【長野】暮らしを学びに 〜山村留学が子どもと村人を自立させる

約20 年前。学校の管理教育・進学競争の激化、校内暴力やいじめ、子どもの自殺といった学校病理が社会問題化するなか、小さな山村で子どもたちの「学びの場」を模索する試みが始まりました。
暮らしのなかに学びがある
都内の幼稚園教諭であった梶さち子は、フリープログラムの「自由キャンプ」を提唱する仲間たちと活動を始めていました。
長期間自然のなかで寝食をともにするうちに、子どもたちに強い気持ちと行動力が芽生えていきます。「自分たちのものは自分たちでつくって暮らしてみたいね」。キャンプで体験した素朴な「暮らし」のなかに、「学び」があると感じた梶たちは、本格的に「地域に根ざした暮らしから学ぶ場」
をつくることをめざします。
長野県南部の山間僻地、泰阜(やすおか)村。ここでまず子どもたちは設計図を描き、家を建てました。図書館や五右衛門風呂、米づくりや野菜づくり、ニワトリの飼育、さらには登り窯をつくって
食器づくりにも挑戦していきました。これがグリーンウッドの主催する山村留学、「暮らしの学校 だいだらぼっち」の始まりです。
センターだけで完結する「施設」にしない

20 年後の現在も、教育理念は変わりません。村の学校に通いながら、暮らしに必要なものを自分たちでつくりあげる。子どもたちは木造の小屋で一年間の共同生活を営みながら、地域の方と交流し、「おじいま」「おばあま」の知恵から積極的に学びます。
例えば、ストーブや風呂の燃料として薪が不可欠ですが、子どもたちには自分たちの山がありません。地域の方に交渉し間伐材を手に入れています。このような活動ができているのも、グリーンウッドが設立当初から、センターだけで完結する「施設」にしないという思いのもと、子どもたちの通う学校はもちろん、地域との積極的な協力関係をつくるよう努力してきた歴史があるからです。
わしゃ、生まれ変わったら教師になりたい

1999 年、地域住民とグリーンウッドのスタッフが実行委員会を結成して、文部省(当時)と農水省連携事業の「こども長期自然体験村」を実施しました。村民が初めて取り組んだ、子どもの体験活動です。
「わしゃあ、子どものことはなにもわからん」とくり返し口にしていた、木下藤恒さん(アマゴ養殖業)が、2 週間の受入れを終えて都会の子どもたちを見送ったあと、当センターの事務局長である辻英之にこうつぶやきました。「辻君、わしゃ、生まれ変わったら教師になりたい」。
それまで村の豊かな自然を否定的にとらえていた住民たちでしたが、これを契機に、村民による「やすおか子ども体験村実行委員会」や泰阜グリーンツーリズム研究会が立ち上がり、自然体験イベントなどが継続して実施されるようになったのです。
村の自立を支える仕掛けづくり
泰阜村は人口2000 人に満たない小さな村。山村留学など都市山村交流活動の支援をすすめる松島貞治村長は、次のように語ります。「山村留学の卒業生やその保護者は泰阜村の応援団でもある。村の財政は厳しいが、人にお金をかける意味は大きい」。
都会の子どもをお客さんとして呼び寄せ、一時的に児童数を増加させることに終始するような山村留学が多いなか、泰阜村は、僻地での不便な生活の教育的意義をしっかりと考えた政策をとってきました。
山村留学の卒業生は、村の成人式に招待されますし、個人的にもしばしば泰阜村を訪れています。ここがまさに、かけがえのない第二のふるさとになっています。
また、当センターも村の厳しい財政事情をふまえ、村の自立に貢献すべく、さまざまな工夫を行っています。活動によって年間1300 人以上の交流人口(実数)が生まれていますが、参加者の食材は近隣農家と作付け契約を結んでいます。都会から自然体験活動に参加する子どもたちが地元農家と交流し、地域の方に山村の文化や魅力などを語ってもらう機会を設けています。体験活動の地元講師は有給。生鮮食材は村内もしくは近隣地域で購入し、地元経済に還元されます。当センターの活動を、人的にも経済的にも地域全体の活性化につなげることで、村の自立を支える仕掛けづくりを行っているのです。
【卒業生の声】

矢満田祐樹さん・33 歳
(だいららぼっち1 期生、中学2 年生時に参加)
自分にとってだいだらぼっちの経験はいろいろありすぎて、なかなか言い表せない。現役のときの経験を、だいだらぼっちを卒業してから消化してゆく。今でもその経験を消化しているのかな。
例えば「段取り」の大切さは、大人になっての仕事でも実感する。段取りは、たんなる見通しではなく、みんなで結果を描くこと。20 人いればそのイメージはばらばらだから、話し合って、いい意見に寄っていったりして、イメージをすり合わせてゆく。1 年間かけて家を建てるからには、譲れないこともでてくる(当時、家の建設をしていた)。ケンカになったりしたけど、できあがって形になっていくから達成感はあったし、卒業してからも家を建てたことが誇りになっています。
グリーンウッド自然体験教育センター
南信州泰阜村に拠点を置き、豊かな自然や文化を生かした自然体験活動によって、青少年教育や世代間交流、都市山村交流を実践するNPO。
399-1801 長野県下伊那郡泰阜村6342-2
TEL:0260-25-2851 FAX:0260-25-2850
http://www.greenwood.or.jp

