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アジアESD交流レポート〜韓国編

8月21日から9月2日にかけて、国際交流基金が主催するアジアNPO派遣事業の一環として、ESD-J理事・会員・事務局スタッフから成る7名のチーム(森・村上・河村・佐野・福澤・林・二ノ宮)が、韓国・インドネシア・タイでESDを推進、実践する団体や現場を訪問し、今後のネットワーク構築に向けた情報、意見交換を行いました。まずは韓国、追ってインドネシア・タイでの状況をそれぞれ報告します。

まだまだ猛暑の続く東京からたった2時間で降り立ったのは、思いがけず既に秋の風吹く韓国。初日は、最近「ESD分科会」を発足したという韓国LA(ローカルアジェンダ)21協議会を訪問しました。過去10年間にわたり発展してきた韓国各地におけるLA21の取組み、そのなかで市民団体が大きな役割を果たしてきたとのこと。今後、民と官の効果的なパートナーシップを推進していくためには、それを支える法律の制定と地方市民団体の力づけが不可欠と考えているということでした。「環境」の視点に加え、社会の公平性・人権・平和・文化など多様な課題認識の必要性が理解されるとともに、「ESD」の大切さが言われ、ついには「ESD分科会」を設立するに至った経緯をお伺いし、今後の動きに期待が高まります。「ESD事例集」を制作しようという話も進んでいるとのことです。

さらに午後からはソウルから車で2時間ほど離れたグンポ市LA21協議会を訪れ、地域における自然・生活・社会環境向上をめざす実際の取組みについてご紹介いただいた後、市民の運動により実現しようとしている「生態公園」建設予定地などを見学しました。


2日目は、まず韓国環境運動連合を訪問。韓国全土に支部をもち、各地で不要な大規模開発に反対するなど環境保護運動に取り組んできた、韓国最大手の環境市民団体です。最近は「持続可能な発展」は「環境」だけの問題ではないという理解が進み、開発反対運動などのなかでも、環境団体のみならず、農民、労働者、教育者、宗教者、主婦など、幅広い市民との連帯が実現しているとのこと。今後は、従来の「代案なしの反対運動」を脱却し、地域の発展と生態系の保全を両立する「持続可能な発展・開発」の具体的なモデルをつくりだしていくことが大きな課題であるとのお話から、そのためにこそ地域の住民が「ESD」で力をつけ、地域に合った産業や発展を生み出していくことが必要なのではないか、という意見交換を行いました。また、2005年2月から実施がはじまったSMILEプロジェクトという企業に対する持続可能性評価の取組みについてもご紹介いただき、ESDにおける企業への期待についても話し合いました。

昼食をご一緒したユネスコアジア太平洋国際理解教育院は、「ESDの10年」がはじまった今年を、ESDと国際理解教育をどのようにつなげ実践していくべきかを明らかにすべき節目の年ととらえ、国際会議や機関紙などを通じ、議論を展開しています。「どのような持続可能社会が必要か」は国や地域により異なるのが当然であり、多様な地域社会を抱えるアジア太平洋地域は、その多様性を大切にしていかなければならないとする院長のご意見に共感しました。

続けて、韓国持続可能な開発大統領委員会(PCSD)の国際協力・教育委員会の皆さんと会合をもちました。政府組織である大統領委員会ですが、委員はNGO関係者、小中学校教員、大学教授、宗教者など、多様な顔ぶれ。PCSDでは、2005年2月から6月にかけて実施した「ESDの10年のための国家推進計画開発研究」の報告をさらに検討したうえで、今年末に策定予定の持続可能な開発に関する国家総合計画の中に反映させていきたいとのこと。今後の課題として、このような計画と、ESDの必要性についての理解が広がらない現場との距離をどう縮めるか、計画を実施するなかでどのように多様な人々の参画を実現できるか、教育や環境など関連する分野の省庁・行政の連繋をどう推進するか、という点が挙げられました。また、ESDを推進する本部や地域センターの設立など、実行体系の構築も大切な課題とのこと、日本が学ぶべき進んだ点と、共通の課題とが、それぞれ浮かび上がる実り多い会合となりました。

2日目最後は、韓国教育課程評価院で環境教育を研究するチェ・ソクジン博士に韓国学校教育における環境教育の現状などについてお話しいただいた後、おいしい餐鶏湯と朝鮮人参酒を囲んで一日を終えました。

3日目は、前日訪問した韓国環境運動連合が江華(カンファ)島で運営する、干潟教育センターの見学です。天然記念物の「クロツラヘラサギ」の生息地としても有名なこの島では、古く高麗時代より農地拡大のための干潟干拓が実施されてきたとのことですが、近年持ち上がった観光施設開発に向けた干潟干拓は、環境運動連合などによる反対運動の結果、中止。2005年6月、環境運動連合、江華郡、仁川市の協働により、干潟教育センターが開設されました。ここで目指されるのは、干潟保全と同時に、地域住民との協力による地域発展への取組みとのこと。今後は地域に暮らす人々の参画をどう進めるかが大きな課題とのことでした。

4日目、韓国ESD団体訪問最終日に向かったのは、ソウル郊外の麻浦地区にある麻浦生協。約10年前、30人あまりの母親が集い、仕事と育児を両立するための共同育児施設「子どもの家」を設立した後、子どもをよりよく育てるためには地域全体をよくしなければいけないという思いから、包括的なまちづくりに取り組む意識をもって発足したというこの生協。今では当初の育児ネットワークを超え、地域の人々を広く巻き込む組織に成長しています。

特に、近年、地域の裏山「ソンミサン」に持ち上がった開発計画に対して麻浦生協が取り組んだ2年間にわたる反対運動は、ソンミサン周辺に古くから暮らすお年寄りなど地域住民全体に広がり、結果、開発は中止に終わりました。こうした地域住民のエネルギーが、生協運動の多角化を支え、まちのFM局、組合型車修理センター、共働き家庭を支える有機野菜のお惣菜店、議会監視や社会的弱者支援に取り組む麻浦連帯、歩道拡張や自転車道建設など都市型「生態村(エコビレッジ)」実現の取組みなどにつながっています。さらに昨年は小中高生を対象にした12年制の「民立」学校を開設し、従来の受験戦争に追われる学校教育への代案として「地域社会の地域社会による学校」を目指した運営を行っているとのこと。住民拠出の財団を設立し9月完成予定の校舎建設が着々と進められていました。こうした麻浦生協の活動は、まさに地域発ESDのひとつのかたち。日本の地域発ESDを進める際にも大いに参考になる、刺激的な事例です。

以上、短期間のうちに多くの団体・現場を訪問するという忙しい日程で、どの団体とも、まだまだ話し足りないことがたくさんあるまま別れなければなりませんでしたが、それだけにとても充実した4日間となりました。地理的に近く、文化的にも多くの共通点を持つ韓国と日本。ESDの推進を実現するなかでも多くの課題を共有しており、その解決にはお互いの経験をわかちあい、アイディアを出し合い、ともに取り組んでいくことが大きな力になると実感できました。一方で、市民運動を支える人々の意志や情熱、これまでの運動の歴史、ESDに関する民・官の協働体制など、韓国から日本が学ぶべき点も多く再認識することができました(何名かの方からは、「ESDの10年を提案した日本の動きが鈍いことに対しては、世界が不安をおぼえている」というご指摘も受けました)。今後、ESDの10年の効果的な実施にむけた日本と韓国の交流と協力を進めるため、今回ある方から提案を受けた「日韓ESDワークショップ」の毎年開催など、ぜひ具体的な動きにつなげていきたいと考えています。

(報告:二ノ宮リムさち)