令和3年度ローカルSDGs人材育成地方セミナー
【山梨県北杜市】
「森という場の可能性~子どもとひらくローカルSDGs~」報告

日   時: 2022年1月16日(日)13:30~15:30
会   場: 山梨県北杜市大泉町西井出石堂8240-1
山梨県立八ヶ岳自然ふれあいセンター(山梨県からの指示でオンラインのみで開催)
参加者: 参加者総数 59名
(内訳)一般参加者数合計56名(一般参加はオンライン参加のみに変更しました)
司会1名、講師1名、関係案内人1名
講   師: 小西 貴士さん(森の案内人・写真家)
関係案内人: 諏訪 哲郎さん(NPO法人八ヶ岳SDGsスクール 代表理事、学習院大学名誉教授)
司   会: 鳥屋尾 健さん(公益財団法人キープ協会 環境教育事業部事業部長)
講師 小西 貴士さん

講師 小西 貴士さん

関係案内人 諏訪 哲郎さん

関係案内人 諏訪 哲郎さん

司会 鳥屋尾 健さん

司会 鳥屋尾 健さん

八ヶ岳自然ふれあいセンター

会場の外観

「八ヶ岳の学びの入口」であるセンターは、地域の自然の素晴らしさや人と自然の関りの中で育まれた歴史や文化を学ぶ機会を通して、その良好な環境を未来につなぐ環境教育の中心施設です。

 1.概要

新型コロナウイルスの感染拡大の状況を鑑み、オンライン参加のみとしました。開会に際し、セミナーの開催趣旨や目的、プログラムを紹介し、会場についての説明を行いました。その際、本セミナーが、参加者のそれぞれの活動と照らし合わせながら、地域課題や新たな価値の創造を考えられる見方を目指すことが強調されました。

講師からは、森という場を活用した野外保育や地域づくりについて、未来の社会に向けての環境と教育についてのヒントをお話しいただきました。関係案内人からは、SDGsをめぐる教育界の進展と子どもたちの育ちに不可欠な自然についてお話しいただき、学校と地域の連携の重要さが強調されました。

その後、参加者からの質問に返答しながら、自然体験の必要性が話されました。そして、これからの時代に必要なものや、この時間を経て心に浮かんだことを次のステップへ繋げてほしいというメッセージと共に、閉会しました。

2.関係案内人・講師の報告内容

(1)講師:小西 貴士さん

 講師である、森の案内人・写真家の小西貴士さんより、森という場を活用した野外保育や地域づくりについて、未来の社会に向けての環境と教育についてのヒントをお話しいただきました。森の中で過ごす子どもや自然の写真を使ったスライドショーや、講師から参加者への問いかけを織り交ぜながら進めてくださいました。

 講師から参加者への問いかけは4つありました。①これから生まれてくる人を想像してみてください。これから生まれてくる人に出会わせてあげたい景色はどんな景色ですか。②わたしたちはだれとこの地球を共有しようとしているのでしょうか。③この腕の中で眠る幼い人が明日から私を離れて生きていくとしたら、用意してあげられる最善のものって何だと思いますか。④周辺にいろいろな生きものが生きていることをどのように幼い人と分かち合いますか。

 これらの問いかけを通して、多様な生命や物質があふれている森は、持続可能性について考える際に、グローバルな視点に留まらず、全てのものが生きていくために必要な要素やつながりを感じ、「全体」へ目を向けることができる場である、ということを紹介いただきました。

(2)関係案内人:諏訪 哲郎さん

 関係案内人である、NPO法人八ヶ岳SDGsスクール代表理事・学習院大学名誉教授の諏訪哲郎さんより、SDGsをめぐる教育界の進展と子どもたちの育ちに不可欠な自然についてお話しいただきました。冒頭では、持続可能な開発のための2030アジェンダの言葉から、SDGsの特質は持続可能に対する危機感と高邁な理念であるという紹介をいただきました。また、SDGs時代とよばれる現代は、持続可能な未来を構築できるか、破滅以外の選択がなくなるかの重要な分岐点となる時代です。その時代に必要な教育は、これからどういう社会を作るか、私たちが実現したい未来のために、変革をもたらす能力を身に付けることが大事だということを、OECDのラーニング・コンパス2030から、説明くださいました。そして、そのような深い学びを作り出すためには、子どもの根底にある、感性や感覚、好奇心、遊び心が大事であり、子どもの自然体験はそれらを育んでくれるというお話しがありました。また、自然の場を活かした体験を、学校と地域が密接な連携・協力を通して提供することで、学校の過剰負担を軽減し、子どもたちに自然と触れ合う機会を提供できるというお話しをいただきました。

3.参加者のコメント・質疑

(1)ウェビナー参加者からの質問
Q1.都会にくらしているなかで、身近に豊かな自然がなく、日常的に森に行くことができません。そんな場合、どのように自然を感じればよいのでしょうか。
A1.自然の認識について、私たちがこのタイミングで考え直す時がきたのではないでしょうか。保育の世界では自然の捉え方を、人や文化や物と並べて、ひとつの要素として捉えていましたが、人や文化や物を取り囲むものとして捉えると、全てが自然という認識になります。その認識でいうと、都市環境ほどドラマチックなものはないので、都市環境の中の植物などを定点で観測することにも意味があります。
Q2.SDGsのその先がどんな姿なのでしょうか。SDGsの枠組みを越えた思考を考え直す時期ではないかと思いますが、どうでしょうか。
A2.SDGsに価値がないのではなく、SDGsに至る過程で、利益中心だった経済界が、自然や環境があっての社会です。その社会が機能しての経済だという考えがあります。そしてそれが投資家なども巻き込んで、経済界の方向も変えようとしています。それ以前と比べると、SDGs概念が果たしてきた役割は大きいものがあります。

4.アンケート結果概要

事後に実施したアンケートでは、参加者から以下のような感想が寄せられました。

  • 自然の尊さ、学びの場として自然を消費してしまう可能性について学んだ。
  • 森で「ぜんたい」を見ること。俯瞰的視野を持つことの重要性を感じた。
  • 小西さんの感性・思考を重ねて訴えるスライド仕掛けは興味深かった。
  • 小西さんが掲げてくださった問い。これから生まれてくる人を想像し、出会わせてあげたい景色について考える、ということや、私たちはだれとこの地球を共有しようとしているか、ということを考えることは、SDGs時代の教育を考える時、根っこになる大切なことだと思いました。
  • 内側からのまなざし、つなぐ、同じところ探しから、全体を感じ、全体に思いを馳せる、ということに、とても感銘を受けました。
  • 小西さんのスライドショーからは、森の素晴らしさ、生きるということ、子どもの感性の素晴らしさ、祈りがじんじん伝わってきました。諏訪先生のお話しからは、SDGsの意味、ラーニングコンパス2030、トランスフォームなど、わかりやすくお話ししてくださり、改めて、今、何ができるかを考えさせられました。
  • これが正しいと括らずに、常に自問自答しながら解決の道に進む姿勢に感銘を受けました。
  • 既存の価値感を覆す考え方、それを子どもたちから得ること、トランスフォーム、自然は自然環境だけでなく人を取り巻く全てと捉える概念であると学びました。

5.まとめ

今回のセミナーでは、これからの時代の教育について様々なヒントがありました。自然体験のなかでの学びのように、全体のつながりを大切にし、全体を理解するチャレンジが大切と指摘されました。

SDGsのとらえ方については、世界を均質化するのではないか、多様性が守られるのかとか、SDGsウォッシュが起こっているのではないかと言った批判などがあり、それらの点についてしっかり考えることが必要ですが、「かけがえのない地球」といった国連人間環境会議に始まる議論を踏まえてSDGsがつくられたというポジティブな側面を認識することも大切です。なお、SDGsの目標年は2030年ですが、私たちはそろそろ2030年を越えた世界をどうしたいかを考えるべき時期にきていると言えるでしょう。

また、これまでの「分類する」というアプローチが限界にきており、新たに「つなぐ」という概念が出てきましたが、さらにそれを超えて出てきた「全体を見る」との考え方が重要です。学校教育の世界でも、学年ごとに分けること、教科に分けることにより合理性を追求してきましたが、その結果行き詰まりになっているのではないでしょうか。本日の議論の中で、これからの教育はどうあるべきかについて様々なヒントが得られました。そこから新しいものが生まれることが期待されます。

  (ESD-J理事 鳥屋尾 健)