オムロン株式会社様の持続可能な社会づくりに向けた取り組み

■会社データ

社名 オムロン株式会社   OMRON Corporation
代表者 代表取締役社長 CEO 山田 義仁
創業 1933年5月10日
設立 1948年5月19日
売上高(連結) 2019年度 6,780億円
事業概要 オートメーションのリーディングカンパニーとして、工場の自動化を中心とした制御機器、電子部品、駅の自動改札機や太陽光発電用パワーコンディショナーなどの社会システム、ヘルスケアなど多岐にわたる事業を展開し、約120の国と地域で商品・サービスを提供しています。
従業員数(2020年3月末時点) オムロングループ:28,006人(国内:10,600人、海外:17,406人)
ウェブサイト https://www.omron.co.jp/

■企業理念

1959年に創業者・立石一真氏が制定した「社憲」は「われわれの働きで、われわれの生活を向上し、よりよい社会をつくりましょう」というもので、企業は利潤追求だけでなく、社会の持続的発展に貢献し続けてこそ存在する意義があり、事業を通じて社会的課題を解決し、よりよい社会をつくるという企業の公器性の思いが込められています。この社憲の精神を企業理念として受け継ぎ、企業経営における求心力の原点としています。

企業理念は、社憲(Our Mission)と、社員一人ひとりが大切にする3つの価値観(Our Values)で構成されています。価値観は、「ソーシャルニーズの創造」「絶えざるチャレンジ」「人間性の尊重」の3つです。それぞれに「私たちは〇〇し続けます」という宣言の文言を付けることで、主語を明確化し、行動の継続性を強調しています。これらの価値観は、時代の流れや社会のニーズ、グローバル企業としての社員の多様化とともに見直され、更新されています。勤続年数やバックグラウンドに関わらず、グローバルの全ての社員にわかりやすい形につくり変えたのが現在の企業理念です。

2015年に国連によってSDGsという持続可能な開発目標が定められましたが、社憲の制定以来、事業を通じて社会的課題の解決を行ってきた同社にとって、SDGsへの貢献は同社が創業時から取り組んできた企業理念の実践と合致するものでした。そして、自社の取り組みをSDGsと照らし合わせることで、事業を通じて解決すべき課題がより具体的かつ明確になっています。

企業理念、サステナビリティ方針、中期経営計画VG2.0の三位一体での推進

同社は企業理念に基づき、これからも社会的課題解決企業であり続けるために、サステナビリティへの取り組みを中期経営計画VG2.0に組み込むこととし、取締役会で策定したサステナビリティ方針のもと、サステナビリティ重要課題(現在は15の重要課題)の特定と目標設定を行いました。サステナビリティ目標の達成は中期経営計画の達成に寄与するだけでなく、SDGsへの貢献にも繋がります。

サステナビリティ重要課題は、「事業を通じて解決する社会的課題」と「ステークホルダーの期待に応える課題」の2軸で設定されています。「事業を通じて解決する社会的課題」とは、オムロンの注力ドメインと親和性の高い社会的課題から、事業戦略において注力すべき重要課題を抽出したものであり、ファクトリーオートメーション、ヘルスケア、ソーシャルソリューションの3分野です。「ステークホルダーの期待に応える課題」とは、VG2.0の遂行を支える事業基盤を強化することで、人財マネジメント、ものづくり・環境、リスクマネジメントの3分野に分類されます。事業戦略と運営機能戦略が一体となってこそ、持続可能な社会づくりに貢献できるとの考えに基づいています。具体的な内容は以下の通りです。

サステナビリティ推進のための全社マネジメント構造

2017年度には、全社マネジメント構造を確立し、サステナビリティ目標の達成に向けた取り組みが強化されました。取締役会がサステナビリティ方針を設定し、サステナビリティ課題に対する取り組みの監視・監督機能を果たしています。また、社内取締役及び執行役員の中期経営計画期間における中長期業績連動報酬を決定する際のKPIのひとつに、第三者機関のサステナビリティ指標に基づく評価を採用しています。第三者機関のサステナビリティ評価を採用することで、公正性・透明性を高めています。更にサステナビリティ方針・目標・KPI・進捗状況をウェブサイトや統合レポートなど様々な媒体で開示することで、ステークホルダーとの対話を強化し、取り組みの進化に活かしています。

企業理念を実践するための多様なアプローチ

同社は企業理念を社員に浸透させるために、トップダウン、ボトムアップ両方からの重層的なアプローチを行っています。企業理念は、理解されたのち、実践される行動変容こそが重要で、「企業理念の実践で持続可能な社会をつくる」という考えが同社のアプローチに一貫しています。

トップダウンの取り組みの例:

<企業理念の実践に向けてトップ自らが出向き、対話する試み>
会長・社長が自らの言葉で直接経営幹部や社員に企業理念を伝え、理解の促進、実践強化を図るという取り組みが行われています。
例えば、立石会長が海外事業所等を訪問し、企業理念について世界各地の経営幹部との対話を行う企業理念ミッショナリーダイアログを実施しています。
KURUMAZA(車座)という活動では、山田社長が世界中の海外生産拠点を自ら回り、現場で働く社員と直接語り合う場を設けて積極的なコミュニュケーションを図り、現場のニーズ把握やチームビルディングなど執行レベルの対話を行っています。

ボトムアップの取り組みの例:

<社内広報:OMRON Global Hub
日本の本社組織が作成する社内報(一方的な情報発信)ではなく、取材力、情報量、デリバリーの限界を超えて、世界中の活動を投稿できるグローバル共通のコミュニケーションメディアの導入

<企業理念が学べるツールの開発>
映像、カード、冊子、ケーススタディ集(掲示板)など

<The Global Academy>
社内外の講師を招いて学ぶリーダー研修の制度

<理念ダイアログ>
職場の仲間と共に企業理念と自らの業務の繋がりについて話し合い、理念を自分事化する機会の創出

<Founder’s Day>
グローバル社員が一堂に会して創業精神に立ち返る機会、TOGA活動の共有の場

<ソーシャルニーズの創造を社員自らが自分事に落とし込み、行動に移す仕組み>
企業理念の理解 意識変容 自主的な実践に転換する仕掛け

『TOGA=The OMRON Global Awardsの取り組み』
TOGAは、企業理念を日々の仕事の中で実践し、それをグローバルで共有し、共感と共鳴の輪を広げることを目的に2012年に開始しました。もともとオムロンはベンチャー企業だったため、新しいことにチャレンジする、世に先駆けて新しい技術やサービスをつくるという企業風土があり、世界初・業界初の技術開発などを行ってきましたが、時代とともにイノベイティブな取り組みや、失敗を恐れず一歩を踏み出すということが減ってきているのではないかという懸念から、TOGAの取り組みが始まりました。

かつて、同社の世界初無人駅システム(自動改札機)の開発エピソードがテレビにも取り上げられ、社内では神話のようになっていますが、TOGAをきっかけに社員が「社会課題を解決する」というマインドを持てば、神話はいくらでも作ることができると考えています。同社には、腕時計型血圧計の開発秘話や制御機器事業での改善の取り組みなど、企業理念を実践したストーリーが数多くあります。企業理念実践の物語をグローバル全社で共有することで、同社の強みの源泉である企業理念を全社員に浸透させ、共感と共鳴の輪を広げていくことを目指しています。

TOGAのプロセスはユニークで、社員がメンバー同士で目的・志を共有しながら進めるために、必ずチームで企業理念実践の取り組みを宣言し、1年間かけて実行したうえで、全社でそのテーマを共有します。この共有のプロセスにおいて、学び合いの化学反応が起こります。取り組みを社内で共有するにあたり、より多くの共感を得たテーマが次のステージに進みます。そして、世界の5つのエリアのそれぞれで最も共感されたテーマがグローバル大会において表彰されます。このプロセスで大切なことは、「その取り組みは何のために行うのか?」、「それは社会的課題とどう繋がっているのか?」を自らの言葉で語ることです。こうして実践されたテーマと、それによる価値創造が、全社で共有され、広まっていきます。

企業理念実践の事例①
糖尿病患者のワンストップ診療を提供するMMC(Metabolic Management Center)を中国で展開 [EDGE & LINKの記事]

最先端医療を身近にする中国初「MMCヘルスコンビニ」1号店を上海の大手薬局内にオープン

企業理念実践の事例②
ロシアのよりよい社会を実現するための偽造品対策 [EDGE & LINKの記事]

トレーサビリティシステム構築によるQuality of Lifeの向上

TOGAは、社内における企業理念の実践の取り組みとして始まりましたが、社会的課題の解決にチャレンジする姿勢、その行動に対する共感が社外のパートナーにも拡大し、最近はパートナー企業との協業によるテーマが増えています。

2012年に開始した当初は、トップダウンで社員へTOGAの参加を促しましたが、数年で取り組みが社員の間に根付き、2019年度には、のべ52,780人の社員により、約6,400ものテーマが提出されました。社員数は約28,000人のため、一人の社員が複数のテーマにエントリーをしているということを示しています。テーマの制約はなく、自由に取り組んでみたいことをテーマとしてあげることができ、共感が得られればそれが形になっていくという社員の創造性とやる気に基づいた取り組みであるため、社員の自発性とモチベーションの強化にも繋がっています。また、この取り組みを通じて、自分たちの活動が社会に貢献しているという実感と共に「誇り」の醸成に寄与しており、これもモチベーションの向上に繋がっています。

コロナ渦で行われた2020年度のグローバル大会(優れたテーマを表彰する社内イベント)は、12月にハイブリッド型(オンサイトとオンラインの併用)で開催されました。中には企業秘密となるような新規事業や新製品のアイディアなどの発表もありましたが、社内に閉じた形で開催されるのではなく、グローバルに配信され、重要顧客、投資家、有識者、アカデミア、報道関係者、本社や海外子会社の社員、取引先企業を中心に日本、中国、米国、欧州など6つの地域から約15,000名がリモート形式で参加しました。TOGAを起点に生まれた共感・共鳴の輪は、社外の人たちも巻き込み、新たなソーシャルニーズの創造に繋がっています。

また、TOGAの1つの成果として、コロナ禍において、世界各地の社員が企業理念を軸に会社からの指示がなくとも現場で判断し能動的にアクションをおこした数多くの事例がありました。例えば、イタリアや中国のヘルスケア事業によるヘルスケア製品の供給の継続、スペインの制御機器事業による人工呼吸器の開発、中国の制御機器事業によるマスクや医療用ガウンの生産ライン増産対応等です。

これまでのTOGAから「暗黙知」が「組織知」に変わること、ベストプラクティスに学ぶことは組織の進化の中で非常に重要であると感じています。この様に重層的な学びの仕組みの中で、社員が継続的、能動的に企業理念を理解し実践し続けることで、社会課題の解決と企業の成長を実現しています。