令和3年度ローカルSDGs人材育成地方セミナー 全体セミナー
【東京都千代田区】
「人+文化が地域の資源を魅力化!」報告

日   時: 2022年2月23日(水)14:00~16:00
会   場: 東京都千代田区日比谷公園1-4
日比谷図書文化館(4階セミナールームB)
参加者: 参加者総数 208名
(内訳)一般参加者数合計204名(会場参加者5名、オンライン参加者199名)
司会1名、講師3名
講   師: 堅達 京子さん(NHKエンタープライズ・エグゼクティブ・プロデューサー)
早坂 正年さん (ブルーファーム株式会社 代表取締役)
阿部 治さん(立教大学名誉教授、特定非営利活動法人持続可能な開発のための教育推進会議 代表理事)
司   会: 鈴木 克徳(特定非営利活動法人持続可能な開発のための教育推進会議 理事)
講師 堅達 京子さん

講師 堅達 京子さん

講師 早坂 正年さん

講師 早坂 正年さん

講師 阿部 治 さん

講師 阿部 治 さん

司会 鈴木 克徳さん

司会 鈴木 克徳さん

千代田区立日比谷図書文化館は、東京都千代田区日比谷公園内にある公共図書館。日比谷図書文化館は「図書館」「ミュージアム」「カレッジ」が一体となった複合文化施設です。千代田の歴史や文化財、明治大正期の古書などに触れることも出来ます。

1. 概要

環境省大臣官房総合政策課環境教育推進室 浅原 堅祐 企画官

環境省大臣官房総合政策課環境教育推進室
浅原 堅祐 企画官

環境省による挨拶、全体の進行の説明後、司会のESD-Jの鈴木理事からこれまで行われた8地域での地方セミナーの概要について説明が行われました。

続いて、NHKエンタープライズの堅達講師から九州地方セミナーについて、ブルーファーム株式会社の早坂講師から東北地方セミナーの成果報告が行われ、続いて立教大学阿部 治名誉教授による基調講演「SDGsの達成に向けた地域の資源の輝かせ方-持続可能な地域づくりとしてのESDの役割-」が行われました。3人の講演の中で、地域の良さを可視化することの重要性、中長期的にはボランティアに頼るだけでなく、経済的に成立するような活動の必要性、そのための人材育成の重要性等が強調されました。

その後、講演で強調された地域の良さ(地域資源)の可視化とそのためのよそ者の視点、地域の人や文化とつなげることによる新たな価値の創出などを話題とした講師間の対談が行われ、さらに参加者との質疑応答が行われました。参加者との質疑応答では、地方セミナーに参加した3人の若者による地方セミナーでの学びや本日の講演に対する質問、コメントなどをいただいた後、オンライン参加者からの質問等に対する解答が時間の許す範囲で行われました。

最後に、3人の講演者による総括コメントとESD-J重代表理事による閉会挨拶をもってセミナーを終了しました。

2. 8地域での地方セミナーの概要について説明

鈴木理事から、全国8地域(北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州)における地方セミナーの概要、特徴とキーワードについて、8地域の総括表及びそれぞれの地域の報告概要に基づいて報告されました。1月には新型コロナウィルスのオミクロン株による第6波の影響を受けたものの、平均90名弱の参加者が得られ、また、アンケート結果によれば、大変満足と満足を合わせて全てのセミナーで80%以上と高い評価を得ることができました。キーワードとしては、よそ者の視点、Uターン、Iターンや移住者による地域の活性化、人と人との繋がりや文化を活かした取り組み、若者による積極的な発言の奨励などが挙げられました。

 3.講師の報告内容

(1)講師: 堅達 京子さん

九州地方セミナー「海洋プラスチックから考える対馬型SDGs」の概要を説明いただきました。日本海の入口という対馬の特性から、プラスチックをはじめとする海洋ごみが大量に漂着している実態、気候変動問題や海洋プラスチック問題などの世界的な環境危機の下で使い捨ての経済から循環経済に変えていく必要性などについて説明するとともに、対馬の魅力と対馬での具体的取組を紹介しました。特に、この10年が人類の正念場であること、気候変動と経済・社会的課題の同時解決を目指す必要があることを強調されました。

(2)講師: 早坂 正年さん

東北地方セミナー「次世代の眼から見る大崎耕土SDGsアクション」の概要を説明いただきました。大崎は、世界農業遺産を核として地域を活性化していきます。その中で、東北の食材を世界で売っていくことを目指しています。中長期的な観点からは、ボランティアだけではやっていけず、経済的に成り立つ活動にすることが必要であり、例えば温泉旅館と連携し、観光客に農家の食事を提供する農ドブルというような工夫をしています。食材から食文化のブランディングへ転換することにより、付加価値を高められます。地域は様々な課題を抱えているので、一つの課題だけでなく、いろいろな策を組み合わせて取り組むことが重要と強調されました。

(3)講師:阿部 治 さん

「SDGsの達成に向けた地域の資源の輝かせ方-持続可能な地域づくりとしてのESDの役割-」をテーマに基調講演をしていただきました。地域創生の主な課題、特に失われた誇りの回復が重要、そのための地域創生の担い手育成(ESD)がとりわけ重要との指摘がなされました。地域循環共生圏に向けた取り組みが8地域の地方セミナーでは行われています。具体的な地域創生モデルとして、熊本県水俣市、北海道下川町、福岡県大牟田市等の事例が紹介されました。ESDによる地域創生の視点として、特に、地域の諸課題を統合化・総合化するアプローチ、地域の多様な資源を見える化し、再評価することによる地域住民の誇りの回復、地域で学校が果たす役割、多様な主体間の協働、つなぎ役としてのコーディネーターの役割などが強調されました。最後に、持続可能な社会づくりに主権者として取り組むための市民教育の重要性が指摘されました。

4.講師間の対談

  • 地域の良さの見える化とよそ者の視点
  • 他地域からの移住者が入ることによる活性化が大きな効果を生んでいます。地元の人と移住者が一緒に活動する事により新しいものが生まれてきます。そのような場づくりが大切です。
  • よそ者と言うだけではだめで、本物であることが必要です。本物として結果を出すことにより地域を動かすことが可能になります。
  • 地域目線で地域の人たちと話ができる人でないと地域に残れません。
  • お祭りとか食文化などの地域の文化の重要性です。
  • 集落ごとに違う祭りの文化が地域の人たちの誇りになっています。文化を残すことが、地域が生き残るための原動力になっています。
  • 地域の文化をどう経済的に活かすかが課題です。食材だけでなく、みそ汁の味が違うように食文化が価値を持ちます。謙虚は良いが謙遜しすぎないことが大切です。しっかり発信することが重要です。
  • 地域の歴史などの自分たちが持つオンリー・ワンに気づくことにより、自分たちに誇りを持つことができるようになります。どの地域にも歴史・文化などの固有の宝物があります。それをよそ者の視点で見出すことが大切です。

5.コメント・質疑 

(1)  地方セミナー参加者からの質問、コメント

① 中国地方セミナー(ノートルダム清心女子大学 山本 有優さん)

  • 中国セミナーに参加して、ごみがあるのにそのごみが見えていないことに気づきました。また、早坂講師の里山マリアージュの話を聞いて、岡山にいても地元の人の思いが分かりました。

②中部セミナー(松本大学 中村 拓磨さん)

  • 中山間地でIターンしてゲストハウスを開いている人の話から、様々な人が話し合えるような場づくりの重要性を再認識しました。
  • 経済的に成り立つような活動を行えるような人材育成の方法を教えていただきたいです。

→人材育成のためのビジネス・スクールを立ち上げますが、そこでは地域が実 際に抱える課題について商品開発と実際の課題解決までやろうと考えています。まず批判をする、さらに提案をするまでは比較的多くの人がしますが、さらに一歩踏み込んで実際に行動に移すことまでやってみるようにすることにしています。

③関東セミナー((公財)キープ協会 坂川 実基さん)

  • 山梨の自然に魅了されて移住してきたので、地域をリスペクトして活動したいと思いました。関東セミナーでは、多様な視点の大切さ、学校と地域との連携の大切さなどを学びました。課題として、仕事以外でプライベートに地域と繋がれるようになりたいのでコツがあれば知りたいです。

→場が必要だと思います。例えば、対馬では、廃校であった小学校を改装してカフェ・レストランにすることにより、地元の人も観光で来た人も肩肘はらずに話ができる場をつくっています。

(2)  ウェビナー参加者からの質問・コメント

Q1. 文科省と環境省が連携して、教育改革を進めることが重要ではないかと思います。人材育成で最

も重要と考えられる点は何でしょうか?

A1.

  • 知識だけだと批判、提案まではできますが、実際に実行に移すような教育が重要です。
  • 子供の頃から普通に議論ができ、また、自分たちの力で社会を変えられるとの意識を学ぶ必要があります。

その他、オンライン参加者から様々なコメントが寄せられ、その中の幾つかが紹介されました。

4.アンケート結果概要

  • 地域の文脈を生かす上で「よそ者」の視点を生かしていくという点が非常に興味深く拝聴しました。
  • 課題解決のために動く人材を育成するため、地域課題について多様な視点からESDに取り組む必要があるとの示唆が印象に残りました。
  • 批判より提案、提案より実行の言葉は刺さりました。また、地域の人材を育成することの大切さ・問題解決ができる人材育成について重要性が身に沁みました。教育に携わる身として考え、行動せねばと思います。
  • 教育機関も変わらなければならないと考えていましたが、それは大学に限らず幼少期からの積み重ねも重要であるということを学んだ。また、いくら教育で自分の力で世の中を変えていく、行動するということが自分ごとになったとして、企業がそれに反するようであればどれだけ経っても日本は変わらないと思う。学生も教育も変わろうとしていることを全ての企業が認識し、企業も変わっていってほしい。
  • 文化や人を付加価値として商品をブランディングすることで、魅力が増すことが印象的でした。
  • 題材のテーマが良かった。人と文化が地域の資源として魅力化に繋げることが、ローカルSDGsとしての持続可能な地域創りの一環になる。
  • 早坂先生の外部からの地域参入には「“よそ者・若者・バカ者”+“本物”」が必要という考え方。参入する側の中にとても必要なことだと思いました。ただし、本物とは、専門家だけではなく、“純粋に、その地区を良くしたいという強い思いを持った人”も含まれると思っています。
  • 地球規模の取組を進めていくうえで、地域の固有性を重視しつつ、多様な視点を取り入れることは有用だと感じました。
  • 教育に携わる身として、日本の将来を担える人財育成の視点の重要性を認識しました。
  • 1つのブランディングから協働によるブランディングの必要性は、新たな視点であった。
  • ESDの必要性、やり方が浸透していないと感じた。消滅可能性地域でコミュニティ協議会の事務局として地域づくりに関わっているが、地域住民も行政も地域の良さに誇りを持たず、産業や文化の衰退を「仕方のない事」と捉えている。一過性の集客やパフォーマンス性で評価し、持続性を求めていない。
  • ESDについては、もっともっと実践事例をみんなで共有する工夫が必要だと思う。加えて、環境省や文科省をもっと巻き込んで、良き実践を誉める仕組みを持つべきだと思う。
  • 最近のオンライン会議は長時間になることが多いが、コンパクトにまとまっており、参加しやすいと感じた。
  • 質問されていた若い方々が、自分の考え、感想をしっかり述べられていたのが印象的だった。本セミナーへの参加が気づき、行動のきっけになっていると感じた。

5.まとめ 

全体セミナーを通じて、今後取り組むべき重要課題が明確になったと言えます。まず、自分たちが社会を変える力を持っているとの自覚と意欲を持つ人材を育成する市民教育の重要性が強調されました。頭で学ぶだけではなく実際に実践できる人材を育成することの重要性も共有されました。また、大学等の高等教育機関と地域との連携、いわゆる域学連携が重要であるとも指摘されました。気候変動問題をはじめとして世界が直面する課題との戦いは今後長期にわたるものであるため、ローカルSDGsに取り組めるような人材の育成は今からでも遅くはなく、今後積極的に人材育成を進めていくことが大切とのエールが講師の方々から送られました。

  (ESD-J理事 鈴木 克徳)