ワクワクを日本中で湧き上がらせたい ~情熱と感受性を磨く「共育の場」~ <09/09/08>
つなぐ人の視線<第5 回>
NPO 法人コモンビート 代表理事 中島康滋さん
今回は、100 人の一般社会人が100 日でつくり上げるミュージカル「A COMMON BEAT」を社会共育の場として展開する中島康滋(なかしま・こうじ)さんにお会いしました。

ようやく夏らしい日差しが戻った64 回目の終戦記念日、「A COMMON BEAT‒ 感じてほしい共通の鼓動‒」を観ました。それぞれ異なる言語と文化を持つ4 つの大陸、人の交流が変化と不安を生み出し、やがて戦争に……。その廃墟から立ち上がった人々は何を見つけるのか。100 日前に先着順で申し込みをした100 人の初心者が演じる舞台とは思えない、迫力に満ちたエンタテイメントに、私はすっかり魅了されてしまいました。

このプロジェクトを始めたきっかけはなんですか?
30歳のときに乗ったピースボートの船上で、このミュージカル・プログラムに参加したのがきっかけです。今もコモンビートで総合演出を手がける韓朱仙(ハン・チュソン)がコーディネーターをしていたのですが、そのやり方がとても新鮮で魅力的だったんです。
彼女が教えているのは歌や踊りのスキルだけじゃない、参加者が互いを知り合い、チームワークを育み、表現力を高めあっていく、そんな場を丁寧に生み出している。チュソンの指示でみんなが動くのではなく、100 人それぞれの自発的な向上心を促すことで、100 人の総力としてチームができあがっていくんです。今の若者に必要なのはこれだ! と思いました。
* ピースボート:1983 年から「みんなが主役で船を出す」を合い言葉に、アジアをはじめ地球の各地を訪れる国際交流の船旅をコーディネートしているNGO。
当時は若者の自殺者が増え、ニートという言葉が生まれた頃でしたね。
自分のエネルギーの行き場が見出せず、エネルギーを持っていることすら忘れてしまっている。冷めてる人が多数派で、「熱いことはカッコ悪い」という風潮ってありますよね、今も。でも、世の中の若者はこんなものじゃない、エネルギーの行き場所を社会に向けるきっかけがないだけ、熱い人間を増やすことで、未来に希望が持てる社会につながっていくんじゃないか、そう思ったんです。熱くて何が悪い! って(笑)
100 人の参加者が他者と関係性を育んでいく「場」をつくる上で大切にしていることはなんですか?
まずはお互いをよく知り合うこと、共通項を生み出す作業ですね。例えば「宝物プレゼン」というアクティビティでは、自分の一番大切なものを持ち寄り、その宝物との出会いや想いを発表しあいます。人は好きなことを語るとき、本当にいい顔をする、お互いに新たな魅力が発見できます。そうしたら人を好きになる、応援したくなる、感謝したくなる。
あと「楽しさ発見力」を磨くこと。「あと片付け」は面倒なことですが、それを楽しくやるにはどうする? みたいな。例えばゲーム感覚を取り入れたり、歌を歌ったり。何をやってもいい雰囲気、バカバカしいことも真剣にすると楽しくなるとう発想やそれを包む空気感が、いいエネルギーとアイデアをどんどん生み出します。
そして真剣な「ぶつかりあい」ですね。このプロジェクトは上演がゴールなので、そのときに恥ずかしい舞台は見せられない、というプライドが根底にあります。最初はお互いの良さを褒めることから始まりますが、いずれ中途半端な出来では褒めていられなくなる。お互いが本音で言いあい、励ましあいながらより良いものをつくり上げていく力が作用します。人に指摘することにはとても勇気が要るし、責任も一緒についてくる。そんな真剣なコミュニケーションが、お互いを成長させるのです。
一番うれしかったことは何ですか?
うーーん、たくさんありすぎて(笑)。でも毎回うれしく思うのは、メンバーみんなが、この場を受け継ぎたい、社会に役立てたい、と思ってくれることですね。ミュージカルの裏方も毎回100人必要なんですが、これはキャスト経験者しかできないんです。支えてもらって舞台に立った人たちが、次は舞台を支える人になる。そうして感謝の気持ちと経験を受け継ぎ、場を受け継いでいく。私たちは未来へ何かを受け継いでいくために存在している、そのことに気づき動ける仲間が増えていくことが何よりもうれしいです。
そういえば昨年の名古屋公演では、終了後、会館を掃除している方が私を呼び止め、「こんなに施設をキレイに使ってくれた人たちは初めて! それにスタッフのみなさんが、『ありがとうございます』って声をかけてくれて。きっと講演もすてきだったのでしょうね」と話してくれました。
このプロジェクトを通して、どんな社会をつくりたいと思っていますか?
「熱い気持ちが未来をつくる、感じるチカラが日本を育てる」というのがスローガンですが、これはどんな未来かを具体的に規定していません。一人ひとりがその人なりの魅力と感受性を伸ばしてほしい、こういう人であらねばならないというものはありません。
そしてそれぞれの「こうしたい」という思いと、多様な能力や魅力を持った人が力を出し合う相互作用が社会を動かしていく、そういうものだと思っています。
最後に、中島さんが今、新たに力を入れていることを教えてください。
コモンビートでは、このエネルギーを学校や地域につないでいくプロジェクトを始めています。また組織外では企業に向けた社会共育、子育て世代の母子のための感情教育に力を入れています。若者だけでなく、母親も子どもも、村人も企業人も、いろんな人々に共育的な場に触れてもらいたい。日本中でワクワクが湧きあがる状態をつくりたい、そのための火付け役ですね。
(聞き手:ESD-J 村上千里)
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プロフィール
1972 年名古屋市生まれ。幼少より芸術分野に興味を持ち、19 歳で起業。音楽配信のIT ビジネスで社会的注目を浴び、携帯サービスや教育関連など多数の事業を創出する。30 歳での地球一周の旅がきっかけとなり社会教育への意識が高まる。帰国後、NPO 法人コモンビートを設立。多数の企業経験を活かし、経営支援やソーシャル分野での事業創出など社会企業家としてさまざまな活動を行う。
NPO 法人コモンビート http://www.commonbeat.org/