サイト内検索  Google

政府に働きかける

地域をつなぐ

世界とつながる

ESDを学ぶ・創る

ESDを伝える

ホーム > ESD-Jの取り組み  > ESDカフェ

ESDカフェ

<報告>第1回 ESDカフェ 自然と共に生きる、暮らし・技・心に学ぶ ESD <08/09/08>

自然と共に生きる、暮らし・技・心に学ぶ ESD 
~エコミュージアムでつなぐ地域、都市農山村交流~ 


第1回ESDカフェを8月29日(金)に開催しました。福島県奥会津地方の三島町でエコミュージアムに関わり、まちづくりの「つなぎ役」として活動する嵯峨創平氏をゲストに迎えお話し頂きました。学生・社会人・NPO関係者など多様な方々が参加され、充実したカフェとなりました。


日 時:平成20年8月29日(金) 19:00~21:00
会 場:地球環境パートナーシップオフィス EPO会議室
参加者:23名

講 師:嵯峨 創平氏  NPO法人環境文化のための対話研究所(IDEC)代表理事
進 行:ESD-J 佐々木雅一
運営ボランティア:高井歩未、川崎宣輝、シュレスタ マニタ
記 録:川崎宣輝、高井歩未


<進行>
19:00 主催者挨拶
19:05 ゲストよりレクチャー
20:15 ブレイク(お菓子とお茶のおかわりタイム)
20:20 参加者全員の自己紹介と心に残った言葉・内容を共有
20:55 ここをもっと知りたい!の時間
21:15 ふりかえり
21:20 終了

自然と共に生きる、暮らし・技・心に学ぶ ESD
~エコミュージアムでつなぐ地域、都市農山村交流~

NPO法人環境文化のための対話研究所(IDEC)代表理事 嵯峨 創平氏

null

自己紹介として
学生時代から地域作りに関心があり、フィールドワークで北海道から西表島まで全国800箇所をめぐりました。財団法人日本地域開発センター研究員時代には国土計画に関わり、地方の振興、都市の成長、地域開発はどのような考え方で成り立ってきたのだろう、どうすれば持続的になるだろうという問題意識をもち始めました。その後、環境教育や、演劇を取り入れたワークショップにも関わりながら、ファシリテーターとして活動してきました。そして、まちづくりを軸に活動する中、持続可能な地域社会づくりを目ざす住民主体の活動として「エコミュージアム」と出会いました。三島町がエコミュージアム構想を持っていることを知って関心を抱き、フィールドワークとして地域に入りました。当初は、エコミュージアムとは少し異なった内容からの関わりでしたが、徐々に三島町のエコミュージアム自体に関わり始めたのです。

エコミュージアムの概念
エコミュージアムは1971年にICOM(国際博物館会議)が提唱しました。住民の参加によって、その地域で受け継がれてきた自然や文化、生活を含めた環境を、持続可能な方法で研究・保存・展示・活用していくという考え方、またその実践のことを言います。日本には、20年程前に入ってきました。
博物館には収集保存・調査研究・展示・教育普及という四つの役割があります。エコミュージアムも同じことを目指していますが、特徴として「記憶」の収集・住民参加(専門家と共に)・地域の生活を邪魔しないような素朴な展示などがあげられます。類似の活動として、ナショナルトラスト運動や、住民の主体的参加活動などがあります。

三島町「ふるさと運動」の展開
三島町は、現在高齢化率が40%を超える人口2,100人の町です。ブナ林が広がり、縄文の遺跡、編み組・漆などの生活文化、農山村の生業と民俗行事が残るみどり豊かな地域です。昭和10年代には国策としてダム開発が始まり、昭和40年代の初頭までダム建設が続きました。人口はピーク時(S30年代)には8000人いましたが、その後過疎化していきました。
過疎の打開策として、ふるさとのを持たない都市住民との交流によって地域活性化を図り、地域の自然と伝統を守りながら地域を開発する「ふるさと運動」が始まりました。 都市住民がしばらく農村に滞在する「特別町民制度」、昔から伝わる技術を伝承して地場産業へと発展させることを目的とした「生活工芸運動」、伝統行事の数々を集落の誇りとして守ることを目的とした「地区プライド運動」といった活動がありました。その結果、三島町は都市農村交流の先駆的な存在となり有名になりました。農村交流事業の成功・産業化の専攻・三島フォーラム(住民対話)の開催、政策立案などの成果が生まれました。 しかし、行政主導事業の限界・民間事業との違いが生じ、さらに予算縮小に伴い衰退していきました。また、担い手の高齢化と同時に、世代間の継承に問題が生じるようになりました。
雑誌「世界」2008年8月号に掲載されている、小田切徳美さんの論文中の「地域社会空洞化の諸局面」の節に、人・土地・ムラ・誇りの四つの空洞化が述べられています。特に『地域住民がそこに住み続ける意味や喪失を失いつつある』とされる「誇りの空洞化」は、三島町に実際にいて感じることが多いです。

「ふるさと運動」からエコミュージアムへ
2001年から、三島町振興計画シンボル事業としての「エコミュージアム構想」を進められました。その目的は、「ふるさと運動」を統括し21世紀を生き残れる山村のビジョンを求めて、「都市・観光志向」から「住民・学習志向」へのまちづくりを行うことです。「三島町エコミュージアム・プロジェクト」(略称:エコプロ)をESD的な視点で整理すると、そのビジョンとして、『ふるさと再発見(地域資源再発見)』『ふるさと新生(人材意要請、事業開発)』『ふるさと発信(ネットワーク形成、情報発信)』の三つの取り組みが核としてあります。その中で一番中心にあるのが「持続可能な開発」の哲学と事業作りであると考えています。
この事業を進めるために、エコミュージアム推進チームができました。そして、住民参加によるエコミュージアム基礎調査、ワークショップやコーディネート能力を養う「奥会津案内人講座」という活動が始まりました。
「地域資源の再発見」の土台の部分を担うのが本来のエコミュージアムの役割であり、三島でも地元学・地域学を学ぶ、ワークショップなどを行い、さらに地元の人と外部の人の交流も展開しています。 これらはまだ道半ばですが、一つの説得力のあるやり方だと感じています。

エコ・プロの発足と発展
エコミュージアムを進める中で大きな発展につながったのは、前述の若手職員・住民・NPOの協働で2006年に発足した「エコミュージアム・プロジェクト(通称:エコプロ)」というプロジェクトチームの活動です。
エコ・プロ協働の成果と課題 として以下のようなことが挙げられます。
・ エコミュージアムの実践的理解    
・ 人材育成事業の始まりと定着
・ 情報発信とネットワーク活動の活発化 
・ コア・チームの立ち上がりと自信の獲得
・ 触媒としてのエコ・プロの役割    
・ 行政の理解深化と推進体制の強化
・ 地域再生への意欲と活動の顕在化(その地域で前向きに生きていくこと、その気持ちを持つこと、そのような人が増えていくこと)
エコ・プロから地元の女性が食育の事業を起こしたり、東北電力「まちづくり元気塾」NPOえがおつなげて「箱膳食行くイベント」などが始まったり、内部・外部から色々な人々が出入りするようになりました。三島町の広報も力をつけていきました。みな明るく活動的で、本当に地元の方々の力で良い化学反応が起こったと思っています。
活動の幅の広がりもあって、改めて実態を整理すると、中間組織としてのエコミュージアム連合体という構図が生まれてきました。現在ある目標として、エコミュージアムの基礎を作るエコミュージアムのNPO法人化があります。それに基づいてさまざまな事業が立ち上がり、事業者同士のネットワークもできたら良いと考えています。また、行政との連携も重要です。意思疎通をスムーズに行政が機能的に行うためには、政策情報の共有がとても重要です。現在、エコ・プロには13人の行政職員が関わっていて、政策情報を交流する勉強会が自主的に開かれています。そして今後は、「エコプロカフェ」というネットワークに地元の人々・団体・行政など様々なアクターが集うことを目指しています。エコミュージアムを推進する小さなトライアングル(NPO法人、事業者ネット、行政)の形成も強化したいと考えています。エコ・プロの2008年の活動として、エコミュージアムを推進する協働トライアングルのコア形成、エコミュージアムNPOの設立、そしてこれから紹介する奥会津案内人講座2008、が進んでいます。

奥会津案内人講座
昨年から、奥会津案内人講座を始めました。ファシリテーション力と外と中を取り結ぶ人材の育成を目的とした、インタープリター養成講座です。昨年の参加者は地元に近い方と都市に住む方とがいました。
第一回 農村調査
第二回 自然観察の手法
第三回 自分たちでプログラムを作ってみよう
第四回 奥会津人材育成ネットワーク集会
第五回 自分の事業計画を作り、発表する 
三島町に11の事業計画ができる「これが全部できれば三島町は変わる!」と特別講師の曽根原さんも言っていた充実した企画がでてきました。
2月 活動報告会、エコプロ・カフェ
この講座を受けたからといって三島町をわが町のごとく案内するのではなく、地域の資源をどう発見するかということを学びます。参加者には最後に事業計画も作成してもらいました。昨年の講座の卒業生には、自主的に三島町のエコツアーを企画したり、都市農村交流のつなぎ役になる人が出たりと、良い変化が生まれています。今年は、単発参加も可能な日程もあり、より多くの方に参加して頂きたいと思っています。
エコミュージアムはそもそも触媒の役割を担っていて、変化した方が触媒となることで地域が変わることを三島町は実証していると感じています。ありがとうございました。

null


司会より
この場にどのような方が集まったか、今日の話の中でどのようなことに関心を持ったか共有しましょう

参加者の印象に残った内容、言葉など
・三島町は組織がしっかりしていて、人材の育成にも力を入れていることが印象に残った。
・ファシリテーターの人材育成を、都市農村というキーワードで行うということに興味を持った。
事業を起こすのではなく、人材育成を派生として事業が起こったことが印象的だった
・農村のコミュニティ空洞化は、どうやってそうなるのかということに興味があった。心のつながりがないこともある意味空洞化なのかなと感じた。いのちの流れが見えないことに不安を感じるが、三島町の自然と共に生きるということを大事にしている姿に感心した。
・人が誇りを持つことが大事なのはどんな分野でも一緒だと感じた。
・人材育成ということで考えると、地域の人か外部の人がリーダーになるということは違うと思う。内部の人だと柔軟な環境教育が可能だが、外部の人なら何か特別なトレーニングが必要なのだろうか。
・エコミュージアムは箱物ではなく、機能であるということがわかった。
・三島町では上手く進んでいるが、他地域では困難なこともあると思う。
・都会の人間が思うほど、地域の人間は受け入れてくれないと感じているが、その課題をどう考えているか?
・まったく外部の人間として山村に行くことに何を求められているのか、ということで参考になることがあった。
・昨年、奥会津案内人講座に七、八人しか参加しなかったのに成立して、しかも成果が出ていることに驚いた。二年連続で続いており、評価すべき点だと思う。
・大切なのは人と人のつながりだと感じた。今は人と語り合う場が薄れていているのではと感じる。
・外部と内部のつながりを育むコーディネーターの存在は必要であるし、重要だと感じた。

null

参加者のもう少し聞きたいに応える

・外部のコーディネーターが関わることの難しい点は?
三島町への入り方はそれまでと違いました。三島町がエコミュージアム構想を持っていることを知って、関心を持ち、フィールドワークを目的に自分から訪れました。地域に色々な課題にも取り組みながら、次第にエコミュージアム自体に関わりだした。
「外部者である私が心がけてきたこと」
 ・「ふるさと運動」30年の実績と誇りへの尊敬 
 ・行政リーダーへの傾聴と事実に基づく問題点の指摘
 ・若手グループの本音との付き合い  
 ・情報の確認、過程の整理、公開の議論
 ・意欲の萌芽を待つ、能力の開花を引き出す

・地域は、外部の人へ何を求めているか?
自分から仕事を作る人間が期待されていると思います。今、外部から人材を誘致してくるということを地域は求めています。農山村の価値というものが地元の人にも、外の人にも認知されているわけではないので、とりわけ外に人には、そこで「買ってください」ではなく「好きになってください」という取り組みを通じて、刺激を提供することが大切です。また、参加の度合いには差があるので、発言の機会を積極的に作っていくことは農村部でも重要です。

・奥会津は、このような事業に恵まれた土地だったのか?(都会には関心ごとが多すぎてESDでなくてもよいと思われてしまう)
三島町の場合は「食育」など「食」というキーワードが非常に入りやすかったのですが、場所によって馴染みやすいテーマ・キーワードがあることにも気をつけています。

・参加型ワークショップの手法は?
参加型のワークショップ、ファシリテーション講座の手法として、地元学の手法は目に見えるものに着目します。特にその地域にある「もの」をきっかけに、ことや技にひろげる、そしてこころに到達することを目指します。

以上


<事業の経過>