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大学におけるESDの取り組み

岩手大学「学びの銀河」プロジェクト
 〜「21世紀型市民の育成を目指して!」〜

岩手大学副学長 玉真之介

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■日本の大学教育の危機! ~なぜ国際的な動向に出遅れたのか?~
世界の大学ではリオの地球サミットが契機となって、様々なESDの取り組みが始まりました。ところが、日本では1991年の大学設置基準の大綱化に伴って、全国の大学では教養部の廃止が進み、専門教育に強化した学内の組織再編にもっぱら関心と力が注がれ、ESDに向けた世界の大学の動きに出遅れてしまいました。
その後、1998年の大学審答申においても、「21世紀は、流動的で複雑化した不透明な時代」という理解にとどまり、ESDについてはもちろん、大学教育が進むべき方向を明確にすることもできませんでした。むしろ、少子化と規制緩和の流れの中で、日本の大学はもっぱら個性化、多様化へ突き進むこととなったのです。

■現在の大学が抱える問題 ~専門性の追求で教養科目がおろそかに~
2005年になってようやく、中教審答申「我が国高等教育の将来像」において、「我が国の高等教育は危機に瀕している」という認識がなされ、大学の国際通用性を高める上で、専門教育ばかりでなく、教養教育の重要性が改めて強調されました。
 また、そこでは学士課程教育の共通の目標は、社会を支え改善していく「21世紀型市民」の育成であると明確にしました。
 しかし、すでに教養学部は廃止されており、教養教育は専門学部の教員が持ち回りで専門分野の内容に近い教育を行っている状況で、一つ一つの授業は面白く工夫されているにせよ、横の繋がりがなく、カルチャーセンター化している状況にあります。

■地方大学の抱える問題 ~生き残りをかけた新しい価値・個性の創造~
2004年の国立大学の法人化によって、大学の格差の拡大が進んでおり、地方大学は個性を持たないとますます苦しい状況となっています。そうした個性化を進める上でも、教養教育が重要となっています。
これまでの「一般教育(教養教育)」は、一つ一つは優れた授業であっても、科目間の関連がつかめず、全体像を捉えることができませんでした。結果として知識の断片的な集合になってしまい、担当教員・受講生ともにモチベーションが低くなっていました。
その対応策として、コア・カリキュラムによって一般教養を体系化する試みもなされてきましたが、うまくいったとは言えない状況でした。

■岩手大学の挑戦! ~ESDによる教養教育の再構築~
そこで、岩手大学ではまず一般教養が全体として目指す方向を「持続可能な未来」として明確に提示し、体系化ではなくネットワーク化に重点を置いて、現実社会とのつながりを明確にし、現実社会とのつながりや実践性を意識した内容に再構築していくことを考えました。そして、これまで中立的でなければならないとされていた教養教育の価値観に対し、あえて全科目に「ESDの価値観」を織り込むということを目標にすえました。

■「学びの銀河」プロジェクト ~体系化ではなくネットワーク化へ~
そこで養成しようとする人材像は、環境問題をはじめとする複合的な人類的諸課題を生涯に渡って自らの課題と意識し、社会・地域・家庭の様々な場で、具体的な問題の解決にコツコツ取り組むような「21世紀型市民」としました。
これまでの体系化や、パッケージ化のアプローチでなく、すべての教養教育にESDを織り込み、全担当教員がESDを意識し、授業に取り入れるよう努力し、教育内容と教育方法のすべてにESDに変えていくことにしました。いま共通教育科目がESDを意識するよう努めることは、岩手大学の教育目標にはっきりと記されています。

■宮沢賢治の価値観を打ち出す!
宮沢賢治のことばに「世界全体が幸福とならないうちは個人の幸福はありえない」「正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じていくことである」というものがあります。私たちはESDの「尊重の価値観」と宮沢賢治を重ね、岩手という足場となる地域を意識してプロジェクトをデザインすることにしました。
具体的には、教養教育を体系化し、4つの分野と4つのタイプの立体マトリックスを形成しています。

■分類の分野とタイプ
分野 「環境E」「社会S」「経済M」「文化C」
タイプ 「1関心の喚起」「2理解の広がりと深化」「3学生参加」「4問題解決の体験」
このマトリックスをESDの観点に合わせて活用していくことを考えています。将来的には教養教育だけでなく、専門教育にも同様にESDの観点を意識していく事を考えています。

■海外で注目される取り組み(英国の事例)
海外の先進事例としては、英国における高等教育改革に注目しています。英国では、国家戦略として、大学生への持続可能リテラシーをコア能力として涵養することを最優先事項とするとされており、大学教育では全ての教育分野がESDを組み込んでいく取組を進めています。日本の高等教育政策は、英国の後を追うことになると考えています。

■最後に 〜岩手大学の今後〜
岩手大学では、ESDを大学の旗印として、積極的にアピールしていきます。
これまで、とかく掴み所がないといわれてきた教養教育についてESDをキーワードに全体としてまとめ、世界の大学、とりわけアジアの大学ともESDを通じて積極的に連携を図っていきたいと考えています。
それにより、初等・中等教育に対しても教育の方向性を示すことができ、すっかり社会や民間企業からとり残されてしまった感のある大学の存在を、社会の中で重要な位置を占めるものとして人々の認識を復活できればと思っています。
ありがとうございました。