第1回 ESD CAFE TOKYO 開催レポート(前編)
ESDのパイオニア阿部治さんがESDを始めたきっかけは、「大好きな生き物がずっと住める世界」をつくりたかったから。長年に渡りESDを続けてくることができた理由とは?

「ESDのこれからについて多様な人と話し合う場をつくろう」

そんな想いで企画が始まったESD-J主催「ESD CAFE TOKYO」は、10月3日阿部治さんをゲストに第1回目が開催されました。
ESDを全く知らなかった方も含め、平日の夕方という時間ながらも13名の方が参加して下さいました。

■ESD CAFE概要
  開催日:2017年10月3日(火)
  時間:18:30~21:00
  参加者:13名
  主催:ESD-J

■プログラム
  1. ゲストトーク
    ESD-J代表理事 阿部治氏「ESDのこれまでとこれから」

  2. ワークショップ
    ①グループに分かれて阿部さんへの質問をまとめ、発表
    ②ESDを広げるために「どうやって場をつくるのか」「どうやって広げていくのか」「どんな情報があればいいか」
    グループで意見をまとめて発表

  3. 参加者の想いを共有

イベント開催レポートを2回に分けて綴ります。
前半は、ゲストトーク(一部抜粋)と、参加者からの質問・回答をまとめました。

 

阿部 治(あべ おさむ)
1955年生まれ。「国連ESDの10年」共同提案の当事者としてESD-Jを設立。
政府のカウンターパートとして長年ESD活動を推進。

 


元々生き物が好きでこの世界に入りました。

子供のころはただ見たり捕まえたりするだけでしたが、大人になり「大好きな生き物がずっと住める世界をどうやってつくっていけばいいだろう?」と考えるように。

多様な生き物がずっと住める社会とは、人も自然も生き物もみんながちゃんと住める社会でなければいけないのだと気づきました。
環境教育から始めて、ESDへと、かれこれ40年ずっと関わってきました。ここ何十年も、土日もなく活動し、国内外の様々な会議に出ていると、ESDの課題が見えてきます。
国際的な共通課題は、政策立案者と研究者を繋ぐこと。
政府の政策の中にどれだけESDを取り入れ、多様な都市や地方の中へどのようにESDを具体化していくかが課題なのです。

例えば日本の人口問題を例にしてみましょう。
国交省のデータによると、2050年には人が全く住んでいない都市がどんどん増えていくと予測しています。そして日本の高い自殺率は、世界全体でワースト6位、女性はワースト3位、特に日本の若者の死因のトップが自殺。これがどんなに深刻な問題か…

このような課題を解決し、どうやって持続可能な日本をつくっていけばいいのでしょうか?
私はその課題に関わる研究者だけではなく、多様な人々が関わりビジョンをつくることが大切だと考えます。持続可能な社会は一部のステークホルダーだけでなく多様なステークホルダーが必要で、そこにはもちろん政治家も含まれているのです。

多様な人々が関わり、持続可能な地域あるいは担い手づくりをしていかなければならないのです。

今後、少子高齢化・人口減少に伴い地方衰退という問題が起きてくるでしょう。
私は、都市部にいる人たちが地方で暮らせるような仕組みをどのように作っていくかがとても大切だと考えています。

重要なのはただ暮らすだけではなく、個々が自分の想い(ミッション)を持ち、自信を持って活動すること。同じような想いを持ち、互いに励まし合えるような人が周りにいること。私がこの活動を続けてこられたのは、まさにそういった仲間たちがいたからです。

自分に自信をもって活動している人々の、素晴らしい事例がたくさんあります。
自ら考え実行し、ソーシャルイノベーションを起こしている人たちがいます。
そのような活動にぜひ触れて欲しい。
その時に、「なぜこの人はこのアイデアを生み出せたのか?」「何を目的にし、どのように繋いでいるのだろう?」と考えることはとても良い学びになります。

出会いを大事にして欲しい。
仲間をいっぱいつくって欲しい。
若者は希望です。ぜひ活動していって欲しいです。


トークの後、グループに分かれて阿部さんへの質問をまとめるグループワークを行いました。
様々な質問が出ましたが、その中から1つご紹介します。

質問

ESDは多様なステークホルダーが関わり実践していくものであると認識していますが、現在の日本の状況は、例えば環境系、開発問題系、学校に関すること、平和問題などがそれぞれ交わることなく行われ、結局縦割り構造から抜け出せていないところに大変問題意識を感じます。縦割りを横串に刺すのがESDであると考えますが、解決のヒントを教えて下さい。

そうそう、大変なんだよ~。。(笑)
私は日本の場合、縦割り構造を改善していくのは法律云々ではなく「人間関係」ではないかと考えています。「ESDの10年」が始まるまでの経緯、そして始まって現在に至るまでの過程においても、様々なことがありましたが、大切なのは人間関係、繋がりだった。

ESDをやると政府が決めたから人が集まってくるのではなく、一緒にESDを進めていくための人間関係を構築していることが大切だと感じます。

ではどうやって人間関係を構築していくか。
例えば役所の人も内部の人間とばかり関わっているのではなく、民間の人たちと交流しながら、これから役所にいる者としてどんな未来をつくっていけばいいだろう、と自分たちの未来のイマジネーションが持てるような場で、みんなで夢を語ることがとても大切なんじゃないかな。
その場には大人はもちろん子供も参加する。

そういう「場」をつくらないといけないと思う。世代から世代へ繋がっていくような「場」づくりをしたいね。


阿部さんはこれまで、政府と市民組織がパートナーとして協働していくため、様々な活動をしてきたことで有名です。協働するためには十分なコミュニケーションと共感が不可欠であり、それは短期間で構築できるものではなく、時間が必要です。

私たちESD-Jは、ESDという共通概念をベースに、多様なステークホルダーが想いを共感し関わり合い、コミュニケーションを深める「場」を広げたいと考えています。
そのきっかけとして「ESD CAFE TOKYO 」を企画しました。

次回後編は、ESDを広げるために「どうやって場をつくるのか」「どうやって広げていくのか」「どんな情報があればいいか」というテーマで行ったワークショップの様子と、参加者の皆さんの想いを共有したいと思います。お楽しみに!

(ESD-J 事務局)