令和3年度ローカルSDGs人材育成地方セミナー
【徳島県板野郡】
「食から持続可能な地域づくりを考える」報告

講師 渡邉崇人さん

講師 渡邉崇人さん

関係案内人 市岡沙織さん

関係案内人 市岡沙織さん

司会 中矢謙太郎さん

司会 中矢謙太郎さん

 

日   時:2022年2月6日(日)13:00~15:00
会   場: 徳島県板野郡松茂町広島字北川向四ノ越30
株式会社ハレルヤ

参加者:参加者総数 88名
(内訳)一般参加者数(オンライン参加者85名)
司会1名、講師1名、関係案内人1名
講   師:渡邉 崇人さん(グリラス代表取締役CEO、徳島大学バイオイノベーション研究所 助教)
関係案内人:市岡 沙織さん(株式会社ハレルヤ代表取締役)
司   会:中矢 謙太郎さん(株式会社ハレルヤ 総務部課長補佐)
会場の外観

会場の外観

ハレルヤスイーツキッチンは、地元食材の積極的利用や食品ロス削減の取り組 み、フェアトレード商品の開発など、お菓子作りを通してESDやSDGsを身近なものとして知ってもらうため、主に小・中学生の工場見学受け入れを行っており、地域における学びの場としての大きな役割を担っています。

1.概要

開会に際しての趣旨説明の後、関係案内人である市岡沙織さんからハレルヤが取り組む規格外素材の活用等による食品ロス削減の取り組みの紹介があり、続いて講師の渡邉 崇人さんによるタンパク源として、また、食品ロス削減対策としてのコオロギ食のお話を紹介いただきました。その後の議論を通じて、ロスされた食品をエサとしたサーキュラーフードとしてのコオロギの有用性や徳島の地域ならではの取組についての理解増進が図られました。最後に、徳島のこのような取り組みが他の地域にも広がることに対する期待が表明されました。

2.関係案内人・講師の報告内容

(1)関係案内人:市岡 沙織さんの講演

株式会社ハレルヤでは「ナンバーワンよりオンリーワン」を目指し、地元企業として地域の特産品を使った安心安全なお菓子づくりを行っていること、徳島には美味しい食材がたくさんあるが、一次産品はどうしても規格外のものが食品ロスにつながるため、そこをお菓子に変えて皆さまにお届けしたいと考えていることなどを紹介いただきました。

SDGsの取り組みについては、規格外の素材を利用していることに加え、ワークライフバランスに配慮した環境づくり、自社製餡の際に出る汚水処理による水環境の保全、寄付付き商品の販売などを行っており、地域ESD拠点としても自社パンフレットや工場見学の中でESD・SDGsについての説明を社員が行っていることを説明いただきました。

また、コオロギの養殖が、徳島の農産物で廃棄されるものをエサとして利用することにより、食品ロスを減らす取組みにつながっていることや、昆虫食は社会課題の解決の手段の一つになり得ることなどを知り、グリラスさんを紹介することにしたと説明いただきました。

(2)講師: 渡邉 崇人さんの講演

元々コオロギの研究者であり、大学4年の時にコオロギの研究を始めて16年になること、コオロギの研究を社会の役に立てたいとの思いが「人口増加による食糧問題への解決策として活用する」ことにつながったことなどを紹介いただきました。

日本でコオロギを産業化するために試行錯誤してきた経緯から、コオロギの可能性を社会実装していくことを目的として2019年5月に株式会社グリラスを設立したこと、ビジョンに「コオロギ×テクノロジーが生み出す新たな調和で健康で幸せな生活を」を掲げ、2025~30年に到来するタンパク質危機を回避し、途上国などでタンパク質が手に入らない人達を救いたいという思いがあることなどをお話しいただきました。

タンパク質危機という話がある一方で、多くの食品が廃棄されているという食品ロスの現状から、ロスされた食品をエサとしたサーキュラーフードとしてのコオロギの有用性や、昆虫は飼育に使う水の量や排出される温室効果ガスが牛や豚に比べて圧倒的に少なく環境負荷が少ないことから、農業事業者、食品業者、コオロギ生産者の連携といったところで持続可能な地域が構成できるのではないかと思っていることなどをお話しいただきました。

最後にコオロギを通じて持続可能な社会をつくりたい、そのために研究開発を進めていきたい、という思いをお話しいただきました。

(3)講師、関係案内人の対談

◆きっかけや共感できる部分について

市岡さんより、「お菓子は「美味しい」がないと続かない。一般の方にどう「美味しく」感じて頂けるかが課題」という話から、グリラスとしても美味しいものを作らないと浸透しないだろうという意識があり、徳島にいるので徳島の人とコラボレーションしたいと思っていたこと、食品ロスなど共感できる部分で一緒に地域循環ができると思ったことなどを紹介いただきました。

物理的距離が短いことは強みであること、過剰にできるものを有効活用するという意味では愛媛ならみかん、岡山なら桃、香川ならうどんなど地域、地域に合ったコオロギを育てることができるのではないかと考えており、物流を抑えながら無駄のない循環を目指すという意味でも、地域で小さな循環を増やすことが日本での大きな循環につながると期待していることなどを紹介いただきました。

◆持続可能な地域づくりについて

捉え方としては2つあり、1つは地方の過疎化、地域の維持をどうするかであり、もう1つは環境的な面での持続可能性を考えることです。環境負荷をかけずに生活をし、都市に集中せず地方でも幸せ、満足感を持てるようなモデルを作りたいというところから、SDGsはそれぞれの立場や考え方の中で思いを実現していく、その集合体で社会全体がよくなっていくことだと思うとお話しいただきました。地方だからこそできることがあり、地方は住みやすくてやりがいのある場だということが伝わると嬉しいというお話もありました。

3.参加者のコメント・質疑 

 (1)ウェビナー参加者からの質問・コメント

 

Q1:昆虫を魚の餌にする研究を選ばれなかった理由を教えて頂けますか。養殖では穀物由来の餌に比べて生体(魚)への悪影響が少なく、生育も良好という噂を聞いたことがあります。今後、海洋資源保護の観点から養殖も産業として重要な位置つけになってくると思っていたので少し意外でした。
A1:確かに魚はよく食べます。魚の養殖には魚粉を使うことが多いですが、最近価格が上がっているので昆虫が代わりになるとも言われています。しかし高いと言っても1トン15万円くらいでまだまだ安く、コスト面で採算が合わないというのが現状です。今後フルオートメーションが進んで昆虫の価格が下がり、魚粉の価格が上がってくると可能性はあると思います。
Q2:会社の新規事業でコオロギの養殖に取り組むことを検討している段階で、最終的には食用を視野に入れて、第一段階として畜産への飼料、肥料への活用を考えております。調査をしても飼料や肥料としてコオロギを使用している事例が見られないのですが、活用は可能なのでしょうか。もしグリラスで展開している事例があれば教えてください。
A2:肥料としてコオロギの糞は使えると思います。牧草地で牛は草についている虫を食べているので問題ないですが、養殖のために養殖をする、という二段階のところのエネルギーロス、コスト増、というところでなかなか飼料にするのは現状難しいです。コオロギではない昆虫でそういうことが進んでいるという話は聞いたことがありますが、コオロギについては今のところ難しいです。
Q3:昆虫を食べるということは昔から知っており、東南アジアではよく食べられていることも知っていました。しかしこれらはレアなケースで、養殖して大量生産し事業化するということにびっくりしています。家庭でも養殖できる方法が見つかれば、都会地でも食用に使えることになると思うのですがその点はいかがなのでしょうか。
 A3:世界人口の3割が昆虫を食べると言われているので珍しいことではないです。農家のおばちゃんが副業的に昆虫を育てているということはよくあります。都会で育てることも場所をとらないので可能です。グリラスのビジョンとして実際にこれからタンパクが足りなくなる、また現状でも足りないという人達に対してコオロギを大量に生産して届けるというところにフォーカスしてやっているので、個人向けのシステムは出していませんが、アメリカには、個人向けの食用コオロギキットなどを作って販売している会社があると聞いています。
Q4:ハレルヤさん、グリラスさんの活動を地元企業として学校教育などで地域の子どもたちの学びに活かしているかどうか伺いたいです。
A4:私どもは地域ESD拠点でもあり、学びのきっかけとして子ども達の窓口になれればという思いがあります。学校の社会勉強や遠足で来て頂き、そこから授業につなげてもらっています。最近は、修学旅行で徳島へ来てハレルヤの取り組みを学んで帰るという学校が少しずつ増えてきています。地方のその場でしかできないことの一環として、子どもと接する機会が増えていることもあり、今日の勉強会を含め、多くの方に知っていただき、お越しいただきたいと考えています。
Q5:資本金はどのように調達されたのですか?銀行や投資分野の方に事業プランを提案されたかと思いますが、どのようなコメント、反応でしたか?
A5:創業時の資本金はメンバーのポケットマネーで始めました。その後スタートアップとして会社拡大のために投資家から出資いただいています。当然その際、事業計画を持って行き、プロジェクトや会社の成長について説明をしましたが、本当にコオロギを食べるようになるのか、市場は広がるのかという点はよく聞かれました。自分達はこういう道のりを考え展開しているという説明をするわけですが、納得してもらえることも納得してもらえないこともあります。納得してもらえる場合には、将来性があるというところで出資いただいています。
Q6:地方で暮らす楽しみ、喜び、満足感を、地方への移住定住を希望する皆さんへ発信していただきたく思います。小生は、東京からUターンして、この3月でちょうど40年になります。いまだに東京への憧れを持っています。しかし、田舎暮らしについて不満ということではありません。田舎の良さは、やる気があれば、地域の大きな歯車の1つになりうることではないでしょうか。
 A6:自分で選択して徳島に住んでいるので、都会に住んでいる人にどう伝えるか難しいですが、地方だからできることはたくさんあると思っています。雇用の面、仕事のジャンルによってはなかなか地方では難しいということもあると思いますが、このコロナをきっかけに、デジタル面の進化もあり、仕事の面での地域ごとの格差というのは狭まってきたと思います。土地、土地の風土、土壌、気候によっての特徴をどう生かしていくかという面で地方はすごく面白いと思います。地方だからこそ密なネットワークができ、よい環境で仕事ができると感じています。

  ・自分は徳島にしか住んだことがないので都会のことはわかりません。都会への憧れがないわけではないですが、すごく都会に住みたいと思ったこともありません。徳島だから東京だからというのは関係なく、東京で何をするのかと言われても徳島と同じことをしているように思います。選択肢は都会のほうが多いと思いますが、生活する上での満足度は地方のほうが高いのではないかと思います。グリラスにも都会から徳島に転職・移住してきた者が何人かいますが、暮らしやすいと感じているようです。都会に行く、という必要がなく、オンラインで済むことも多くあります。

Q7:近年大豆ミートが普及してきていますが、それと比べてタンパク質としてコオロギはどう優れているのでしょうか。
 A7:タンパク質として、という意味ではアミノ酸の組成としては優れています。どうやって生産するのかというところについても、コオロギの場合は食品ロスで作ることができます。今進めているのは大豆を作った際の食べない部分、茎や葉の廃棄部分をコオロギのエサにすることで活用することです。ここにもコオロギの有用性があると思います。
Q8:現在、コオロギの餌としてどんな食品残渣をどのくらいの量の活用できているのでしょうか。
A8:知的財産にも関わってくる部分なのであまり詳しくは言えませんが、主に小麦のぬか、ふすまを利用しています。それだけでは育たないのでさまざまな食品ロスを混ぜて使っています。組み合わせることで、食品ロス100%で育てるという技術は確立しています。
Q9:SDGsを考えた、開発に邁進するお二人の考えはとても素晴らしいなと感じます。しかし、消費者からすると環境に配慮した商品は大体がコストがかかり、お金に余裕がある人しか手が伸びないような気がします。今後、サーキュラーフードは一般の商品と変わらない値段になりますか?
A9:なると思います。今も規格外のものを利用していますが、ともすればこれらは産業廃棄物となり廃棄にも費用がかかります。これらを活用してしっかりと軌道に乗れば、一般の価格と同等、場合によっては一般の価格より安価に作ることができるようになると考えています。地域で循環するようになると輸送コストも削減できます。まだまだ課題はありますが、一般的な価格とみなされるように、どのように美味しくしていくか挑戦していきたいです。

  ・高くても買っていただきたいです。食品ロスをアップサイクルするためにコストをかけています。売れなかったものをもう一度食品として美味しく食べるためには、ある程度コストがかかるが、そこに価値があります。価値があれば、高くても買います。オーガニック野菜なども価値があるから高くても売れます。サーキュラーフードには技術とコストがかかっているというところに価値を感じてもらいたいです。価格としては、努力をしてなるべく安く提供できるように技術革新をしていきたいです。これから地球環境等々が変化して一般の食品自体の値段も上がってきます。今もすでに値段が上がってきているので、我々の値段を落とすのではなく、それらが上がってきて我々の価格に近付いてくる、ということが将来起こるのではないかと考えています。

4.アンケート結果概要

事後に実施したアンケートでは、参加者から以下のような感想が寄せられました。

  • 昆虫食がメディア等で取り上げられることが多くなってきたが、具体的な取り組み概要や目指す方向などを知ることができました。
  • 昆虫食は、フードロスも食糧不足も解決することができることがわかりました。
  • コオロギの持つ栄養素を今回初めて知ることができ、それらの栄養素に高い健康機能性が期待されていることは非常に印象的でした。
  • 食品等のロス材をエサにして飼育するコオロギを使った食品開発。今後の取り組みに期待したいです。
  • 地域ごとに生じるフードロスは異なるので地域ごとにブランド化したサーキュラーフードを作ることができることがわかりました。
  • 昆虫食の可能性をものすごく広い視野で捉えているところ、「地域に根差した」取組みに誇りを持っているところが印象的でした。
  • 規格外品で商品を作ろうとしている会社があったことを今まで知らなかったので、とても意識が高いなと感じました。
  • 世界的な食糧危機が起きると言われていることに対し私たちはあまりに無防備すぎるので、地域の中で一緒に考えていける人たちが集まって協議できる環境づくりが必要だと思います。
  • 世界的には飢餓で苦しむ方々も大勢いらっしゃり、フードロスも問題視されているなか、数年後の未来には本当に必要になってくる取り組みだと思います。
  • 食品ロスのうち何パーセントがコオロギ養殖で削減できると考えているか、効率的にするための品種改良による自然生態系への影響リスクがどう考えているのかは、非常に重要なポイントだと考えます。その辺りにどの程度の課題があるかを多くの人が認識して、そのリスク回避の方策を見つけ出すこともESDの大きなポイントだと考えます。

5.まとめ 

「食から持続可能な地域づくりを考える」というテーマに関し、ハレルヤの市岡さんはお菓子づくりを通して、グリラスの渡邉さんはコオロギを通して、持続可能なプロジェクトを進めています。お互いに共感できるところがあってこの共同プロジェクトが始まりました。食という分野は食品ロスを生み出す一方で、それを活用することもできるようになってきています。グリラスはコオロギによって食品ロスをアップサイクルしていくことで、新規のタンパク源として貢献していき、ハレルヤには循環型で生産されたコオロギを更に活用し、共に持続可能な社会づくりに向けて取り組んでいきます。

徳島でやっているこのような活動は、徳島に限らず、さまざまな地域で実現可能と思われるので、徳島の取り組みを一つの循環型のモデルとして構築し、他の地域でも広げていきたいと期待されます。「昆虫食」と聞くと抵抗感がある人がまだまだ多いと思われますが、社会課題を解決する有用な手段として注目されていること、それが持続可能な地域づくりにもつながっていること、地方だからこそできることがたくさんあることなどを紹介いただきました。徳島の取り組みが他の地方でも生かされ、小さな循環がたくさん生まれることが、ひいてはSDGsにつながっていくということを参加者含め全体で共有することができました。

(ESD-J理事 宇賀神 幸恵)