上でビジョンを設定し、ビジョンに向かってバックキャストしたテーマごとのプロセス管理が実践されていました。さらに必要に応じてPDCAサイクルからの行動修正を行っていることもご報告いただきました。これを自治体の教育委員会レベルで、必須テーマを盛り込みながら実践されていることは、非常に参考となりました。

2.グループディスカッションはいかがでしたか。

大変良かった7名、 良かった4名、このパートに参加できなかった6名

2-2 理由:(抜粋)

  • 様々な視点からの意見が議論できた。時間は短いと思います。
  • 様々な意見が伺えるのが楽しいです。参加者の方の活動を知ることができるのもよかったです。
  • ゲストスピーカーの報告をしっかり整理する時間にはなりましたが、このモデルが全国あちこちで再現出来ないとESDではないと考えます。どうやって再現出来るように支援体制を組むのか等、次のステップのための深堀をする時間はありませんでした。

3.今回のテーマに関するご意見、ご感想、オンラインセミナーの運営を改善するためのご提案などご自由にお書きください。(抜粋)

  • 地域における教育委員会や教育長がいかに大事な存在かを強く感じた。徳山先生のような教育長が全国にもっと増えてほしいと思った。
  • 学習の場を地域に広げていくためには、事業の継承がカギになると思います。しかしながら、学校側の人材は、生徒は3年の在籍期間しかないし、先生も数年ごとに異動され、極めて事業継承がしにくい状況があるのではないかと思いますが、この点をどのように克服して取り組みを大きく実らせていったのか。何人かの方のコメントでも出ていましたが、「これだけのことをやりました。」ということだけではなく、「どうやって実現したのか」という点についてもう少しお話を聞きたかったと思います。
  • この好事例を地域を超えて展開していくことが私たちの社会の課題と感じました。教育関係者に留まらず、他地域の各層(行政、地域住民、企業、学生など)が好事例を学ぶ場が必要と思いました。また、地域を超えて各層間での学びの場、共有の場作りをどうしたらよいのかを考える必要性をひしひしと感じました。この教育を受けた人たちが、高校、大学、社会人とうつるなかでの意識の変化、行動の特性がどうなのか、追跡調査の仕組み作りもあると良いなと思いました。