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【三鷹】ESD父母や地域も参加 もう一つの学びの場づくり

1999年に認可された「子どもと若者の居場所づくりと自立サポート」を使命とするNPO団体だ。活動の幅は広く、教育相談、文化講座、ホームヘルパー2,3 級講座、仕事体験ワークショップ……。2003年からは「土曜子どもセミナー」も開催し、地域の子育てサークルのお母さんや学生も積極的に参加して<冒険遊びの場、ガリレオ教室、絵本読み聞かせ>をしている。いわば、「学校の外に設けられたもう一つの学びの場」なのだが、始まりは受験目的の補習塾だったというから驚きだ。

■わが子の教育から子どもたちの教育へ

振り返るといくつもの段階を経てきたことがわかる。1974年に父母の要請と支援で大学院生が学習塾を開いた。まず、「わかるまで教えます」がスローガンだった。1980年代になると「どうして勉強しなければならないのか?」という子どもたちからの本質的な質問に向き合うことが多くなり、これまでの勉強内容では意欲を失う者が増えた。そこで「知る喜びと学ぶ意欲を」をスローガンに教科指導以外の取組みを始めた。夏休み中に行われる1週間ほどのサマーセミナーも、スポーツや教科学習から地球レベルや身近な問題を取り上げた探求的な学びになった。

しかし、休み中生き生きしていた子どもたちが2学期開始とともに元気を失うのを見るにつけ、年間を通じてさまざまな取組みが必要だと考えるようになる。自然体験、討論会、受験生を励ます会など。これに対し、塾本来の勉強内容がどうなっているのかと、父母から不安・不満がでた。それで、父母とスタッフが協同して内容や運営を決めていくことになる。「わが子の教育から子どもたちの教育へ」という視点だ。

■“居場所”を求める子たちと競争社会の狭間で

1990年代になると入学後も自分たちの“居場所”を求めて通い続ける子が増えた。また、不登校生の入会も増えた。そこで不登校生たちの癒しの“居場所”であり、自立を応援する学びの空間として、フリースペースコスモを始めた。塾同様、父母の協同運営である。この活動を通じて、親たちの多くは子育てや教育のあり方を捉え直し、その子らしい生き方を見つけ、元気を取り戻していってくれるよう、望むようになった。

また、こうした“居場所”での活動をとおして子どもたちは、少しずつ元気を取り戻していくのだが、実際に社会に出ていこうとしたさい、不登校の経歴が障害となったり、競争的な職場や人間関係によるストレスに挫折し、引きこもり状態に陥ってしまう若者が少なくなかった。彼らの“居場所”と社会をつなぐ、「社会参加へのステップとなるような場」を、父母、スタッフ、ボランティア学生のほかに地域の人々の参加・協同からできないものか、と模索した。

■無農薬野菜・小麦づくりから始めるパン屋

その一つの結果が、「風のすみか」というパン屋(青年たちが安心して働くことのできる職場)を立ち上げることであった。「風のすみか」設立の協力を地域に呼びかけたところ、30〜40人のNPO関係者や地域住民が賛同し、立ち上げまでの期間、資金集めから店舗づくり、販路の拡大などに、スタッフたちと一緒になって参加をした。おかげで、保育園・学校のPTA関係者や三鷹地域で活発的な活動を行っていた"地域通貨"のグループとのつながりができ、今年2004年にオープンとなった。

つぎは、パンの原材料となる作物の生産、農家からの農作物の買取り、加工、販売の一連の行程に生じてくる“仕事”を、若者たちが担っていくことが目標となっている。その一環として現在、神奈川県津久井郡にある「東京農工大学FM津久井」という場所を拠点に、地元農家の方(宮城茂氏)の協力を得て、定期的に青年たちが原材料の生産にかかわり、収穫された無農薬野菜・小麦を「風のすみか」へ搬入するという活動が取り組まれ始めている。

今後とも、地域の中で学校外の教育と社会参加の場としての活躍が期待される。


NPO法人 文化学習協同ネットワーク代表:佐藤 洋作(さとう ようさく)

1947年生まれ。NPO文化学習協同ネットワーク代表理事。東京都下の多摩地域を中心に、学校外で子どもと若者の居場所づくりに30年近くかかわる。学習教室、教育相談室、および不登校の子どものためのフリースクールを主宰。現在は法政大学や社会教育講座などの講師も兼任。

主要な著作

『君は君のままでいい』(ふきのとう書房)、『中学生をわかりたい』(共著、大月書店),『NPOと参画型社会の学び』(共著、エイデル研究所)など